HARP管の雪崩現象による増幅

HARP管の光電変換膜(HARP膜)は、ブラウン管の蛍光面に対応する部分に厚さ15ミクロン程度のアモルファスSe(セレン)膜が蒸着されています。メッシュ電極を用いて高電界(15ミクロン厚に1500Vなので1億V/mですね)をかけることにより、電子と正孔を加速し、加速された電子や正孔が価電子に衝突して励起することにより電子と正孔が倍々ゲームで増えていく「雪崩(なだれ)増幅(avalanche アバランシェ増幅ともいう)」を起こさせて信号電流を増倍させます。この増倍が超高感度の秘訣です。電子は外壁側の電極から信号電流として流れ、正孔は電子ビームによって中和されます。HARP(ハープ)は high-gain avalanche rushing amorphous photoconductor の略だそうです。膜を厚くして高電界をかけたところが発明ですね。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsssj/29/11/29_11_707/_pdf
上記論文によれば、HARP膜はガラス/ITO/CeO2/LiF+アモルファスSe+As/アモルファスSe/As2Se3/Sb2S3の多層膜です。Asは熱安定性を高めるため、LiFやCeO2は膜欠陥の発生やアモルファスSeが結晶化するのを防ぐために使われているとのことですAs2Se3/Sb2S3は表面電界による正孔の蓄積や電子の反射率調整のために工夫されているのだと思います。アモルファスSeはアバランシェ増幅におけるノイズが少ないというのも面白いです。アモルファス=非晶質は無秩序な原子配列を持つ物質ですが、安定して大量生産できる無秩序物質というのは不思議な気がします。セレンならではの自然の妙と言えるのではないでしょうか。

英語は雪崩に関する言葉です。 https://en.wikipedia.org/wiki/Avalanche
avalanche 「ア」ヴァらンチ アヴァランシェはフランス語から 複数形は acalanches
avalanche photodiode アバランシェフォトダイオード ダイオードに強い逆電界をかけた光検出器(ふつうは単結晶で、1素子が1画素)。HARP膜と同様の効果でなだれ増幅が起こる。高速応答、高感度が特徴。
https://www.cybernet.co.jp/optical/glossary/a09.html
landslide 地すべり 「ら」ンドスらイド
a landslide victory 地すべり的勝利(選挙)
slab avalanche 厚板雪崩
powder snow avalanche 粉雪雪崩
slush flows 雪解け雪崩
mudslides 泥流
rock slides 岩すべり
debris flow 土石流 = avalanche of sand and stone
pyroclastic flow パイロクらスティック 火砕流
serac collapse 氷塔崩壊
snowpack 残雪、積雪状態
erosion エロージョン 浸食
hypothermia 低体温症 “hypo”は低、”hyper”は高です。 hyperthermiaは熱中症による高体温症、または内部局所加熱によるがん治療法を指すことが多いです。
熱中症 =heat stroke, heat illness, insolation, heat attack, thermoplegia, thermic fever
terrain テ「レ」イン 地形
meteorological conditions 気象学的な条件

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