石炭火力発電所の二酸化炭素回収実用プラント

二酸化炭素分離プロジェクトで有名なものにBoundary Dam Carbon Capture Projectがあります。カナダのサスカチュワン州の電力会社SaskPowerが2014年から手掛けています。 https://www.saskpower.com/Our-Power-Future/Infrastructure-Projects/Carbon-Capture-and-Storage/Boundary-Dam-Carbon-Capture-Project これは、石炭火力発電所からのCO2を回収するプラントで、石油メジャーのShellが開発したCansolveという回収システムを使って…

世界の研究所 Global CCS Institute (メルボルン)

先週はノーベル賞の合間にCO2回収技術について解説を始めていました。今週はその続きで、世界の研究所はGlobal CCS Instituteを取り上げます。これはオーストラリアのメルボルンに本部があり、Washington DC(米国)、London(英国)、Brussels(ベルギー)、北京、東京に事務所がある40人の組織です。日本は環境省の幹部が入っているので、政府が関与しているようです。ここが出している二酸化炭素分離貯蔵(carbon dioxide capture and storage, CCS)に関する下記レポート(pdf注意)はあちこちで引用されています。 https://www…

2023年ノーベル化学賞

2023年のノーベル化学賞は、量子ドット=化学的に合成した半導体ナノ粒子の先駆者に対して与えられました。現在、一部のテレビ(パソコンのモニタ)には量子ドットが蛍光色素として使われています。有機分子と違って壊れにくく、発色もナノ粒子の大きさを変えることによって量子サイズ効果で調節できるという利点があります。Bawendi教授が量子ドットを発表したころ、私は大学院生で長期インターンで米国にいました。たしかBawendi教授はこの仕事でMITの助教授に抜擢され、すぐ教授になったと記憶しています。そのころ開発された半導体レーザーをつくるためのMOCVD(metal organic chemical v…

ヒスタミン受容体には4種類ある

昨日出てきた好酸球(eosinophil)に関する最近の(10年前ですが)レビューは下記です。Fig.2を見るといかに多くの過程が絡み合っているかがわかります。 https://www.nature.com/articles/nri3341 血液中に放出される様々な伝達物質がかかわっています。例えば小型のたんぱく質である「ケモカイン」は50種類以上あります。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%A2%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%B3 花粉症の薬でアレグラにはお世話になっていますが、これはヒスタミン受容体に結合してブロッ…

ヒスタミンと好酸球

アレルギー関係でよく知られている低分子はヒスタミン(C5H9N3)でしょう。これはI型アレルギーで登場する即効性の物質で、蕁麻疹(じんましん)、かゆみ、血管透過性の亢進(鼻水)、平滑筋収縮(気道でおこると喘息、腸で起こると腹痛・下痢)などを誘発します。 https://en.wikipedia.org/wiki/Histamine ヒスタミンは抗原が体内に侵入した時にリンパ球の一種であるB細胞が分化した形質細胞からつくられるIgE(免疫グロブリンE)が抗原を伴って組織中のマスト細胞や血液中の好塩基球に結合した時に放出されます。同時に他の信号伝達物質も放出され、さまざまなアレルギー反応を誘発しま…

強弾性は合金と有機低分子結晶で見つかっている

超弾性(擬弾性)や形状記憶効果は、応力や温度によって結晶構造が不連続的にスイッチする場合に起こる現象で、まとめて「強弾性 ferroelasticity」と呼ばれます。「強 ferro」は強磁性や強誘電性と同じく、温度・圧力等に応じて自発的に対称性の変化が起こることを意味しています(ちなみに、中国語ではferroは鉄と訳すので、この言葉は「鉄弾性」になると思います)。金属結合は比較的等方的なので結晶構造に切り替え可能な多様性が生じやすいですが、共有結合は化学結合の方向性があるので強弾性向きではありません。分子結晶の分子間に働く分子間相互作用は、その複雑さとファンデルワールス力に方向依存性が少な…

超弾性(擬弾性)は金属結合の微妙なバランスで生じる

強弾性(擬弾性)合金は、形状記憶合金と密接な関係があります。 金属の結晶構造には面心立方、体心立方、六方最密などいろいろなものがありますが、どの構造になるかは、金属の自由電子が作る平面波と原子核の正電荷の周期性の微妙なバランスで決まります。これを利用して、温度変化や外部から変形させようとする力で結晶構造が相転移する合金を作ることができます。外部からの力(「応力(おうりょく)」と言います)によって各面のなす角が90°の結晶からそうでない結晶に相転移する合金があったとすると、応力に対応して結晶面の角度が変わって大きく変形しますが、応力がなくなると90°にもどるのでもとに戻ります。wikipedia…

超弾性(擬弾性)

金属線を曲げるところを考えましょう。ゆるく、すこしだけ曲げると元に戻りますが、急角度で大きく曲げるとまがったまま元に戻らなくなります。元に戻らる場合を弾性変形、もとに戻らない場合を塑性変形と言います。弾性変形の範囲(弾性限界)を超えると塑性変形が起こると考えることができます。超弾性(擬弾性)とは、ある種の物質を大変形しても塑性変形が起こらず、もとに戻る現象です。通常の弾性は、弾性限界まではフックの法則で変形に比例した力が働きますが、超弾性はフックの法則から外れます(大変形の場合、力は緩やかにしか増えない)。仕組みは原子レベルですが、説明は明日にして、先に応用を見ていきます。いちばんよく見る例は…

世界の研究所 スウェーデン 王立技術大学 KTH

先週、大学の仕事が終わった後で真空中の駆動機構を作っていて、非磁性の良いバネが必要になりました。そういえば、超弾性合金を演示実験用にもっていたな、と思い出してバーナーで熱処理しながらコイルに巻いてみたところ、素晴らしいものができました。うれしかったので、今週は「超弾性(擬弾性)合金」について解説しましょう。世界の研究所は、1932年に超弾性現象が発見された(が、数十年埋もれていた)、スウェーデンのKTH(王立技術大学、Royal Insititute of Technology、スウェーデン語で Kungliga Tekniska högskolan)を取り上げます。 https://www.…

ヘリウムの同位体 3He

「今日の英語」は1週間お休みをいただきました。お休みの前はPlank探査機の検出器を冷やすための希釈冷凍機の話をしていました。希釈冷凍機は、3Heと4Heの混合と分留によるエントロピーの輸送を利用して冷やします。常圧では固体にならないので極低温で使えます。3Heは私が学生の時に使っていましたが、非常に高価(たしか1Lの気体が10万円)、かつ不純物としてトリチウム(3H)を含むため吸い込んではいけないという指導をうけました。今日は3Heの資源について調べてみましょう。地球上では重力が弱いので4Heと同様、失われるだけのようです。4Heは放射壊変のα線として生成もされますが、3Heはビッグバン以降…