世界の研究所 WEHI (オーストラリア Walter and Eliza Hall Institute of Medical Research)

今週は年度末行事や各種会議で時間が切迫することが予想されるので、youtube鑑賞で楽をしようと思います。世界の研究所は、細胞内現象の分子レベルの動画を多数公開している、オーストラリアのWEHI (Walter and Eliza Hall Institute of Medical Research)をとりあげます。 https://en.wikipedia.org/wiki/WEHI メルボルンにあって、1915設立、以前の所長(Sir Burnet)は免疫のクローン選択説でノーベル賞を取っています(1960)。動画というのは、例えば下記です。 https://www.youtube.com…

インドは最大のワクチン生産国

昨日紹介した本によると、インドは世界最大のワクチン生産国だそうです。Serum Institute of India (SII, インド血清研究所)が世界最大のワクチンメーカーで、年間売上高586億ルピー=880億円(2018)。インドでのバイオ医薬品の市場規模は650億ドル。糖尿病患者数も世界一で、インシュリン製剤の開発も活発に行われているとのこと。 SII本社があるのはデカン高原にあるPune市(プネー、標高600m、人口500万、古くからの学園都市)で、冬は過ごしやすいが夏は高温、ただし乾燥している(年間降水量741mm, 東京は1528mm)とのことです。 https://ja.wik…

MEMSの最近の動向とbio-MEMS

超音波については来週に回すことにして、MEMSの最近の動向について。加速度センサー、気圧センサー、マイクなどはスマホやゲーム機、時計などに搭載されて日常に使われています。光学部品としては、MEMSで動く微小な鏡を使って超小型プロジェクターなどが実現されています。 https://www.youtube.com/watch?v=_8zq1JoI_eY 人体、特に神経系と機械のインターフェースの研究が盛んになっています。下記が2017年のレビューです。 https://www.nature.com/articles/micronano201666 ・視神経とのインターフェースで人工網膜(実用にはま…

ノーベル医学生理学賞2021 センサータンパク質

今週は世界の飛び地を見て回ろうと思ったのですが、ノーベル賞の週でもあるので、飛び地は来週に回しますか(まだ迷っています)。 とりあえず、今日は医学生理学賞のタンパク質を見ることにしましょう。 欧州のデータベースはアクセス集中のためか、遅くなっています。日本のタンパク質データベースを見ましょう。 温度を感じるイオンチャンネルが下記で、いろいろな温度で構造解析がなされています。クライオ顕微鏡(ヘリウム温度まで試料を冷やして高分解能で観察)のデータが今年出ていますね。収差補正測定が可能になったということでしょうか?私が学生のときはまだ分解能が悪くて大まかな構造しかわからなかったのですが、原子位置がタ…

フランクリン北極探検隊の鉛中毒

今日は悲劇のフランクリン北極探検隊(1845)を取り上げます。 これは、北極探検の最初期に行われた、カナダの北側を通って大西洋と太平洋を結ぶ航路(北西航路)を見つけるための遠征です。イギリス海軍肝いりで行われましたが、129人(133人?)の隊員が全滅しました。北西航路を確立したのは、南極点一番乗りのアムンセン(1906)です。優秀な人は複数の業績を上げますね。私のみるところ、要因は才能だけでなく、性格や仕事のやり方が対象(と時代)に合っている場合が多いと思います。これは「運」を構成する一つの要素だと思います。合う対象を探すか、自分を変えるか、気にせず自分を貫くか、人それぞれですね。 http…

稲がシリコンを集める仕組み

稲のもみ殻には乾燥重量の20%のSiO2が含まれているとのこと。”稲はシリカを何に使っているかというと、葉、茎を硬くして細くても力学的に強くすること、籾を外敵(虫など)に食べられにくくすること、また、水蒸気のバリヤ材として皮が薄くても過剰な蒸散を防げること、などと言われています。遺伝子改変でシリカが取り込まれないようにすると上記の機能が無くなり、稲にダメージがあることが実験で確かめられています。 稲がシリコン(無電荷のケイ酸 Si(OH)4)を集める仕組みは日本の農研機構によって解明されました。3つの膜タンパクがかかわっていて、受動的(ケイ酸だけを選択的に通す穴)、能動的(ATPの…

もみ殻に含まれるケイ素、Rochow-Mullerの直接法、3交代勤務

稲の籾殻(もみがら)には乾燥重量で20%のSiO2が含まれています。もみ殻を燃焼させてシリカだけを取り出す装置が販売されていますが、温度が高すぎると結晶化が進み、火山灰と同様に塵肺(珪肺)の原因になる粉が生じます。アモルファスにとどめておくと、生体内で分解が可能で毒性が低いとされてます。温度制御した燃焼装置を作っている会社が国内にいくつかあります。シリカの販路が少ない割に競争は激しそうです。 https://www.youtube.com/watch?v=25YOFurzhHU 約30年前、もみ殻が半導体シリコンの原料にならないかという話がありましたが、不純物として問題になるのは超微量の炭素な…

世界の研究所 スバールバル世界種子貯蔵庫(Svalbard Global Seed Vault)

今週の世界の研究所は、ノルウェー領スバールバル諸島のスピッツベルゲン島にあるスバールバル世界種子貯蔵庫(Svalbard Global Seed Vault)です。 https://www.youtube.com/watch?v=7C3nO8MYQQw https://www.croptrust.org/our-work/svalbard-global-seed-vault/ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%AB%E4%B8%96%E7%95%8…

ギンゴケ、シモフリゴケ、砂の惑星

年のせいか、図鑑のように写真の多い本を見て心を休めることが多くなりました(いくつか先人のそのような記述を見たことがあります。若い時は「なんと暇な・・・」と思っていましたが、今はわかります。年齢とともに、ずっと根(こん)を詰めることが難しくなります)。最近見ている本は、大石善隆著(福井県立大の先生です)・コケはなぜに美しい(NHK出版)ですが、その中で、ギンゴケ(Bryum argenteum)やシモフリゴケ(Rhacomitirum lanuginosu)が面白いと思いました。下記は、個人のwebですが、顕微鏡写真がすばらしいです。 https://soyokaze2jp.blogspot.c…

銅を集めるホンモンジゴケ

ホンモンジゴケ(Scopelophila cataractae)という東京の池上本門寺で1934年に発見されたコケがあります。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%82%B4%E3%82%B1 これは、寺や神社などの緑青のあるところに生える苔で、銅イオンをとりこんで細胞壁に貯める性質があります。銅以外の重金属イオンも集めて不活化するので、環境浄化の働きが期待され、研究がおこなわれています。これ以外にも重金属を貯める苔は数種類あるようです(copper moss 銅ゴケ と呼…