マヨラナ粒子の論文の撤回

Microsoft Station Q 研究所は2016年にオランダのDelft工科大学に研究室を作りました。 https://news.microsoft.com/europe/2019/02/21/microsofts-new-quantum-computing-lab-in-delft-opens-its-doors-to-a-world-of-possibilities/ 上記ページにはいくつか動画がのっていて、量子コンピュータの解説をしています(単純化しすぎていて、わかりやすいかどうかは別)。 Majorana粒子を超伝導体と半導体のナノワイヤ接合で実現する話で有名ですが、都合の悪い…

菌体外多糖

チーズ、ヨーグルトと調べていたら、菌体外多糖(exopolysaccharides)というのを見つけました。 https://bifidus-fund.jp/keyword/kw080.shtml カスピ海ヨーグルトのねばねばが一つの例で、これは乳酸菌の一種が作ります。 https://www.fujicco.co.jp/corp/rd/report/caspia.html 菌が付加価値を作ってくれるので、いろいろな会社が手を出していますね。 別の例では、酢酸菌の一種がつくるナタデココがあります。ナタデココが発酵食品であることはしりませんでした。 https://macaro-ni.jp/44…

日本酒と火落ち菌

昨日、乳酸菌が日本酒の醸造をダメにする「火落ち菌」の大部分を占めるということでした。 https://w.atwiki.jp/moyashimon/pages/247.html 最近の日本酒は多彩な色や香りがあり進化しているのが感じられます。詳しい人によると、「純米酒」というのが、適度なアミノ酸を含んだ削りすぎないコメを原料に使うので、バラエティが豊富で進化しているとのことでした。このへんは、時間ができたら調べてみたいです。資本主義のいいところは、工夫と努力の対象が時代にマッチすると対価として返ってくるということで、進化が加速しますね。 火落ち菌 の解説は下記にあります。杜氏(とうじ)はチーズ…

世界の研究所 米国・Creative Enzyme社、日本・ヤクルト中央研究所

先週の研究会は天候にも恵まれ、無事終わりました。今日は講義のあと14時発の飛行機に乗り、東京で別の国際会議の仕事です。外国の知り合いを何人か呼んでいて、久しぶりに直接話ができます。明日夕方締め切りの重たい案件が一つあるので、まだ綱渡りです。先週痛めた腰が早く治るといいのですが… さて、今週は先週の続きで、乳酸菌~有用菌の関連を見ていきます。月曜日の研究所としては、下記はどうでしょうか? https://www.creative-enzymes.com/cate/probiotics_99.html このアメリカの会社はいろいろな酵素を売っているようですが、10年前からプロバイオティクス(要はヨ…

乳酸菌が作る抗生物質ナイシン

乳酸菌には”probiotics”など腸管内の生息により免疫の活性化などの効果があるとされていますが、単独でも他の菌を殺す作用があります。抗生物質ナイシン(Nisin)を産出します。食あたりに効果があるのを実感していますが、要因はこれかもしれません。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%83%B3 水溶性多環式抗菌ペプチドで、10億分の1(=part per billion)の濃度で効果があるとのことです。食品添加物として用いられています。食品添加物用には乳酸菌を天然物(牛乳など)に作…

プリオン研究における事故

タンパク質の折り畳みが異常になってそれが感染するというプリオン病は不思議なことが多く、盛んに研究されています。例えば、多次元NMRでタンパク質の各部分の距離を測定することができるので形状が分かります。その実験とコンピュータシミュレーションを組み合わせた昨年発表の研究などは面白いです。まれな過程の効率的なシミュレーションの例(metadynamics、いずれ解説しましょう)として勉強になります。 https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2019631118 この論文ではプリオンの断片を扱っていますが、断片ならば病原性はないのでしょうか。黄熱病の研究などでも野口…

世界の研究所 東京都医学総合研究所

今週の世界の研究所は、東京都医学総合研究所(Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science)を取り上げます。ここは、東京都が所管する公益財団法人という形式で運営されています。東京都の保健医療、都立病院等との連携の他、先週から続きのタンパク質凝集に伴う疾病や、免疫等についての基礎研究が行われています。 https://www.igakuken.or.jp/labo/laboratory.html 下記インタビューはこの分野を概観するのに参考になります。 https://www.terumozaidan.or.jp/labo/class/s2_05/…

ローヤルゼリーが女王バチを作る仕組みには論争がある

昨日のミツバチの巣で女王バチの部屋をほかの巣から持ってきて女王バチを再生する話が興味深いです。働きバチから分泌されるローヤルゼリーは3日目まで全幼虫に共通に与えられていますが、それ以降にも与えた幼虫が女王バチになるそうです。女王の部屋(王台というそうです)にいる幼虫にはローヤルゼリーを与える習性があって(未確認)、王台を移植したのでしょう。 https://www.akitayahonten.co.jp/aki0303-09.shtml https://en.wikipedia.org/wiki/Royal_jelly 女王バチにする因子はローヤルゼリーの中のMRJP1というタンパク質であると…

稲妻とUrey-Millerの実験

雷といえば雷鳴と稲妻です。雷鳴は、放電に伴って発生する高温による空気の膨張速度が音速を超えて衝撃波が生じ、それが音に変わるときにゴロゴロいう音になります。稲妻は放電経路から出る光ですが、例えば北斎の「山下白雨」にみられるように折れ曲がりと分岐があります。 https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/items/hokusai049/ 動画はたくさんありますが例えば下記がスローモーションもあって見やすいです。 https://www.youtube.com/watch?v=UNEZnK6V2QE それほど直線部があるわけではないことがわかります。 その仕組みについて…

ノーベル化学賞

2022のノーベル化学賞は”about snapping molecules together” に与えられました。click chemistry(クリックケミストリー)は、複雑な分子に特定の官能基をつけておき、その反応だけが確実に起こることを利用して、副産物無しに狙った分子だけを共有結合で結合させる概念で、いずれ受賞するだろうと言われていました。Meldal教授が最初の汎用的な反応を発見し、Sharpless教授が体系化しました。Sharpless教授は2001年に野依教授と一緒にすでに受賞しているため、2回目受賞があるかどうか、という話題がありましたが、今回受賞しま…