人工細胞のバージョンアップ

NISTのwebを見ていたら面白い情報がたくさんありました。生物用の顕微鏡システムを作っている部門があります。 https://www.nist.gov/news-events/news/2021/03/scientists-create-simple-synthetic-cell-grows-and-divides-normally は、NIST、JCVI(←来週月曜日)、MITの共同研究で、人工的に作った細胞を正常に分裂させるために必要な7個の遺伝子を同定したというものです。最少の遺伝子を持つ生命体を作ろうとする試みですね。怪しいものができなければいいのですが。このJCVI-syn3Aは遺…

家畜の遺伝子改変による防疫

家畜の病気は、最近の豚コレラや口蹄疫などニュースになっているように、防除に多大な努力が必要です。家畜を遺伝子改変して感染に関与する受容体を子孫にわたって削除してしまおうという試みが実行されようとしています。 (下記、無料版は冒頭のみ) https://www.technologyreview.com/2020/12/11/1013176/crispr-pigs-prrs-cd163-genus/ 昨年ノーベル賞のCryspr-Cas9を用いるようです。HIV対策で人間の受精卵に対して同様の試みをした無茶な学者がいて問題になりましたが、それを受けて国際的に協議が行われ、生まれていない人間の疾病予…

飢饉対策冊子「かてもの」、ジャガイモききん

天保の飢饉は大被害をもたらしましたが、明るい話題もあります。米沢藩では、1802年に、「かてもの(糅物)」というパンフレットが配布(1575部)されました。これは、飢饉のときに使える山野の代用食糧の解説書で、天明の飢饉の後、名君と呼ばれる上杉鷹山公(1751-1822)と有能な家老・莅戸善政(のぞき よしまさ1735-1804)により作成されたものです。備蓄を含めた事前の対策のおかげで、天保の飢饉(1833-39)では米沢藩では餓死者がでなかったとのことです。また、「かてもの」は後の屯田兵も活用したそうです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8B%E3…

世界の研究所 FAO 国連食料・農業機構

今週の世界の研究所は、国連食糧・農業機構(FAO; Food and Agriculture Organization of the United Nations)を取り上げます。行政だけでなく、傘下に研究機関を抱えています。世界人口が90億人を突破しており、食料の確保は重要です。本部はイタリアのローマにあります。職員は3400人です。「Fiat Panis 食料を!」という意味のラテン語がロゴになっています。 最近FAOは「昆虫食」を勧めています。下記動画はラオスの日常食の紹介で「閲覧注意」です。 https://www.youtube.com/watch?v=BogV5aVW5zE 下記の…

生物選鉱

生物選鉱という技術があります。これは、特定の金属を代謝する細菌と鉱石を一緒にしておくと、特定の金属が溶解され溶液中に集められるというものです。プロセス速度は遅い(1年以上)ですが低濃度の鉱石では採算が取れるとのことで、フィンランドのニッケル鉱については実用化されています(Ni,Zn, Co, Cuを回収)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Ahtium#Operations https://www.terrafame.com/production-methods.html ←写真があります youtubeは残念ながらフィンランド語しかありません。「terrafame…

ドリトル先生とナマケモノ

動物と話をする、というとドリトル先生の話を思い出しますね。 作者のHugh Lofting (1886-1947) はイギリスとアメリカを行き来した童話作家で、他の仕事をしているときに自分の子供むけに作った話が本になりました。機関車トーマス(The Railway Series by Rev. Wilbert Awdry オードリー牧師)もそうなので、よくあるパターンのようですね。 ネット上の自由出版プロジェクト Project Gutenbergで最初の話”The Story of Doctor Dolittle” その他が読めます。挿絵もついています。最初の話はボラ…

バウリンガル

若い人は知らないかもしれませんが、2002年9月に、タカラ(現・タカラトミー)からバウリンガル(Bow-Lingual)というおもちゃが発売されました。犬の首輪に装着したワイヤレスマイクの信号を本体が受けて、解釈します。「フラストレーション」「威嚇」「自己表現」「楽しい」「悲しい」「欲求」の6種類の感情が表示されたそうです。当時、これには驚きました。14800円が半年で30万個(44億円、そこでほぼ終わり)売れたヒット商品となり、イグノーベル賞「平和賞」を受賞しています。2009年に新型を出しましたが、この売り上げは不明です。そのあとiphoneアプリ版が出ています。 https://alla…

動物の鳴き声にも意味があるはずだ

動物の鳴き声にも意味があるはずだ、と考えた先駆者に米国のRichard Lynch Garner (1848-1920)がいます。 https://en.wikipedia.org/wiki/Richard_Lynch_Garner 少年兵として南北戦争(1861-65)に従軍したという昔の人ですが、類人猿の言葉を録音機器を使って調べた最初の人です。Edisonが発明した蓄音機で動物園の猿の鳴き声を記録して,それを猿に聞かせて反応を見るなどの実験で意味を探りました。その結果を出版し、Edison, Bell(電話のベルの父親で、聾者のために発音記号を発明した教育者), Cleveland(22…

世界の研究所 Konad Lorentz Institutes

今週の世界の研究所は、AustriaのVienna(ウィーン) 近郊にあるKonrad Lorentz Institute for Evolution and Cognition Research (コンラート・ローレンツ進化と認知の研究所)とKonrad Lorentz Institute of Ethology(同・動物行動学研究所)を取り上げます。Konrad Lorenzは、動物生態学の創始によって1973年にノーベル医学生理学賞を受賞しました。同時受賞者はミツバチが8の字ダンスをして蜜の方向を仲間に知らせる方法を解読したKarl von Frischと魚の本能行動を解明したNico …

都市伝説 百匹目の猿現象

ユング心理学のsynchronicityを敷衍(ふえん)すると、「百匹目の猿現象」のような都市伝説ができてしまうので要注意です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BE%E5%8C%B9%E7%9B%AE%E3%81%AE%E7%8C%BF%E7%8F%BE%E8%B1%A1 これは、日本の小さい島の猿が芋を洗うことを覚えて、その数が増えていくと、他の島でも洗うようになったという話ですが、出典とされる論文には記載がなく、証拠のない「都市伝説」であるとされています。その題名の本も出ていますが、専門家から繰り返し否定されています。 一時期流行った「ミーム m…