たたら製鉄

日本刀の材料である玉鋼(たまはがね)を作るのは「たたら」という日本で開発された低温製鉄プロセスです。 アニメ「もののけ姫」にも出てきます(下記サイトはbrowserによっては見にくいですが、スクロールを繰り返すと見やすくなるかもしれません)。 https://tetsunomichi.gr.jp/tales-about-tatara/princess-mononoke/ たたらの動画もいくつかyoutubeに上がっています。 https://www.youtube.com/watch?v=yvJGmLuhwzs 三昼夜かかるたいへんな重労働です。刀の需要に合わせて毎年冬に数回だけ行っているよう…

日本刀の作り方

日本刀の作り方については、下記が分かりやすいです。 https://www.youtube.com/watch?v=CgaUba0aSWQ ・玉鋼(たまはがね)は「たたら」で作ります(明日) ・玉鋼を叩いて割って、炭素量を目と手触りで見わけ、芯鉄(しんがね)と皮鉄(かわがね)2つに分類 ・温度を目で見て制御する ・何度も折り返す 皮鉄15回(2^15=32768層)、芯鉄8回(2^8=256層)の層状組織を作る ・「土置き」で模様を作る など、興味深い技が多いです。 この動画が43万回再生なのに対して、鉄を延ばして磨いただけの https://www.youtube.com/watch?v=x…

世界の研究所 島根大学次世代たたら協創センター

今週の世界の研究所は、ローカルですが、島根大学次世代たたら協創センターを取り上げます。 所長をOxford大学から招き(兼任)、近くに研究所(冶金研究所)がある日立金属(株)の研究者を教授(兼任)としている新しいタイプの研究所です。最新鋭の電子顕微鏡を数台購入しています(収差補正はついていませんが)。大学の先生方の力を生かすうまい仕掛けだと思います。 https://www.youtube.com/watch?v=41gqMD8wl_M 動画8分51秒から、Oxford大学では教授一人1.5億円/年、最低でも一人3000万円/年を企業から集めているとの発言があり、面白かったです。日本では企業か…

無振動ヘリウム冷凍機

昨日紹介した、KAGRAの無振動冷却装置について調べました。 https://gwdoc.icrr.u-tokyo.ac.jp/DocDB/0056/P1605622/001/DanD.pdf (博士論文) サファイヤの鏡に水ガラスでサファイヤの「耳」をつけ、インジウムで接着したサファイヤのワイヤーで吊っているようです。水ガラスはケイ酸ナトリウム水溶液。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B9 冷却はヘリウム冷凍機です。「GM(Gifford MacMahon) 型」「スターリング(Stirling)…

アーク溶接(3) 微量成分とマランゴニ効果

日本溶接協会はマンガも使って教育しています。阪大接合研が監修しているみたいですね。下記は面白かったです。 ステンレス鋼中の0.02%の硫黄が溶接結果に影響を与える話で、いろいろ動画が入っています。マランゴニ効果はいろいろなところで出てくるので皆さんも知っておいた方がいいと思います。 http://www-it.jwes.or.jp/we-com/bn/gatten/tig_penetration/index.jsp 溶接は熟練を要します。私は今回の実習ではうまくできず「実践には程遠いので、もっと修行するように」とのコメントをもらいました。今回の特別教育は溶接時の事故を防ぐためのもので、国の技能…

アーク溶接(2) フラックス(溶加材)、禁水、一酸化炭素

手棒溶接で使われる溶接棒(φ2~4mm長さ45㎝、溶接でみるみる短くなる)は、溶接される材料に近い組成の合金に「フラックス(flux 溶加材)」が厚く塗ってあるか管の中に入っています。フラックスとしては、イルメナイト(FeTiO3)系や酸化鉄など、用途によって下記いろいろあります。 https://engineer-education.com/production-engineering-24_electrode-arc-welding_flux/ http://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0050010090 フラックスについては既に必要な研…

アーク溶接(1) 電圧と電流値 溶接女子

アーク溶接は電流を流すことにより金属を融かして接合します。対象は鉄やアルミなど酸化されやすい金属がほとんどで、酸化物になってしまうと溶接できないので、酸化を防ぐ必要があります。方法は2つあって、固体(フラックスという)で覆う方法と、酸素を含まない気体を流す方法があります。建設現場で鉄骨等を溶接する場合は、フラックスを使うことが多いようです。この場合は、電源と45㎝の長さの溶接棒(使うとみるみる短くなる)だけで済み、手動なので簡単です。電源も、商用電源につなげないときのために、エンジン式の発電機と一体化したものが市販されています。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E…

世界の研究所 大阪大学接合科学研究所

今週の世界の研究所は、大阪大学接合科学研究所です。ここは国立の溶接工学の研究所の位置づけで、1972年に全国共同利用施設の大阪大学溶接工学研究所として設立されたものです。吹田キャンパスの産業科学研究所の隣にあります。 http://www.jwri.osaka-u.ac.jp/index.jsp 溶接については20年余で研究が十分進んだらしく、1996年に「接合科学研究所」に名称が変更されました。 現在は、溶接以外に、プラズマ溶射(例:フライパンのコーティング)、金属と無機材料の接合(真空装置の窓などに使われる)、導電性インク、金属・セラミックスの3Dプリンタなどの研究もおこなわれています。そ…

Hoffmann — Epilogue and Notes

今週でHoffmann & Schimidt “Old Wine New Flasks - Reflections on Science and Jewish Tradition” は終わりです。あとがきには、この本ができた経緯が書いてありました。 Hoffmann教授がイスラエルのBenGrion University の名誉博士号を授与されて記念講演をしたときに世話をした学長の秘書がもう一人の著者(Schimidt女史)で、第1章(Is nature natural?) の骨子(記念講演の内容紹介と考察)を新聞に書いたのがきっかけだそうです。ユダヤ人の歴史、…

Hoffmann ラクダの隊商とタンニン

今週のHoffmannは、第8章 Camel Caravans in Pentagonの続きです。本筋は、米軍兵士の中のユダヤ教徒が戦場で礼拝するときに、羊皮紙に書いた巻物の代わりに写真にとったものを使ってよいか、という問題の解決策で、ラクダの隊商において例外的に使われた規定(通常の儀式には紙に写したものを使ってよい)を準用する、という国防総省の見解があった、というものです。羊皮紙の化学についていろいろ説明があり、面白かったのは、皮をなめすのに使われたtannin (ポリフェノールの一種)の化学的作用で、皮の成分であるコラーゲンをでたらめに架橋して繊維を絡み合わせること、銀塩写真フィルムの工場…