The Door into Summer(4) 時間の矢とエントロピー

金曜日のThe door into summer は第3章です。本文は後にして、時間についての考察を続けましょう。大学1年生に熱力学を教えています。今週はエントロピーの説明をしたら、強い興味を示してくれました。説明がうまくなったから、と言いたいところですが、年によって反応が変わっているだけでしょう(揺らぎの範囲)。私の知らない最近のテレビドラマかマンガでエントロピーが出てきたのかもしれません。さて、熱力学第二法則は「孤立系のエントロピーは増大する」と表現されることがあり、これは「エントロピー」という言葉を作ったClausiusの本に書いてあるそうです。また、エントロピー増大と時間が一方向に流れることは関係ある、という主張はEddintonの本だそうです。調べていたら、これらを攻撃する2020年の論説がありました。
https://www.mdpi.com/1099-4300/22/4/430
読んでみましたが、シャノンShannonの関数 – Σ p log p の最大値としてエントロピーが定義されるので、エントロピーは時間の関数として一定となり上の主張は全部誤りである、という繰り返しでした。これは正しいのですが、話を定義の問題に押し込んでしまっていて面白くありません。ボルツマンBoltzmannの「H 関数」(Shannonの関数の符号を変えたもの)は時間の関数で、これが理想気体のようなモデル系では時間とともに減少することが証明できるというのがボルツマンの「H 定理」で、これが数学的におかしい(ニーチェのところで紹介した「ポアンカレの再帰定理」に矛盾)という批判にさらされてボルツマンは心を病んで自殺してしまいます。私の理解ではカオスや粒子間の相関と関係していて、再帰することも可能だがその確率は極めて小さい、というのが結論になります(ボルツマンはそう主張していたのですが証明できなかった)。
この点を調べていたら、時間の矢についてはwikipedia英語版が詳しいことがわかりました。
https://en.wikipedia.org/wiki/Entropy_as_an_arrow_of_time
ビリヤードの球がいくつかぶつかり合っている系を考えると、
・球の最初の状態の位置と速度はランダム(親ガチャ)
・時間がたった状態で、時間を逆転できるようにするためには、球同士の相互作用の歴史が情報として加わる(カオスや量子論的な不確定性のため、記録しておかないと逆算できない)
ので、時間の矢は情報の蓄積と関係しています。
数学的にはtransfer operator の対称性の破れからきている、というのが現在の定説だそうで、やはりカオスとつながっています。
https://en.wikipedia.org/wiki/Transfer_operator

英語は3章から文章を選んでみます。2章で主人公のDanは騙されたことに落ち込んで、だました元婚約者Belleを忘れるために冷凍睡眠の予約をします。3章で、考え直して反撃に出ようと共同経営者Milesと元婚約者のところに反論に行ったら、元婚約者に「催眠誘導剤Zombie drug」を背中に注射されてしまいます。
“Belle frowned. ‘Don’t be funny, Dan. Say what you have to say, if anything, and get out.’”
frown フラウン level 5 は「鼻白んだ」と習いましたが、いまは使わない言葉ですね。「眉をひそめる」のほうがわかりやすいです。
“Miles said placatingly, …”
placate 米「プれ」イケイト 英プら「ケイ」ト なだめる level 11
On the contrary, Hideyoshi tried to placate the temple forces. 秀吉は逆に僧兵を懐柔しようとした(weblio例文)。
“Oh, come, come, let’s not be mealy-mouthed’” おうおう、口先ばかりうまいことを言うなよ。
mealy-mouthed 粉を付けた口になる→婉曲な言い方をする、遠回しに言う
“Then I felt the stab of the needle. … utter astonishment that Belle would do such a thing to me. ”
stab 刺す 突く 突きさす level 6
utter 「ア」ター 完全な、徹底的な level 6
astonishment アス「タ」ニッシュメント 驚き level 6
“When it came right down to it, I still trusted her.” 事ここに至っても、僕は彼女を信用していたのだ。

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