コンテナ船とグローバリゼーション

コンテナ船に関して、「コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった」レビンソン、村井訳 日経BP が面白かったです。2019の改訂版はあとがきで野村総研による最新情報解説も載っています。1960年代に1人のトラック運送業者がコンテナを思いついて海運業に乗り出し、もう1社と有効性を実証して20年かけて広まりました。ばらばらの貨物に比べて積み下ろしの効率が格段に向上して輸送コストが桁で下がりました。衣類や中間製品、部品など、単価が安いものを運んでも元がとれるようになったため、工場が労賃の安いところに移転しました。現在のGlobalizationの立役者というところでしょう。 経済学者、官僚、政…

コンテナ船の大きさ

スエズ運河で座礁したエヴァーギヴン号は、全長400m,幅59m、喫水深さ33mで、長さは札幌駅くらいです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%82%AE%E3%83%B4%E3%83%B3 積載重量は20万トンで、20ft((長さ)6058×(幅)2438×(高さ)2591mm)のコンテナを20124個積めるそうです。 https://www.mol-logistics-group.com/support/handbook/seacontainer/index.html 鉄道のコンテナは1…

バウリンガル

若い人は知らないかもしれませんが、2002年9月に、タカラ(現・タカラトミー)からバウリンガル(Bow-Lingual)というおもちゃが発売されました。犬の首輪に装着したワイヤレスマイクの信号を本体が受けて、解釈します。「フラストレーション」「威嚇」「自己表現」「楽しい」「悲しい」「欲求」の6種類の感情が表示されたそうです。当時、これには驚きました。14800円が半年で30万個(44億円、そこでほぼ終わり)売れたヒット商品となり、イグノーベル賞「平和賞」を受賞しています。2009年に新型を出しましたが、この売り上げは不明です。そのあとiphoneアプリ版が出ています。 https://alla…

偶然を扱う数学的方法 確率微分方程式

偶然をきちんと扱うには、確率微分方程式(stochastic differential equations)を使う必要があります。これは、ブラウン運動の理論から発展したもので、確率的に値が変わる項が含まれます。保険、金融商品(デリバティブなど)の価格算定に応用可能です。電気的ノイズを扱うのにも使えます。統計力学の先の方に出てきます。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%BC%E9%81%8E%E7%A8%8B stochastic スト「キャ」スティック 確率論的な 「偶然」の訳はいろ…

日本刀の焼刃土

日本刀の模様は「焼刃土」を塗る「土置き」によって人為的に作っていることを今回初めて知りました。 https://www.youtube.com/watch?v=NZ6gwcz_Flk 粘土、砥石の粉、墨の粉を混ぜたものを厚さを変えて塗る、調合や成分に秘伝がある、 乾燥後、加熱→急冷で焼き入れ。 塗が薄い部分には焼が入り、厚い部分には焼が入らない(成分によっては逆もありうる)。 詳しい解説は下記3つ目のように論文になっています。 焼き入れで水に入れたとき、水蒸気が発生すると冷却速度が遅くなる。薄く塗ったところは少し断熱して水蒸気発生を抑えつつ、粘土の隙間の毛管現象で水が少しずつ侵入して冷却速度が…

たたら製鉄

日本刀の材料である玉鋼(たまはがね)を作るのは「たたら」という日本で開発された低温製鉄プロセスです。 アニメ「もののけ姫」にも出てきます(下記サイトはbrowserによっては見にくいですが、スクロールを繰り返すと見やすくなるかもしれません)。 https://tetsunomichi.gr.jp/tales-about-tatara/princess-mononoke/ たたらの動画もいくつかyoutubeに上がっています。 https://www.youtube.com/watch?v=yvJGmLuhwzs 三昼夜かかるたいへんな重労働です。刀の需要に合わせて毎年冬に数回だけ行っているよう…

日本刀の作り方

日本刀の作り方については、下記が分かりやすいです。 https://www.youtube.com/watch?v=CgaUba0aSWQ ・玉鋼(たまはがね)は「たたら」で作ります(明日) ・玉鋼を叩いて割って、炭素量を目と手触りで見わけ、芯鉄(しんがね)と皮鉄(かわがね)2つに分類 ・温度を目で見て制御する ・何度も折り返す 皮鉄15回(2^15=32768層)、芯鉄8回(2^8=256層)の層状組織を作る ・「土置き」で模様を作る など、興味深い技が多いです。 この動画が43万回再生なのに対して、鉄を延ばして磨いただけの https://www.youtube.com/watch?v=x…

世界の研究所 島根大学次世代たたら協創センター

今週の世界の研究所は、ローカルですが、島根大学次世代たたら協創センターを取り上げます。 所長をOxford大学から招き(兼任)、近くに研究所(冶金研究所)がある日立金属(株)の研究者を教授(兼任)としている新しいタイプの研究所です。最新鋭の電子顕微鏡を数台購入しています(収差補正はついていませんが)。大学の先生方の力を生かすうまい仕掛けだと思います。 https://www.youtube.com/watch?v=41gqMD8wl_M 動画8分51秒から、Oxford大学では教授一人1.5億円/年、最低でも一人3000万円/年を企業から集めているとの発言があり、面白かったです。日本では企業か…

重力波研究の先駆者

重力波検出の試みを行った先駆者として、Maryland大学の故Joseph Weber教授がいます。貧乏なため海軍の技術者として電子工学を勉強し、退役後に教授になりました。1952年にアインシュタインのA係数とB係数が光増幅と関係あるのではないか(レーザーの原理)?と提案して有名になりました。サバティカルで一般相対論を勉強して、数mのアルミニウムの円筒をピエゾでつないだ”Weber bar” を作って重力波を検出しようと試みました。検出したという報告を1969年以降にPhys. Rev. Lett.等に発表しましたが、複数個所で観測を行っても同時検出が得られず、また感度…

無振動ヘリウム冷凍機

昨日紹介した、KAGRAの無振動冷却装置について調べました。 https://gwdoc.icrr.u-tokyo.ac.jp/DocDB/0056/P1605622/001/DanD.pdf (博士論文) サファイヤの鏡に水ガラスでサファイヤの「耳」をつけ、インジウムで接着したサファイヤのワイヤーで吊っているようです。水ガラスはケイ酸ナトリウム水溶液。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B9 冷却はヘリウム冷凍機です。「GM(Gifford MacMahon) 型」「スターリング(Stirling)…