暴走、ガリウム

昨日の集中講義では、ノートパソコンが熱暴走で落ちてしまい、他のコンピュータを使うまで少し中断になってしまいました。暑い中でzoom, Chrome, パワーポイントその他たくさん使っていたためストライキを起こしたみたいです。 さて、熱暴走は下記によるとリーク電流が増えることによるそうです。これは熱的にバンドギャップを超えて励起されるキャリアが電流を運ぶためだと考えられます。バンドギャップが広い半導体だと使用可能な最高温度が高くなり、放熱は温度差に比例するため、放熱器が小さくて済みます。いまは電気自動車で小型で大電流の制御が必要なので、バンドギャップが大きいGaN, Ga2O3などが注目されてい…

世界の研究所 統計数理研究所

今週の「世界の研究所」は、文部科学省傘下の「統計数理研究所」です。これは東京の立川にあります。 専任の研究員が約50人(教授、准教授、助教、特任助教)、客員が同じくらいで構成されています。 コロナ等感染の解析、最近のinformatics、機械学習の研究も盛んにおこなわれています。創立75年で、長らく地道な活動を続けてきましたが、最近のブームで脚光を浴びています。 1970年代に情報量基準Akaike Informatics Criterion (モデルに含まれる変数を何個にしたらよいかを決める関数)を提唱した故 赤池弘次教授が有名です。今週は今日から機械学習の集中講義をしますので、関連した話…

shot gun sequencing of DNA

ヒトゲノムの解読は2003年に予定を前倒しして一応の完成を見ました。ゲノムの99%を99.99%の精度で解読したとのことです。個人差があるので、完全に解読することにはあまり意味がありません(個人の疾病治療目的は除く)。予定より前倒しで完了した理由はJ. Craig Venter率いる(当時)Celera Genomicsが shot gun sequence法の効果を実証した点が大きいです。この手法は、無秩序に切断したDNA断片を解析し、その情報を計算機でつなぎ合わせるもので、bioinformaticsの整備と一体となっています。 https://en.wikipedia.org/wiki/…

世界の研究所 J. Craig Venter Institute

今週の「世界の研究所」は、J. Craig Venter Institute です。所長の名前を付けた研究所です。 正規の大学ではないと思いますが、25人の所員はfacultyとして、Professor, Assistant Professorなどの肩書があります。その他を含めて構成員は200人だそうです。下記に歴史が書いてあります。 https://www.jcvi.org/about/overview#history 日本語のwikipediaが要領よくまとまっています。英語のほうが詳しいです。海中の微生物のゲノムを探索したことは初めて知りました。土の中のゲノム探索は日本の大村博士(イベル…

人工細胞のバージョンアップ

NISTのwebを見ていたら面白い情報がたくさんありました。生物用の顕微鏡システムを作っている部門があります。 https://www.nist.gov/news-events/news/2021/03/scientists-create-simple-synthetic-cell-grows-and-divides-normally は、NIST、JCVI(←来週月曜日)、MITの共同研究で、人工的に作った細胞を正常に分裂させるために必要な7個の遺伝子を同定したというものです。最少の遺伝子を持つ生命体を作ろうとする試みですね。怪しいものができなければいいのですが。このJCVI-syn3Aは遺…

原子に立脚した圧力標準

単位系の改訂を受けて、いろいろな派生単位を原子や量子的な定数に直接結びつける仕事が始まっています。 例えば、真空度の単位は古くは水銀柱の高さmmHgでしたが、今は力÷面積であるPaです。 これを純粋気体(アルゴンを考えているようです)の屈折率から単位体積当たりの原子数を測定し、温度を 測って圧力の標準器にしようという話があります。これはNISTが中心になっています。 https://www.nist.gov/news-events/news/2019/06/no-longer-under-pressure-nist-dismantles-giant-mercury-manometer これは原…

国際単位系の改訂(2019年5月20日)

2019年5月20日から国際単位系が改訂されたことについては、ここ数年、学部のいくつかの講義で紹介しています。今年は2年生のオムニバス講義の題材にしました。当然NISTも深くかかわっています。今回の改訂で、キログラム原器が廃止され、すべてが量子力学や素粒子、原子由来の値になりました。講義で紹介している動画が下記です。 https://www.youtube.com/watch?v=ZMByI4s-D-Y 下記のクイズで2年生の不正解が1割くらいいたのには驚きました。答を言っているのにも関わらず、です。 問3 新しい単位系では、桁数が大きい定数(例:アボガドロ数6.02214076×10^23)…

世界の研究所 NIST (National Institute of Standards and Technology)

今週の「世界の研究所」は、米国の度量衡(どりょうこう)標準局であるNIST (National Institute of Standards and Technology;昔のNBS (National Bureau of Standards))です。 https://www.nist.gov/ 私は日本で毎年発行されるハンドブックの一部を担当しており、ここしばらく、夜中にこの一年に出た文献の調査をしていました。NISTは各種データベースを文献付きで公開しています。 https://www.nist.gov/pml/productsservices 私の担当部分でもNISTを参考にはしますが、…

楕円関数とイジングモデル

楕円関数は、二つの周期をもつため、二次元の結晶の波動関数を表すのに使えそうではないでしょうか。複雑な物質については計算機で数値解を求めるのでまず使われませんが、単純化した二次元スピン系(イジングモデル)の解析に応用され、相転移の挙動の厳密解が得られています(1944年)。これを行ったL.Onsargerは別件(非平衡熱力学)でノーベル賞をもらっていますが、この業績もプラスになっているでしょう、と学生の時に統計力学の授業で習いました。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%83%B3%E3%82%B0%E6%A8%A1%E5%9E…

楕円関数

私がなぜ四元数について調べているかというと、結晶の波動関数の記述に新しい方法ができないかと思っているためです。実数の周期関数は三角関数の和(フーリエ級数)で書けるのは習っていると思います。複素数の場合は実軸と虚軸の2つの自由度があるので、2つの周期を作れそうですが、一つの関数で2つの周期をもつ関数が楕円関数です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%95%E5%86%86%E5%87%BD%E6%95%B0 楕円関数は、複素関数の教科書の終りの方に書いてあることが多いです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E…