地熱発電の熱媒体

100気圧の高圧CO2を地中1kmに注入すると何が起こるかの検討は来週に回すことにして、地熱発電の話をします。 https://www.enecho.meti.go.jp/category/resources_and_fuel/geothermal/explanation/development/about/ によると、地球中心部は5000-6000℃もあるそうです。地熱発電の深度は1000-3000mとのこと。 水のかわりにCO2を熱媒体として使う研究もおこなわれています。 https://www.gerd.co.jp/image/pdf/gerd_topics_20210823.pdf (…

玄武岩との化学反応による二酸化炭素の固定化

アイスランドのカーボンニュートラルは、水力と地熱発電の他に、いろいろな活動で出てくるCO2を地中に埋めて処理する技術が鍵となります。日本の場合は、圧力をかけて液体にして二酸化炭素を通さない岩盤の下の砂岩層にため込みますが(例:苫小牧の実験施設)、 アイスランドでは昨日出てきた「洪水玄武岩」を使おうとしています。 https://phys.org/news/2016-10-co2-stone.html https://www.carbfix.com/how-it-works 等に概略の紹介がありますが、玄武岩と二酸化炭素と水が反応して二酸化炭素が固化(鉱物化)するそうです。 反応の詳細は下記の論…

マントルプルームと大量絶滅

マントルプルームという概念があって、下記youtubeが分かりやすいです。 https://www.youtube.com/watch?v=d_vQb9Bkpgc アイスランドは現在活動中のマントルプルームの出口です。他にハワイ、イエローストーン(米国)、インド洋のレユニオン島などがあります。マントルプルームは動かずに大陸が動くため、火山の列ができるとのことです。 玄武岩が大量に広がっている場所(洪水玄武岩 flood of basalt)は、大規模なマントルプルームが発生した場所であると考えられています(スーパープルーム仮説)。地球磁場の大きな変化も伴うようです。 アイスランド周辺は洪水玄武…

世界の研究所 Raykjavik Energy

今週の世界の研究所は、地熱発電もやっているアイスランドの公益事業会社 Raykjavik Energyを取り上げます。 https://www.youtube.com/watch?v=6we3gox0f5g アイスランドの人口は36万人で(日本の300分の1)、面積は10万km2(日本は38万km2なので4分の1)です。人口を日本の都市で比較すると、宮崎市(40万)、横須賀市、長野市、和歌山市、東京都北区、旭川市、高知市(33万)程度です。独自のアイスランド語がこの人口で維持されている(話者30万人)というのは驚きです。 この人口規模だと小規模の発電所で足りますね。地熱30%、水力70%だそう…

マグマの成因

昨日の話は、ギアナ高地のテーブル台地tepuiは海底・川底の堆積層が隆起するときに平らな表面が上から加熱されて一部の表面が変成して硬くなったのだ、ということでした。表面の一部の加熱は、マグマがあちこちから噴き出して表面に触れたとすると説明できそうです。そもそもマグマができる理由がわからなかったので調べました。高温高圧の地下の岩が横に引っ張られると圧力が下がって液体になる(海嶺、ハワイやアイスランドなど)、プレートが海底で沈み込むときにある深さで水が抜けて融点が下がって融解する(日本など)、などですね。面白いです。隆起は造山運動に関係していて、造山運動はプレート同士が衝突するときに典型的におこる…

テーブル型の山の成因はマグマによる表面の変成

高さ1000m近い断崖に囲まれたテーブル型の山ができる理由が気になります。 https://www.tbs.co.jp/heritage/2nd/feature/2016/201606_01.html https://www.worldatlas.com/articles/what-is-a-tepui.html 下記の説明は、南アフリカのTable Mountainに対するものです。昔の川底にたまった砂が硬い砂岩になって、そこだけ平らに残ったという説明です。2004年の論文に基づいています。 https://www.thetablemountainfund.org.za/why-is-tab…

世界の研究所 Amazon Conservation Team

今週は夏休み?ということで、旅行気分で「ギアナ高地」の珍しい地形の話をしましょう。行ってみたいところの一つですが、若い時でないと体力と健康がちょっと不安ですね。世界の研究所は、ギアナ高地も守備範囲に入れている国際非営利団体 Amazon Conservation Team をとりあげます。 https://www.amazonteam.org/ https://www.amazonteam.org/maps/guiana-shield/ webの会計報告(financial report)をみると、年間予算$7,819,728(2020年)なので、約10億円ですね。そのうちの79%を本来の目的…

海に鉄塩を撒くと本当に植物プランクトンが増えた

マーチンの鉄仮説の実験結果は下記に良くまとまっています。 https://ippjapan.org/archives/1265 まとめると下記です。 ・鉄散布の有効性は認められ、1990年代当時のCO2排出量の25%を吸収するポテンシャルがあることが分かった ・2週間で植物プランクトン数に顕著な効果があるという即効性 ・CO2吸収効果のためには、最終的に炭素が沈降して出てこなくなる必要があるが、動物プランクトンの数などに左右されるので不安定 ・植物プランクトンは増えすぎると「赤潮」「アオコ」なので、制御できない場合は危険。特に漁業への影響。 ・関連実験は、海洋への廃棄物投棄に関するロンドン条約…

マーチンの鉄仮説

マーチンの鉄仮説の話の流れはこうです。(J. H. Martin, Paleoceanography 5 (1990) 1-13) ・氷床試料中のCO2分析により、氷河期はCO2濃度が低いことが知られている。(氷河期は200ppm以下、産業革命前は280ppm、ちなみに2020年は420ppm) https://ds.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/ghgp/co2_trend.html ・海は植物プランクトンがCO2を吸収するため、大気の60倍のCO2貯蔵能力があることが知られている。 ・Martin博士らが、いろいろな海域・深さのFe,N,P,C濃度と植物プランクトン密…

世界の研究所 Moss Landing Marine Laboratories

今週の世界の研究所は、米国カリフォルニア州の Moss Landing Marine Laboratories を取り上げます。ここは、カリフォルニア州立のSan Jose State University(1857設立)が運営し、23校のカリフォルニア州立大学機構が共同参画している海洋学の研究所です。Moss Landingは地名のようです。 https://mlml.sjsu.edu/ 博士審査の公聴会(thesis defenses)が写真入りで世界中にアナウンスされているのが面白いです。 https://mlml.sjsu.edu/defenses/ California州には、Cal…