制御工学と機械学習

ドローンや歩行するロボットなど、不安定な装置を安定に制御するにはどうすればよいか、というノウハウは長く研究されており、仕組みとしてはある程度完成していると理解しています。化学プラントの制御なども重要な応用例ですね。微分方程式や差分方程式を使う「制御理論」という体系があります。youtubeに手短な解説がありました。 https://www.youtube.com/watch?v=4pNQcqr-DT4 極やゼロ点、ロンスキアン、ラプラス変換など、応用数学で習う話が実際に使われるので楽しいですが、さらに 状態が変化してから一定時間の反応遅れを扱う「入力むだ時間」など、独特な数学が出てきて面白いで…

ロボット制御の共通プラットフォームと建機を操縦するロボット

ドローンはひっくり返って下向きになるとすぐに墜落してしまいます。したがって、高さや速度、姿勢を常に細かく制御する「倒立振子」のような測定・演算・フィードバックが必要です。ハードウェアが違うと慣性やトルクは異なるにしても、制御には共通点があるはずなので、共通プラットフォームでパラメータをチューニングできるようにするのは大きな省力化の意義があります。さて、関節を持つ人型ロボットも歩行や指の動作などに共通点があるはずですが、共通プラットフォームはないでしょうか? opensource robot で検索すると下記がありました。わかりやすい解説記事がないようですが、時間があるときに調査します。 htt…

世界の研究所 ドローン制御のオープンソース ArduPilot

今週の世界の研究所は、ソフトウェア系が2週連続になってしまいますが、ドローン制御ソフトのオープンソースである ArduPilot をとりあげます。 https://ardupilot.org/ これは日本在住のカナダ人がリーダーで、500人程度が参加しているようです。 https://drone-journal.impress.co.jp/docs/special/1182896.html 開発者のための塾もやっているようです。言語はc++、私も時間があれば受けてみたいです…が、だいぶ先になるでしょう。いろいろなものが制御できるみたいなので、非常に小さい潜水艦を作って「ミクロの決死圏」のような…

水銀の応用、代替品

水銀は融点が-39℃、常温で液体の金属です。古くはトリチェリの真空を作るために使われ、その後比重が重い液体としていろいろの目的に使われました。最初の走査トンネル顕微鏡(STM)装置は資金潤沢なIBMの研究所(スイス)で除震のため水銀の上に浮かべられ、その結果原子像が得られてノーベル賞につながりました。同じことを長年やろうとした大学の先生(米国)は資金が足りずそこまでできなくて先を越されてしまったという話があります。できるとわかったあとはバネで吊るなど様々な安価な除震法が開発されましたが、最初にやるのはたいへんです。しかし水銀は蒸気圧が高いので、現在は開放系で使うことはほぼ禁止されています(空間…

水銀に関する水俣条約

話は飛びますが、2017年に「水銀に関する水俣条約」が発効し、加盟国は水銀使用量の削減や輸出入の規制が義務付けられています。2019年時点で109か国が締結しているそうです。これにより、研究で使用する水銀についても将来は廃棄に高額の費用を要するようになるから今のうちに処分するように、というような指示が来たりします。 ・鉱山からの水銀産出の禁止 ・小規模の金採掘における水銀使用の禁止(水銀で砂や石から金を溶かしだし、水銀を蒸発させることによって金を得る古い方法の禁止) ・蛍光灯などの使用を最小限にする規制 ・歯科用のアマルガムの使用は縮小するように、保険制度や教育をするという項目もあります。日本…

グリホサートの訴訟と論争

除草剤グリホサート(N-ホスホン酸メチルグリシン (HO)2PO-CH2-NH-CH2COOH)は、最近週刊誌などで取り上げられ、農薬工業会が反論を発表したりして、ちょっとした論争になっています。その経緯について下記が良くまとまっていました。 https://wedge.ismedia.jp/articles/-/26627?page=1 話はアメリカの訴訟が発端のようですね。 https://agrifact.jp/roundup-not-prohibited-flow-what-truth-about-glyphosate8/ グリホサート耐性作物は、土壌にいる2種類の菌から別々の機構をも…

海に鉄塩を撒くと本当に植物プランクトンが増えた

マーチンの鉄仮説の実験結果は下記に良くまとまっています。 https://ippjapan.org/archives/1265 まとめると下記です。 ・鉄散布の有効性は認められ、1990年代当時のCO2排出量の25%を吸収するポテンシャルがあることが分かった ・2週間で植物プランクトン数に顕著な効果があるという即効性 ・CO2吸収効果のためには、最終的に炭素が沈降して出てこなくなる必要があるが、動物プランクトンの数などに左右されるので不安定 ・植物プランクトンは増えすぎると「赤潮」「アオコ」なので、制御できない場合は危険。特に漁業への影響。 ・関連実験は、海洋への廃棄物投棄に関するロンドン条約…

鉄を含むインクとお歯黒は同じもの

鉄を含むインクは、ポリフェノールと鉄の不溶性の錯体からできています。 植物ポリフェノールとしては、お茶のタンニンがありますが、植物が昆虫に寄生されてできる「虫こぶ」である「五倍子(ごばいし、ふし)」や「没食子(もっしょくし)」に多く含まれています(植物の防衛機能)。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%A1%E9%A3%9F%E5%AD%90%E9%85%B8 https://www.youtube.com/watch?v=WP1Hu2oQ_0I によると、五倍子は画材屋で買えるそうです。五倍子を煮出した液に鉄さび+酸を加えるというレシピはインクと共通です…

X線顕微鏡に使われる他の2つの技術:zone plate と ptycography

レンズが作れない場合、キャピラリーを使ってガイドするのは微小角で全反射が起こるX線に独特な方法です。これは他にも応用が利くかもしれません(具体例は秘密)。今日は他の方法を見てみましょう。 ゾーンプレートを使う例があります。これは実際に使われています。下記はビーム径をnmまで絞ることができ、顕微鏡としての分解能は8nmです。 https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abc4904 ゾーンプレートは白黒の同心円板ですが、見たことはないでしょうか?賢い仕組みです。X線は波長が短いので微細加工が必要ですが、現在では可能です。 https://otonano…

X線を集光するキャピラリー集合体の発明

シンクロトロン放射光の歴史は下記にまとまっています。電子を加速して衝突させる実験のためのシンクロトロン(円軌道で電子が周回)で消費エネルギーが大きすぎる原因を1944-46年に調べていたGE(General Electric社)の技術者たちが、理論家Schwinger(1965年に朝永、ファインマンとともにノーベル賞受賞)が予言した相対論的な速度を持つ荷電粒子が曲がるときの発光との関連に気づき、シンクロトロン放射光を発見しました。 https://xdb.lbl.gov/Section2/Sec_2-2.html Archimedes Palimpsestの解読に使われたスタンフォード大学のS…