世界の研究所 Institute de Pierre-Gilles de Gennes

今週の世界の研究所は、フランスのInstitute de Pierre-Gilles de Gennesをとりあげます。 https://www.institut-pgg.com/ ここはマイクロ流体デバイスを主に扱っているようです。分析や合成のためのデバイスとしていろいろ使われていますね。 P.G. de Gennes(1932-2007)は 液晶の理論で1991年のノーベル物理学賞を受賞しています。液晶の他にも、汚い超伝導体や高分子など、乱れと秩序が共存する系の理論を徹底的に構築しました。来日時に講演を聞いたことがありますが、接着がどうして起こるかという話でした。その時に提示された未解決問…

碧巌録 不朽の実体?

今週の碧巌録は、第82則(Case # 82)大龍堅固法身 です。本文解説によると、これは簡単そうに見えて難しいそうです。 問答の原文は 僧問大龍、色身敗壊、如何是堅固法身? 龍云、山花開似錦、澗水湛如藍。 英語は A monk asked Ta Lung, “The physical body rots away: what is the hard and fast body of reality?” Lung said, “The mountain flowers bloom like brocade, the valley streams are br…

イースター島の文明崩壊

ポリネシアの東端はイースター島(Easter Island, Rapa Nui=ポリネシア語)です。これはチリ領で、最も近い隣の島が1900㎞離れている絶海の孤島と言っていいでしょう。ちなみに、札幌と那覇の距離が2252kmです。チリ本土までの距離は3540kmだそうです。面積は164km2なので、利尻島183km2とほぼ同じ、東京都でいうと大田区+世田谷区+目黒区+品川区+渋谷区=171km2くらいです。現在の人口は6600人とかなり少ないです。モアイ像で有名ですが、18世紀から作られなくなりました。昨日紹介した「文明崩壊」によると、部族間の見栄張り競争でモアイをつくるために木を伐りすぎて、…

ポリネシア人の移動・拡散

ポリネシア人は漢民族の移動に押し出されてBC2500ころに台湾を出発し、BC950年ころにサモア、トンガに到達。さらに東に進み始めるのは紀元1世紀ころ、さらにイースター島に到達したのはAD1200年ころだそうです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E5%B3%B6 移動が停滞していた間なにがおこなわれていたのか、またモアイ像が作られなくなったのはなぜなのか、等の疑問に答えている本が、Jared Diamond (2005) “Collapse: How Socie…

碧巌録 絶妙なタイミング

今週の「碧巌録」は本文が最も短いCase #19 倶胝指頭禅 です。倶胝和尚(Master Chu Ti)という人がいて、どのような問を立てられても指を一本立てて答にしたという逸話です。また、臨終のときに集まった弟子たちに「この最強の技を会得したが一生かけてもすべてを使いつくせなかった。なぜだか知りたいか?」と告げ、指を一本立てて息を引き取ったとのこと。 この話は想像力をかき立てるようで、webにいろいろな解説が落ちています。また、「碧巌録」本文の解説では、物事には急所となるタイミングがあり、そこでは小さい労力ですべてを変えることができる、とあります(と、私が解釈した)。指を一本立てるタイミン…

カースト制とIT産業の関係

インドと言えば地理でカースト制を習います。重大な事象なので、外部から軽々に論評することはできませんが、「インドでIT産業が盛んなのはカーストで決められた職業ではないので、だれでも従事できるからだ」・・・(※)という話を聞いたことがあります。本当かどうか調べてみました。下記はBloombergの記事で、これは米国の大手通信社です。読みながら単語を拾ってみましょう。 https://www.bloomberg.com/news/features/2021-03-11/how-big-tech-is-importing-india-s-caste-legacy-to-silicon-valley c…

希ガス化合物の発見者

たまには化学を扱いましょう。Xeは、RamseyとMorrisが大気を液化・分離して発見しました(1898年)。大気中には0.05ppmしか含まれていないので、高価です。麻酔作用があるそうです。18族元素は長らく化合物は作らないと思われていましたが、Neil BartlettがPtF6がO2を酸化できることを発見し、さらにO2とXeがほぼ同じ第一イオン化エネルギーを持つこと(1165と1170kJ/mol)に気づいて、XeとPtF6(赤い気体のようです)を混合することによりXeの化合物(オレンジ色をした結晶)を初めて合成しました(1962年)。これは教科書:シュライバー無機化学にも載っている話…

企業会計 番外編1 マグネシウム高騰 カンバン方式

金曜日は企業会計を解説していますが、今週はいろいろあって準備が間に合わないので、経済ニュースから。土日の遠隔集中講義(あす3週目,全4回)で時間と体力が不足ぎみです。 マグネシウムの価格が上がっているそうです。一瞬半年前の3.5倍になって、いま2.5倍くらいですね。 https://www.investing.com/commodities/magnesium-99.9-min-china-futures ジュラルミン他、各種合金に使われているので、自動車産業がまず困るだろうと言われています。 https://www.scmp.com/economy/china-economy/article…

企業会計 その10 キャッシュフロー計算書(2)

今週の企業会計は、CF (Cash Flow Statement)の続きです。大津著「英語の決算書を読むスキル」に例が出ているBlockbuster社(米国、1985年に起業し2010年に倒産)のCFを見ましょう。 https://www.barchart.com/stocks/quotes/BLIAQ/cash-flow/annual Blockbuster社は、ビデオレンタルショップの会社(日本店舗はGeoに売却)で、ネットのオンデマンドが出る前は一世を風靡した業態でした。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%83%…

世界の研究所 Moving Windmill Innovation Center (Malawi, 計画段階) (世界の飛び地(2))

今週の世界の研究所は、まだ準備段階の研究教育施設、アフリカ マラウイ共和国(Republic of Malawi)の Moving Windmill Innovation Center を取り上げます。 https://movingwindmills.org/ マラウイの少年が廃物から風力発電機を作った話(2001年ころ)が有名で、本や映画(2019)になりました。youtubeコメントによると英語の教科書にも載っていたようです。主人公の少年はメディアの支援で奨学金を得てアメリカの大学を卒業しました。 https://www.youtube.com/watch?v=uQKONj4L89c ht…