深層学習の講演を聴く

昨日紹介したプリンストン高等研究所の講演ビデオ https://www.ias.edu/ideas/2017/machine-learning-lecun は、現在の機械学習の性能を引き出した「深層学習deep learning」を発明した 3人組(+ Yoshua Bengio, Geoffrey Hinton)の一人であるYann LeCunが演者です。 LeCunはFacebook社の副社長・AI研究部長とNew York大学教授を兼ねています。 http://yann.lecun.com/  地味ですが面白い個人のページです。 動画からいくつか面白いところを紹介します。youtubeで…

Amazon 創業者の引退

Amazon 創業者のJeff Bezos氏が第一線を退くというニュースは見たと思います。 wikipediaから。 https://en.wikipedia.org/wiki/Jeff_Bezos Bezos used what he called a “regret-minimization framework” while he worked at D. E. Shaw and again during the early years of Amazon. He described this life philosophy by stating: “W…

世界の研究所 AT&T Bell Laboratories

今週の世界の研究所は、今はなき AT&T Bell Laboratories (ベル研)を取り上げます。 AT&Tは電話会社。Bellという名前は電話の発明者A.G. Bellです。過去9件のノーベル賞(退職者の在籍時の業績も含む)を出しています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Bell_Labs 1937: Clinton J. Davisson 物質波の実験的検証 1956: John Bardeen, Walter H. Brattain, and William Shockley トランジスタの発明 1977: Philip W. Ande…

オランダASMLと最近のリソグラフィ技術(3)

リソグラフィにEUV光源を使えば、高価なマスクの枚数をUV光源に比べて10分の1以下に減らせます。マスク交換・位置合わせの手間もその分減るので生産性も上がります。 EUV光源は波長13.5nm程度の極端紫外線(extreme ultraviolet)というより軟X線で、ArFレーザー(193nm)よりも1桁以上短いです。 https://en.wikipedia.org/wiki/Extreme_ultraviolet_lithography 通常の物質は、いくら励起しても化学結合のエネルギーよりもずっと高いエネルギーを持つEUVの光を出すことはできません(化学結合が切れて壊れてしまう)。原子…

オランダASMLと最近のリソグラフィ技術(2)

ArF液浸リソグラフィは、ArFレーザーを使った193nmの紫外線を使ってリソグラフィーします。ArFレーザーはエキシマーレーザーの一つです。エキシマーexcimerというのは、励起状態で安定な原子や分子の会合体です。ArFの場合は、ArとF2を混ぜて放電してできるArF*というエキシマーを使います。昔からあるHeNeレーザー(633nm)、HeCdレーザー(325nm)などはこれとは違い、Heは放電で励起されてNeやCdの原子にエネルギーを移す役割です。 希ガスが励起状態で化学結合を作って会合体になるのは面白いですね。 https://en.wikipedia.org/wiki/Excime…

オランダASMLと最近のリソグラフィ技術(1)

オランダといえば、半導体装置メーカーのASMLは極端紫外光(EUV)でのリソグラフィ装置(7nm以下)を作れる唯一のメーカーで、2000年代になってからのArF液浸リソグラフィ以降、日本のニコンとキヤノンが持っていたリソグラフィ装置のシェアをほとんど奪ってしまいました。とりあえずニコンは古い特許のライセンス料をもらえたようです。 https://news.mynavi.jp/article/20190403-801385/ https://www.nikon.co.jp/news/2019/0123_01.htm ASMLは2013年にははArFレーザー光源(波長193nm)のCymer社(米…

世界の研究所 オランダ TNO

今週の世界の研究所はオランダについて調べました。面白いことに、研究所連合(TNO)の支店が日本にあります。 https://japan.tno.nl/about-tno/ TNOはオランダの国立研究所や大学の研究をビジネスに結び付けて世界に売り込む、日本にはあまりないタイプの組織ですね。大学の教員も所属して、研究とともに方針を決めたりしています。日本でいうとNEDOに近いかもしれませんが、NEDOは大学の先生が長期のメンバーとして所属したり、技術を外国に売込んだりはしていないです。 https://www.tno.nl/en/about-tno/lead-scientists/ sell, p…

SMILES

IBM roboRXNでは、分子の記述にSMILES(simplified molecular-input line-entry system)という記法を使っています。これは、分子中の原子のつながり方を1次元の文字列で記述する方法で、1980年代に開発されました。現在、大部分はオープンソースですが(”RDKit”で探してみてください)、SMILESの考案者 David Weiningerに関しては追悼文が専門誌にあり、web公開されています。それによると、同氏は大学の人ではなく、会社→大学院で博士→自治体で環境中の化学物質の毒性を調べる→毒性データベースのためにSMI…

受託合成サービス

ロボットを使わない委託合成サービス(人間が実験する)は、合成法の文献が分かっていれば1化合物100万円くらいからやってくれる会社があります。 https://www.ipros.jp/cg1/%E5%90%88%E6%88%90%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9/ また、ペプチドなどは大学のバイオの研究室も外に委託することが多いと聞きます。 https://www.peptide.co.jp/custom/peptide_synthesis 一昨年の地震の停電で、せっかく購入したペプチドが全部だめになったと嘆いていた先生がいました。誰も補償してくれなかった…

世界の研究所 IBM AlmadenとIBM robo-RXN

今週の世界の研究所は、アメリカのシリコンバレー(San Jose サンノゼ市)にあるIBM Almaden研究所です。(画像が大きく、ネット接続が重いので注意) https://www.research.ibm.com/labs/almaden/ ここはFortran(プログラミング言語)、SQL(relational detabase言語)等の発祥地で、人工知能Watsonがある場所です。また、STMを使って原子を並べて文字を書くデモンストレーションで一世を風靡しました。インターネットから使える量子計算機IBM-Qがあるのもここかもしれません。 実際に存在するのはAlmadenではないかもし…