先週はダイヤモンドアンビルセル(diamond anvil cell)を使った放射光実験で、ガスケットとして使用する元素レニウム(rhenium, Re)の板をいじっていました。今週の世界の研究所は、レニウムの鉱物であるReS2を1994年に発見した樺太のユジノサハリンスク(豊原)にある Inst. of Volcanology & Geodynamic ANSRF, Russian Academy of Science をとりあげます。wikipediaにも載っていない小さな研究所だと思います。研究所のwebも見つかりません。が、ここの研究者(とInstitute of Experimental Mineralogy, Russian Academy of Sciences, モスクワ近郊, の人たち)は火山から多くの新鉱物を発見しているそうです。
Reは地球上でも宇宙でも存在量が少ない金属として知られているためか、ReS2鉱物の発見(1994)はNature誌にのりました。火山ガスから気相成長していると考えられています。確かに驚きです。
https://www.nature.com/articles/369051a0
発見されたのは択捉島(Etrofu/Itrup Island)の茂世路岳(モヨロダケ、Medvezhia, 標高1124m)のKurdiavy火山(日本名 硫黄岳)です。
https://en.wikipedia.org/wiki/Medvezhya
https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/sapporo/151_Moyorodake/151_index.html
スミソニアン協会の当該火山のページでは(Japan – administered by Russia)と書いてあります。
https://volcano.si.edu/showreport.cfm?doi=10.5479/si.GVP.BGVN199508-290100
人の入ったことのない火山で火山ガスを採取し新鉱物を探索する営みは、ある種の尊敬に値する研究生活だと私には思えます。地球外天体でそういう営みを行うのは現在はロボット探査機ですが、人間が実際に行っておこなう日が来るかもしれません。
今週は元素レニウムについて解説します。
英語は上記スミソニアンから。
fumarole 噴気口
crater 火口、クレーター
plume 長い羽毛、羽飾り、煙の柱 level 7
“… the wind shifted to the SW, making any measurements essentially oblique to the plume axis, and therefore of great uncertainity”. この英文のリズムを覚えて書けるようになってください。
the SW =south west 西南方向
oblique オブりック 斜め
“Eruptions have been documented since the 18th century, although lava flows from cinder cones on the flanks of Menshoi Brat were also probably erupted within the past few centuries.”
eruption 噴火
lava 溶岩
cinder 燃えがら、消し炭、噴石 level 16
a cinder cone = a scoria cone 噴石丘
flank 横腹、脇腹、山などの側面 level 9
“An occasional strong odor of H2S was detected at the camp during measurements.”
occasional ア「ケ」イジョナる 時折の
odor 「オウ」ダー 臭気、におい level 5
※ 「硫黄岳」とあるので大量のH2Sが出るのでしょう。H2Sの中でReが硫化物として気化し、ReS2が蒸着されたのだと思いますが、大気開放で酸素もある環境下なので酸素を含まないReS2ができたというのがやっぱり驚きです。