世界の研究所 欧州宇宙機構の探査機 Hera

今週木曜日はふたご座流星群です。今年は晴れていればたくさん見えると予想されています。流星は地球軌道上の岩(”小さい”小惑星)が地球と衝突してできるものです。流星群は、小惑星がたくさん集まっているところを地球が通過するときに見えます。 今週の世界の研究所は、European Space Agency (ESA)の宇宙探査機Heraを取り上げます。 https://www.esa.int/Space_Safety/Hera この探査機のミッションはちょっと込み入っていて、小惑星が地球に衝突するのを回避する計画に関するものです。映画「アルマゲドン Armageddon」(19…

ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げ

James Webb Space Telescopeの打ち上げのライブ動画の録画(2時間余)がyoutubeにあがっています。2021年12月25日です。 https://www.youtube.com/watch?v=7nT7JGZMbtM 6分ぐらいに司会の女性が I am an astronomer. と自己紹介しているのがいいですね。 15分くらいの、なぜ赤外線の望遠鏡を作ったのかという解説もわかりやすいです。惑星の水分子や星雲などの分子を見ること(おそらく熱による発光)、赤外領域まで赤方偏移した古い遠くの恒星や銀河を見ることが目的です。 20分くらいから製作の様子や苦労など。責任者の…

ウェッブ宇宙望遠鏡の冷凍機と検出器

James Webb Space Telescope の製作については公式youtubeがあります。 https://www.youtube.com/watch?v=zXyz1QtPqUY 太陽電池は2kW出力です。長さ6mと、思ったほど大きくないですが、自動的に展開(deploy)する仕組みのようです。 https://www.youtube.com/watch?v=I5PLNHAs2io 使用電力は1kWで、太陽電池の劣化を考えて2kWにしているようです。 可視(波長600nmの赤)~近赤外(5μm)は37ケルビンに冷却したHgCdTe検出器を使っています。この温度は、太陽光や地球からの赤…

ウェッブ宇宙望遠鏡、大きさはプールくらい、主鏡はベリリウム製

James Webb Space Telescopeの大きさは、パラボラ状の主鏡が直径6.5m、ひし形の「台」のサイズが21mx14m、打ち上げ重量は6.5トンだそうです。 小学校のプールの水面より少し小さいくらい、ということで、思ったよりも大きいですね。 https://en.wikipedia.org/wiki/James_Webb_Space_Telescope 写真が下記にあります。「ひし形の台」と見えたのは主鏡と検出カメラに太陽光が当たらないようにする “sun shield”で、厚さ0.1mmのカプトン(ポリイミド)膜にアルミを蒸着したものが5枚重ねてあるそ…

ヘリウムの同位体 3He

「今日の英語」は1週間お休みをいただきました。お休みの前はPlank探査機の検出器を冷やすための希釈冷凍機の話をしていました。希釈冷凍機は、3Heと4Heの混合と分留によるエントロピーの輸送を利用して冷やします。常圧では固体にならないので極低温で使えます。3Heは私が学生の時に使っていましたが、非常に高価(たしか1Lの気体が10万円)、かつ不純物としてトリチウム(3H)を含むため吸い込んではいけないという指導をうけました。今日は3Heの資源について調べてみましょう。地球上では重力が弱いので4Heと同様、失われるだけのようです。4Heは放射壊変のα線として生成もされますが、3Heはビッグバン以降…

プランク探査機搭載の冷凍機

Planck探査機はもう役目を終えましたが、2.726Kの黒体輻射に相当するマイクロ波を角度分解して強度分布を測定し、揺らぎの大きさを調べるのがミッションでした。このようなマイクロ波は、それより高い温度の物体からは大量に放出されますから、検出器はより低い温度に置かなければなりません。ヘリウムの同位体を使った冷凍機が必要です。 使用された多段式冷凍機の解説記事は下記です。 https://www.esa.int/Enabling_Support/Space_Engineering_Technology/Planck_s_cooling_chain 太陽電池と制御システムが入っている高温側と、検出…

宇宙背景輻射と宇宙の年齢

宇宙背景輻射をいろいろな方向で詳細に観測すると宇宙の年齢がわかる、というのは不思議な気がします。下記が解説です。 https://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/1996/pdf/19960805c.pdf https://astro-dic.jp/cosmic-microwave-background-radiation/ nasaの解説は画像があって分解能向上がはっきりわかります(これらの画像はモデル図ではなくて実物だと思いますが…?) https://www.nasa.gov/mission_pages/planck/multimedia/pia168…

世界の研究所:ウィルキンソン探査機とプランク探査機

先週金曜日に宇宙の寿命の話をしました。現在はビッグバン以来138億年ということになっています。そのデータを取ったのが米国のウィルキンソン探査機(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe, WMAP)と欧州宇宙機構のプランク探査機(Planck Surveyor)です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/WMAP https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF_(%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E8%A1%9B%E6%98%9F) WMAPは打ち上…

The Door into Summer (10) 宇宙の寿命

金曜日は「夏への扉」を読みながら「時間」について考えることにしています。毎日暑いので、宇宙の寿命について考えると涼しくなるでしょうか。宇宙の将来についてはいくつか説があるようです。 収縮してbig bangの状態に戻る big crunch https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81 big bang の状態の手前で反転膨張に転じる big bounce https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%83%…

世界の研究所: Inst. of Volcanology & Geodynamic ANSRF, Russian Academy of Science

先週はダイヤモンドアンビルセル(diamond anvil cell)を使った放射光実験で、ガスケットとして使用する元素レニウム(rhenium, Re)の板をいじっていました。今週の世界の研究所は、レニウムの鉱物であるReS2を1994年に発見した樺太のユジノサハリンスク(豊原)にある Inst. of Volcanology & Geodynamic ANSRF, Russian Academy of Science をとりあげます。wikipediaにも載っていない小さな研究所だと思います。研究所のwebも見つかりません。が、ここの研究者(とInstitute of Experi…