fMRIはまだ小部屋サイズ

今週紹介している論文をもう少し読んでいきましょう。 https://www.nature.com/articles/s41593-023-01304-9 脳の情報処理単位であるニューロン(神経細胞)は1000入力・1出力のプロセッサで、信号の強弱を0.1Vの電気パルスの頻度として扱います。ヒトの大脳皮質には160億個のニューロンがあるとのことです。 https://www.riken.jp/press/2014/20141121_1/index.html ネットワークを組んでいるので、1個のニューロンの大きさの定義は難しそうですが、1mm^3分解能で血流の時間変化を解析することで思考が読めると…

ガイガーカウンターと雪崩現象

高電界をかけた物質を励起した時に起こる雪崩現象は、放射線検出のガイガーカウンターでも使われています。この場合は、希薄気体中の放電に伴う雪崩現象が使われています。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%82%AC%E3%83%BC%EF%BC%9D%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%BC%E8%A8%88%E6%95%B0%E7%AE%A1 放射線が分子(希ガスなどが入っている)を励起して陽イオンと電子ができ、それが電界で加速されて移動するうちに他の分子に衝突します。そのときに運動エネルギーが十分高…

HARP管の雪崩現象による増幅

HARP管の光電変換膜(HARP膜)は、ブラウン管の蛍光面に対応する部分に厚さ15ミクロン程度のアモルファスSe(セレン)膜が蒸着されています。メッシュ電極を用いて高電界(15ミクロン厚に1500Vなので1億V/mですね)をかけることにより、電子と正孔を加速し、加速された電子や正孔が価電子に衝突して励起することにより電子と正孔が倍々ゲームで増えていく「雪崩(なだれ)増幅(avalanche アバランシェ増幅ともいう)」を起こさせて信号電流を増倍させます。この増倍が超高感度の秘訣です。電子は外壁側の電極から信号電流として流れ、正孔は電子ビームによって中和されます。HARP(ハープ)は high-…

トナーの攪拌には磁性体の粉が使われている

コピー機やレーザープリンターと言えば、トナーが必須です。トナーのなかみは、下記サイトがわかりやすいです。 https://www.ricoh.co.jp/pps/support/techinfo/laser_dousa1_jp.html 帯電がプラスとマイナスの物質があるのが面白いです。感光ドラムも+チャージ用(セレン)と―チャージ用(有機)になっているそうです。また、トナーに酸化鉄(マグネタイト)微粒子を加えたものをディベロッパーというそうです。磁石を回転させて攪拌しているそうで、developer(現像機)という名前から考えて、酸化鉄微粒子は回収再利用されるのではないかと思います。 この特…

電子写真(コピーとレーザープリンター)の感光ドラムの半導体

コピー機やレーザープリンターの感光ドラムに使う半導体はいろいろあります。有機半導体は異なる分子を混合することによって光励起できる深いトラップを作れるので理想的です。ほかの半導体で金属ドラムの上に成膜できるものというとかなり限られます。また、光伝導性や帯電性の制御が有機物よりも難しいと思います。セレンは古くからこの目的に使われてきましたが、毒性と摩耗性に弱みがあります。 アモルファスシリコンはセレンや有機物よりも硬いので長寿命ですが、トラップの制御がかなり難しいと思われます。 シリコンのダングリングボンド(dangling bond, 他の原子とつながっていない結合手)がトラップを作りますが、そ…

コピー機の感光ドラムには半導体が塗ってある

コピー機やレーザープリンターには「トナー」と「ドラム」があるのは聞いたことがあると思います。「トナー」は、固形インクの粉ですね。これについては後で見ることにして、「ドラム」は半導体が塗ってある金属の円筒です。下記サイトがわかりやすいです。 https://www.hodogaya.co.jp/english/products/segment01/electronic/ OPC = organic photo conductor 有機光伝導体 で、微結晶の金属フタロシアニンなどを塗ってあるものが多いと昔聞きました。最初期はセレン、長寿命をうたうアモルファスシリコンのものもあります。 chargi…

カルシウムやマグネシウムは鉄の不純物を吸収してスラグになる

溶鉱炉からは「スラグ」というのが出ます。調べたところ、鉄鉱石由来の成分もありますが、後から加える生石灰(CaO)や苦土石灰(CaMg(CO3)2)由来のものが多いと思われます。CaやMgを加える理由は、下記に説明されています。 https://www.tochigi-lime.com/%E3%80%8C%E7%9F%B3%E7%81%B0%E3%80%8D%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%AB%E4%BD%BF%E3%81%86%E3%81%AE%EF%BC%9F/ https://www.slg.jp/slag/process.html 鉄鉱石中のシリコン、硫黄、リンなどと反…

電炉による製鉄

製鉄は奥が深いです。色々調べていると疑問点がたくさん出てきます。さて、「電炉」というのがあり、鉄スクラップから鉄を再生するのに使われます。 http://www.fudenkou.jp/about_04.html 原料は鉄鉱石と違ってすでにほぼ還元されているので、融解することと不純物を除去することが主要な機能になります。溶接に使う「アーク放電」を使って温度を上げて鉄を溶かします。アーク放電は、ほとんど接触している金属同士の間に大電流を流そうとすると隙間の空気を介して放電が起こること。身近には、電池を導線で負荷に接触させるときに「パチッ」と火花が散るのがそれです。電灯のスイッチの火花や、突入電流…

Boston Metal は溶融塩電解で鉄を作ろうとしている

Boston Metalが追究している方法は、「溶融塩電解」と呼ばれるもので、加熱して融けた無機物に電流を流して電気分解します。古くはNaClを溶融したものに電流を流してナトリウム金属を得るなど、Hunphry Davy(1778-1829)が開発した方法です。鉄鉱石についても1810年に実験しているそうです。さらに、例えば氷晶石(Na3AlF6)を加えて融点を下げたボーキサイトを電気分解するとアルミが得られる方法はHeroult-Hall法として実用化されています。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83…

サイトカイニンとサイトカインは違う

今日は発根促進剤を含む植物ホルモンを見ていきましょう。 https://en.wikipedia.org/wiki/Auxin が日本語版よりだいぶ詳しいです。 ・1881年にCharles Darwinとその息子が単子葉植物の「子葉鞘」を使っての向日性(光屈性)についての実験をしました。先端に光を当てると光の方向に屈曲しますが、根に近いほうで光が弱いほうの細胞分裂が盛んになっています。したがって、なにかが先端から光刺激で細胞分裂している部分に移動していることが結論づけられました。 ・1910-13年にデンマークのP.B.Jensenが光屈性を示す先端を切り離したりくっつけたりして、ゼラチン膜…