世界の研究所 Fridtjof Nansen Institute (Norway)

今週の世界の研究所は、ノルウェーの Fridtjof Nansen Institute (フリチョフ・ナンセン研究所)です。 https://www.fni.no/?lang=en_GB 研究対象はちょっと変わっていて、環境、生物多様性、気候変動の他に海洋法、北極・ロシア政治について研究しているようです。北極とロシアはいろいろあります。北極点には陸地が無いですが、石油、天然ガス(一説では地球上の1/4)、鉱産資源が豊富だと言われていて、ロシアが2007年に北極点の海底(深さ4261m)に潜水艇でチタン製(!)の国旗を建てて排他的経済水域であると主張したことにより緊張が高まりました。2015年に…

帝国南極横断探検隊

昨日の https://japan.googleblog.com/2012/07/blog-post_18.html で「シャクルトン隊の小屋」というのがあったと思います。映画などで知っている人もいるかもしれません。 Sir Ernest Henry Shackleton(1874-1922)は、アイルランドの探検家で、アムンセンによる南極点到達のあとを受けた南極大陸横断(南極点通過)の探検を企画しました。その途中で船が流氷に閉じ込められ破壊され遭難しましたが、隊員28人を率いて2年間かけて自力で全員の生還に成功した、というすごい人で、しばらく前に「リーダーの模範」として日本でもブームになりま…

世界の研究所 ミネソタ大学極地研究所

今週の世界の研究所はミネソタ大学極地研究所(The Polar Geospatial Center (PGC) at the University of Minnesota)です。 https://www.pgc.umn.edu/ 研究所といっても、遠隔観測等のデジタル情報を扱うサービスを専門にしているようです。 https://japan.googleblog.com/2012/07/blog-post_18.html 今週は極地探検家を取り上げようと思います。 spatial spaceの形容詞。スペイシャる「空間に関する」「場所の」 spacial これも 「空間的な」スペイシャる 辞書…

大気CO2還元に必要なエネルギー総量

CO2の海底貯留は数十年の一時しのぎにすぎません。還元して燃料に戻すのが理想です。 そのためには、エネルギーが必要です。見積もってみましょう。 地球大気の100ppmのCO2は、1.8×10^16 molに相当。 熱化学方程式が簡単です。 C(黒鉛)+O2(気)=CO2(気)+ 394kJ/mol なので、 394*1.8E16=7.1E18 kJ=2E18 Wh =2000 PWh Eは”10^”の意味です。Pはpetaで1E15 (ギガの6桁上 G(giga), T(tera), P(peta))。 (※4電子還元で炭素にしなくてもいいかもしれませんが、今回は簡単な…

大気の総量と回収すべきCO2量

大気の総量の計算法について。 昨日は対流圏の厚さを使いましたが、上の方は圧力が低い(上端で約0.1気圧)ので正しくありません。昨日は気圧が対流圏全部1気圧として計算していたところが間違っていました。頭のいい方法が下記に載っていました。大気圧そのものから、大気の質量を求めます。 https://www.s-yamaga.jp/nanimono/taikitoumi/taikiatsu.htm 地表は1気圧 = 1013 hPaです。P=m g/S , g=9.8ms^-2 なので、 1m^2の上の大気の質量は m = PS/g= 1.03323×10^4kgとなります。海の中の圧力と同じですね。…

世界の研究所 CO2海底貯留実験施設(苫小牧)

今週の世界の研究所は、北海道苫小牧にあるCO2海底貯留実験施設です。これは資源エネルギー庁がお金を出してつくった民間企業が運営しています。二酸化炭素排出に国際的に課金されるようになると、それを引き取るビジネスが成立するはずです。 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ccs_tomakomai.html https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ccs_tomakomai_2.html CO2は、25℃でも67気圧で液体になります。(臨界点は31℃73気圧…

最尤法

政府の「地震本部」に余震の確率計算法が出ていました。 https://www.jishin.go.jp/reports/research_report/aftershock/yoshin2_yoshin2/ Gutenberg-Richter則(大きな余震ほど数が少ない)や大森公式(時間とともに減る)が使われていて、パラメータの推定には「最尤法」が使われています。機械学習にも統計学用語をいろいろ使うので、7月末の講義のために英語を勉強しているところです。現代の統計学はちゃんと習った人は少ないかもしれませんが、知っておいた方がいいと思います。私が学生の時習ったものとはだいぶ違って面白くなっていま…

世界の研究所 PHIVOLCS (フィリピン)

今週の世界の研究所は、フィリピンの火山地震研究所(PHIVOLCS; Philippine Institute of Volcanology and Seismology)をとりあげます。 https://www.phivolcs.dost.gov.ph/ ここは、1991年のピナツボ火山の大噴火への対応で素晴らしい功績を残しました。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%8A%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%9C%E5%B1%B1 日本は、火山の担当がいろいろな省庁に分散しているのと、大学の研究者が減っているとのことで、ち…

江戸時代の飢饉の原因

江戸時代には4回飢饉がありました。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%9F%E6%88%B8%E5%9B%9B%E5%A4%A7%E9%A3%A2%E9%A5%89 最後の天保の飢饉は1833年から39年までですから、185年前で、それほど昔ではありません(一世代30年として6世代前、おじいさんの、おじいさんの、さらにおじいさん(自分がおじいさんの年齢の場合。自分が子供の年齢で考える場合は、「おじいさん」が1回減ります))。人口も江戸期の国勢調査(享保の改革から6年ごと)の記録があり、1834の27,063,907人から1840年の25,918,412人…

重力波研究の先駆者

重力波検出の試みを行った先駆者として、Maryland大学の故Joseph Weber教授がいます。貧乏なため海軍の技術者として電子工学を勉強し、退役後に教授になりました。1952年にアインシュタインのA係数とB係数が光増幅と関係あるのではないか(レーザーの原理)?と提案して有名になりました。サバティカルで一般相対論を勉強して、数mのアルミニウムの円筒をピエゾでつないだ”Weber bar” を作って重力波を検出しようと試みました。検出したという報告を1969年以降にPhys. Rev. Lett.等に発表しましたが、複数個所で観測を行っても同時検出が得られず、また感度…