楕円関数とイジングモデル

楕円関数は、二つの周期をもつため、二次元の結晶の波動関数を表すのに使えそうではないでしょうか。複雑な物質については計算機で数値解を求めるのでまず使われませんが、単純化した二次元スピン系(イジングモデル)の解析に応用され、相転移の挙動の厳密解が得られています(1944年)。これを行ったL.Onsargerは別件(非平衡熱力学)でノーベル賞をもらっていますが、この業績もプラスになっているでしょう、と学生の時に統計力学の授業で習いました。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%83%B3%E3%82%B0%E6%A8%A1%E5%9E…

楕円関数

私がなぜ四元数について調べているかというと、結晶の波動関数の記述に新しい方法ができないかと思っているためです。実数の周期関数は三角関数の和(フーリエ級数)で書けるのは習っていると思います。複素数の場合は実軸と虚軸の2つの自由度があるので、2つの周期を作れそうですが、一つの関数で2つの周期をもつ関数が楕円関数です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%95%E5%86%86%E5%87%BD%E6%95%B0 楕円関数は、複素関数の教科書の終りの方に書いてあることが多いです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E…

四元数とgimbal lock

セガのプログラマーがわざわざ四元数を勉強するのは理由があり、通常の空間回転を記述するには回転軸を3つ設定して3回続いて回転させる「オイラー角 Euler angle」を使いますが、制御のために計算を繰り返していくと、偶然、2つの回転軸が同一平面に載ってしまう「ジンバル・ロック(英語はgimbal lock でギンバる ろックと発音するようです)」が起こり、数値的に不安定になってしまいます。これは、宇宙船やドローンの制御、三次元ゲームにとっては重大な障害を引き起こすため、それを避けるために四元数が使われるようになったそうです。 https://qiita.com/taichi_itoh/item…

世界の研究所 セガ 開発本部

先週は任天堂の話を少し出しましたので、今週はセガから始めましょう。 研究所という名前ではないですが、「世界の研究所」の代わりです。セガは社員4000人弱で、ある種の研究者もいるはずですが内訳は不明です。最近開発子会社を本体に取り込みました(人員配置を流動化させるため?)。羽田にモーションキャプチャーの施設があります。 https://techblog.sega.jp/entry/2019/11/28/100000 開発本部のブログに面白い情報がいろいろ載っています。下記デバッグ法は役立ちました。開発者が1000人規模であるという記述あり。 https://techblog.sega.jp/en…

武士道 七難八苦を与え給え

今週の「武士道」は、第12章”The Institutions of Suicide and Redress”「切腹(せっぷく)及び敵討(かたきうち)」からです。幕末の開国に伴い、切腹についても海外で紹介されるようになりました。神戸事件(1868)の責任を取って列国外交官の前で切腹した武士の例が詳細に引用されています。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E6%88%B8%E4%BA%8B%E4%BB%B6 さらに敵討を含めて衝撃的な例をいくつか述べた後、真の武士は自分の命を大切にするものであるとして以下の記述です。 And …

アイデアとは複数の問題を一気に解決するものである

https://www.1101.com/iwata/2007-08-31.html が面白かったです。数々のヒット商品を生み出した任天堂の故・岩田社長のインタビューで、11回の続き物です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%A9%E7%94%B0%E8%81%A1 第1回が有名な「アイデアというのは複数の問題を一気に解決するものである。  “The ideas are something which solves multiple issues at once.”」 ところで、英訳を一緒に載せているのはなぜでしょうね?こなれた訳…

ベイズ主義と頻度主義 いつでも何度でも

数学・統計学の先生が奥深いことを書いていました。 http://watanabe-www.math.dis.titech.ac.jp/users/swatanab/nandodemo.html ・・・20世紀には存在しないものをめぐって不毛な論争が繰り広げられたそうですが、 お互いに深く傷つけあう以外には何も得られなかったと伝わっています。 (注)その争いは心の傷つけあいだけではなく、 論文の採録やヨーロッパやアメリカの統計学教室の人事にまで及んだそうです。 統計学のこの歴史は【存在しないものを探す】という課題に対するとき、 人間というものがどのような状態に陥りやすいかを表しています。今でも統…

最尤法

政府の「地震本部」に余震の確率計算法が出ていました。 https://www.jishin.go.jp/reports/research_report/aftershock/yoshin2_yoshin2/ Gutenberg-Richter則(大きな余震ほど数が少ない)や大森公式(時間とともに減る)が使われていて、パラメータの推定には「最尤法」が使われています。機械学習にも統計学用語をいろいろ使うので、7月末の講義のために英語を勉強しているところです。現代の統計学はちゃんと習った人は少ないかもしれませんが、知っておいた方がいいと思います。私が学生の時習ったものとはだいぶ違って面白くなっていま…

世界の研究所 PHIVOLCS (フィリピン)

今週の世界の研究所は、フィリピンの火山地震研究所(PHIVOLCS; Philippine Institute of Volcanology and Seismology)をとりあげます。 https://www.phivolcs.dost.gov.ph/ ここは、1991年のピナツボ火山の大噴火への対応で素晴らしい功績を残しました。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%8A%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%9C%E5%B1%B1 日本は、火山の担当がいろいろな省庁に分散しているのと、大学の研究者が減っているとのことで、ち…

武士道 鷹山公

今週の「武士道」は、5章 Benevolence, The Feeling of Distress (仁愛 - 不忍の心)から、今週出てきた上杉鷹山公を紹介した部分を紹介します。 How often both Confucius and Mencius repeat the highest requirement of a ruler of men to consist in benevolence. “…Virtue is the root, and wealth an outcome.”…Under the regime of feuda…