サイトカイニンとサイトカインは違う

今日は発根促進剤を含む植物ホルモンを見ていきましょう。
https://en.wikipedia.org/wiki/Auxin
が日本語版よりだいぶ詳しいです。
・1881年にCharles Darwinとその息子が単子葉植物の「子葉鞘」を使っての向日性(光屈性)についての実験をしました。先端に光を当てると光の方向に屈曲しますが、根に近いほうで光が弱いほうの細胞分裂が盛んになっています。したがって、なにかが先端から光刺激で細胞分裂している部分に移動していることが結論づけられました。
・1910-13年にデンマークのP.B.Jensenが光屈性を示す先端を切り離したりくっつけたりして、ゼラチン膜を介してそれが移動できるが、雲母の膜は通らないこと、したがってそれが圧力差などではなく、物質であることを明らかにしました。
・1928年にドイツのF.W.Wentが、その物質を人為的に吸着させたものが同様の作用を示すことを明らかにしました。ここまでくれば、後は分析化学が発展すれば分子の同定が可能になります。
※わずか100年前の話です。化学や分子生物学の進歩が急速であることにはあらためて驚かされます。
現在はこの物質がインドール-3-酢酸(IAA)であることがわかっています。また、植物の生長制御ホルモン auxin類の作用についても、遺伝子発現の制御であることがわかってきています。遺伝子発現の強化や抑制は10-20分の単位でタンパク質合成まで作用が及ぶそうなので、植物の時間スケールでは十分でしょう。人間も神経系だけでなく血液中の小分子(ホルモン)で内臓などをかなり制御しています(いずれとりあげます)。人体は神経系(意識)だけではうまく動きません。面白いです。
下記論文(オーストリアと名古屋大学WPI、2018年)では、遺伝子発現にしては応答が速すぎる場合があることに着目し、IAAが細胞に直接働きかけて細胞分裂を抑制する可能性を示しています。まだわからないことがあるのはいいですね。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6104345/
auxinの刺激で合成される二次的物質(?)が最近研究が進んでいるサイトカイニン cytokininで、核酸類似物質のようです。これを模倣して新しい農薬が作られつつあります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%8B%E3%83%B3
※サイトカイン cytokine というよく似た用語があるので要注意です。こちらは「生理活性タンパク質」。例はインターロイキンやインターフェロン。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%B3
ソメイヨシノがかかりやすいという天狗巣病は、菌がサイトカイニンを作るため枝が密集してしまうそうです。http://toolate.s7.coreserver.jp/kinoko/fungi/taphrina_wiesneri/index.htm

英語は https://en.wikipedia.org/wiki/Auxin のつづきから。
endogeneous 自家生産する
endo 中の  endocytosis 貪食作用  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%B9
exo 外の exothermic reaction 発熱反応
“Broad-leaf plants (dicots), such as dandelions, are much more susceptible to auxins than narrow-leaf plants (monocots) such as grasses and cereal crops, making these synthetic auxins valuable as herbicides. ”
herbicide 除草剤
be susceptible to ~への感受性が高い
suceptivity 感受率  magnetic suceptivity 磁化率(磁気感受率)
tip 先端
“Auxins help development at all levels in plants, from the cellular level, through organs, and ultimately to the whole plant. ” オーキシンは植物のすべてのレベルにおいて成長を手助けする。細胞レベル、器官そして究極的には全植物体である。
gene expression 遺伝子発現
perception 知覚
tissue 組織
stem 茎
root 根
leaf 葉
“Auxin has a significant effect on spatial and temporal gene expressions during the growth of apical meristems.”
spatial 空間的な  発音は special 特別な と同じです。
temporal 時間的な
apical 「エ」イピカる 頂点の、頂上の level 16
meristem メリステム (植物の)成長点 level 27

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