人工細胞のバージョンアップ

NISTのwebを見ていたら面白い情報がたくさんありました。生物用の顕微鏡システムを作っている部門があります。 https://www.nist.gov/news-events/news/2021/03/scientists-create-simple-synthetic-cell-grows-and-divides-normally は、NIST、JCVI(←来週月曜日)、MITの共同研究で、人工的に作った細胞を正常に分裂させるために必要な7個の遺伝子を同定したというものです。最少の遺伝子を持つ生命体を作ろうとする試みですね。怪しいものができなければいいのですが。このJCVI-syn3Aは遺…

原子に立脚した圧力標準

単位系の改訂を受けて、いろいろな派生単位を原子や量子的な定数に直接結びつける仕事が始まっています。 例えば、真空度の単位は古くは水銀柱の高さmmHgでしたが、今は力÷面積であるPaです。 これを純粋気体(アルゴンを考えているようです)の屈折率から単位体積当たりの原子数を測定し、温度を 測って圧力の標準器にしようという話があります。これはNISTが中心になっています。 https://www.nist.gov/news-events/news/2019/06/no-longer-under-pressure-nist-dismantles-giant-mercury-manometer これは原…

国際単位系の改訂(2019年5月20日)

2019年5月20日から国際単位系が改訂されたことについては、ここ数年、学部のいくつかの講義で紹介しています。今年は2年生のオムニバス講義の題材にしました。当然NISTも深くかかわっています。今回の改訂で、キログラム原器が廃止され、すべてが量子力学や素粒子、原子由来の値になりました。講義で紹介している動画が下記です。 https://www.youtube.com/watch?v=ZMByI4s-D-Y 下記のクイズで2年生の不正解が1割くらいいたのには驚きました。答を言っているのにも関わらず、です。 問3 新しい単位系では、桁数が大きい定数(例:アボガドロ数6.02214076×10^23)…

世界の研究所 NIST (National Institute of Standards and Technology)

今週の「世界の研究所」は、米国の度量衡(どりょうこう)標準局であるNIST (National Institute of Standards and Technology;昔のNBS (National Bureau of Standards))です。 https://www.nist.gov/ 私は日本で毎年発行されるハンドブックの一部を担当しており、ここしばらく、夜中にこの一年に出た文献の調査をしていました。NISTは各種データベースを文献付きで公開しています。 https://www.nist.gov/pml/productsservices 私の担当部分でもNISTを参考にはしますが、…

武士道 商業倫理、金貨の国外流出

今週の「武士道」は、第7章 「Veracity or Truthfulness 至誠・信実」からです。 ・・・To the question, “Which is more important, to tell the truth or to be polite?” the Japanese are said to give an answer diametrically opposite to what the American will say – but I forbear any comment until I come to speak of wi…

楕円関数とイジングモデル

楕円関数は、二つの周期をもつため、二次元の結晶の波動関数を表すのに使えそうではないでしょうか。複雑な物質については計算機で数値解を求めるのでまず使われませんが、単純化した二次元スピン系(イジングモデル)の解析に応用され、相転移の挙動の厳密解が得られています(1944年)。これを行ったL.Onsargerは別件(非平衡熱力学)でノーベル賞をもらっていますが、この業績もプラスになっているでしょう、と学生の時に統計力学の授業で習いました。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%83%B3%E3%82%B0%E6%A8%A1%E5%9E…

楕円関数

私がなぜ四元数について調べているかというと、結晶の波動関数の記述に新しい方法ができないかと思っているためです。実数の周期関数は三角関数の和(フーリエ級数)で書けるのは習っていると思います。複素数の場合は実軸と虚軸の2つの自由度があるので、2つの周期を作れそうですが、一つの関数で2つの周期をもつ関数が楕円関数です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%95%E5%86%86%E5%87%BD%E6%95%B0 楕円関数は、複素関数の教科書の終りの方に書いてあることが多いです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E…

四元数とgimbal lock

セガのプログラマーがわざわざ四元数を勉強するのは理由があり、通常の空間回転を記述するには回転軸を3つ設定して3回続いて回転させる「オイラー角 Euler angle」を使いますが、制御のために計算を繰り返していくと、偶然、2つの回転軸が同一平面に載ってしまう「ジンバル・ロック(英語はgimbal lock でギンバる ろックと発音するようです)」が起こり、数値的に不安定になってしまいます。これは、宇宙船やドローンの制御、三次元ゲームにとっては重大な障害を引き起こすため、それを避けるために四元数が使われるようになったそうです。 https://qiita.com/taichi_itoh/item…

世界の研究所 セガ 開発本部

先週は任天堂の話を少し出しましたので、今週はセガから始めましょう。 研究所という名前ではないですが、「世界の研究所」の代わりです。セガは社員4000人弱で、ある種の研究者もいるはずですが内訳は不明です。最近開発子会社を本体に取り込みました(人員配置を流動化させるため?)。羽田にモーションキャプチャーの施設があります。 https://techblog.sega.jp/entry/2019/11/28/100000 開発本部のブログに面白い情報がいろいろ載っています。下記デバッグ法は役立ちました。開発者が1000人規模であるという記述あり。 https://techblog.sega.jp/en…

武士道 七難八苦を与え給え

今週の「武士道」は、第12章”The Institutions of Suicide and Redress”「切腹(せっぷく)及び敵討(かたきうち)」からです。幕末の開国に伴い、切腹についても海外で紹介されるようになりました。神戸事件(1868)の責任を取って列国外交官の前で切腹した武士の例が詳細に引用されています。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E6%88%B8%E4%BA%8B%E4%BB%B6 さらに敵討を含めて衝撃的な例をいくつか述べた後、真の武士は自分の命を大切にするものであるとして以下の記述です。 And …