LIGOの発明者 Weiss教授

LIGOの基本的なアイデアは50年前にさかのぼります。発明者のProf. Rainer Weissの経歴は独特です。 https://www.sciencemag.org/news/2016/08/meet-college-dropout-who-invented-gravitational-wave-detector ドイツからナチスに追われてアメリカに渡った家族の一員で、ニューヨークでラジオの修理をする少年時代、hi-fiのエレクトロニクスを勉強するためにMITの電気工学科に入ったが電力の勉強ばかりで失望、大学3年生時に船旅でピアノとダンスを教えてくれた音楽家に恋をしてくっついて移動(結果…

LIGOの仕組み(1)

LIGOは2つの直交する4kmの光路の長さの変化を10^-4Åの精度で測定できます。基本的には、光の干渉による強度変化としてモニターします。光としては、Nd系のレーザー1064nmの光を使います。10^-4Åは波長の10-^8倍なので、さすがに強度変化から光路長の変化を測定するのは無理です。どうやっているかというと、マイケルソン干渉計の光路中にファブリーペロー干渉計をいれて、光を光路内で300回往復させたものを干渉に使っています。したがって、光路は4kmではなく、その300倍の1200kmに相当します。これで3x10^-6の強度変化を測定することになりました。干渉により検出光が完全に弱めあった…

世界の研究所 LIGO (Laser Interferometer Gravitational-wave Observatory)

今週の世界の研究所は、重力波観測施設である LIGO (らイゴ、Laser Interferometer Gravitational-wave Observatory)です。技術的に面白い大ネタなので、2週間にわたって解説する予定です。 LIGOは、米国の北(ワシントン州)と南(ルイジアナ州)の2か所に設置された特殊なマイケルソン干渉計で、CaltechとMITによって運営されています。ブラックホール連星系の崩壊に伴う重力波の検出に成功した(2015)ため、2017年にCaltechのB.C.Barish(LIGOプロジェクト運営)、K.S. Thorne(一般相対論の理論家で何を探したらいい…

アーク溶接(3) 微量成分とマランゴニ効果

日本溶接協会はマンガも使って教育しています。阪大接合研が監修しているみたいですね。下記は面白かったです。 ステンレス鋼中の0.02%の硫黄が溶接結果に影響を与える話で、いろいろ動画が入っています。マランゴニ効果はいろいろなところで出てくるので皆さんも知っておいた方がいいと思います。 http://www-it.jwes.or.jp/we-com/bn/gatten/tig_penetration/index.jsp 溶接は熟練を要します。私は今回の実習ではうまくできず「実践には程遠いので、もっと修行するように」とのコメントをもらいました。今回の特別教育は溶接時の事故を防ぐためのもので、国の技能…

アーク溶接(2) フラックス(溶加材)、禁水、一酸化炭素

手棒溶接で使われる溶接棒(φ2~4mm長さ45㎝、溶接でみるみる短くなる)は、溶接される材料に近い組成の合金に「フラックス(flux 溶加材)」が厚く塗ってあるか管の中に入っています。フラックスとしては、イルメナイト(FeTiO3)系や酸化鉄など、用途によって下記いろいろあります。 https://engineer-education.com/production-engineering-24_electrode-arc-welding_flux/ http://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0050010090 フラックスについては既に必要な研…

アーク溶接(1) 電圧と電流値 溶接女子

アーク溶接は電流を流すことにより金属を融かして接合します。対象は鉄やアルミなど酸化されやすい金属がほとんどで、酸化物になってしまうと溶接できないので、酸化を防ぐ必要があります。方法は2つあって、固体(フラックスという)で覆う方法と、酸素を含まない気体を流す方法があります。建設現場で鉄骨等を溶接する場合は、フラックスを使うことが多いようです。この場合は、電源と45㎝の長さの溶接棒(使うとみるみる短くなる)だけで済み、手動なので簡単です。電源も、商用電源につなげないときのために、エンジン式の発電機と一体化したものが市販されています。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E…

世界の研究所 大阪大学接合科学研究所

今週の世界の研究所は、大阪大学接合科学研究所です。ここは国立の溶接工学の研究所の位置づけで、1972年に全国共同利用施設の大阪大学溶接工学研究所として設立されたものです。吹田キャンパスの産業科学研究所の隣にあります。 http://www.jwri.osaka-u.ac.jp/index.jsp 溶接については20年余で研究が十分進んだらしく、1996年に「接合科学研究所」に名称が変更されました。 現在は、溶接以外に、プラズマ溶射(例:フライパンのコーティング)、金属と無機材料の接合(真空装置の窓などに使われる)、導電性インク、金属・セラミックスの3Dプリンタなどの研究もおこなわれています。そ…

対角線論法、連続体仮説

Georg Cantor(1845-1918)は可算無限(自然数に対応)と不可算無限(実数に対応)の区別を発見しました。その時に使った「対角線論法」は面白いです。その間の「濃度」を持つ無限はない、という問題はCantorの「連続体仮説」と呼ばれますが、「証明も反証もできない問題である」ことがGoedelとCohen(1962)により証明されています。wikipediaをたどっていくだけでもいろいろ勉強できますね。学部1年生のころ、集合論の本を輪講して苦労した覚えがあり、Zermeloの公理系など懐かしいです。改めて思い出すとその本が何をやりたかったのかが(なんとなく)わかりますが、そのころは全…

Boy’s surface という題の純文学

Boy’s surface を調べていたら、その題名の小説があることを知ってびっくりしました。作者は、札幌出身の芥川賞作家で、物理学研究者からの転身のようです。読んでみましたが、「数学(?)を使った架空の装置(?)の擬人化による恋愛小説(?)」で、好き嫌いがあると思います。私は楽しみました。小説の進化の方向はいろいろありますね。 https://www.amazon.co.jp/dp/4150310203 https://en.wikipedia.org/wiki/Toh_EnJoe asymptote 「ア」シムトート 漸近線 allusion ア「りゅー」ジョン ほのめかし、入…

Boy’s Surface

昨日のMathematisch Forschunginstitute Oberwolfach には、メルセデスベンツが寄付した「Boy(’s) Surface ボーイ曲面」のモニュメントがあるそうです。ボーイ曲面は、実射影平面RP2(原点を通る直線の集合)を三次元空間に埋め込んだものとのことです。定義はwikipedia参照。下記動画でわかるでしょうか?板書の動画で三回対称性はxyzの3つから来ていることがわかりますね。 https://www.mfo.de/about-the-institute/history/boy-surface/the-boy-surface-at-obe…