世界の研究所 Moving Windmill Innovation Center (Malawi, 計画段階) (世界の飛び地(2))

今週の世界の研究所は、まだ準備段階の研究教育施設、アフリカ マラウイ共和国(Republic of Malawi)の Moving Windmill Innovation Center を取り上げます。 https://movingwindmills.org/ マラウイの少年が廃物から風力発電機を作った話(2001年ころ)が有名で、本や映画(2019)になりました。youtubeコメントによると英語の教科書にも載っていたようです。主人公の少年はメディアの支援で奨学金を得てアメリカの大学を卒業しました。 https://www.youtube.com/watch?v=uQKONj4L89c ht…

企業会計 その8 損益計算書(2)

今週の企業会計は、損益計算書(profit and loss statement; P/L)の続きです。 企業の収益力を見る重要な指標です。利益がマイナスになるとたいへんです。貯金を食いつぶしたら確実に倒産します。 各人に帰属する売上高と経費を細分化して、社内の組織や個人が勤務時間当たりいくら稼いでいるかに落とし込むのが「アメーバ経営」をはじめとする「管理会計」だと理解しています。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%90%E7%B5%8C%E5%96%B6 これを推し進めると、各人が意識するので利益は…

ノーベル化学賞2021 不斉有機分子触媒

今年のノーベル化学賞は、みんないつか受賞すると思っていたプロリン誘導体の不斉触媒でした。有機分子触媒(中心金属がない均一系触媒)の端緒となったもので、有機化学の授業でちょっと習っているのではないでしょうか? https://en.wikipedia.org/wiki/Proline_organocatalysis 20年くらい前から発展した分野ですが、受賞すると思われていた三人のうち一人が6年前に亡くなっていたとのこと。ケムステ ( https://www.chem-station.com ) 等で専門家により詳しく紹介されるでしょうから、私が下手な解説をしなくてもいいと思います。他の分野にな…

ノーベル物理学賞2021 ガラスの粘度の温度変化の説明にも使える理論

今年のノーベル物理学賞のうち、Parisi教授の業績は、わかりやすく言うと「液体と同じように乱れた構造のガラスがなぜ固まっているかを理解し、ある温度でどのくらい硬いかを理論的に計算する方法を開発した」ではないかと思います。ガラスの硬さ(この場合は粘度)と温度の関係には一般的な法則があることが実験でわかっていました。ガラス細工をやったことがある人はガラス軟化温度付近での硬さの変化は実感しているのではないでしょうか。ガラスの種類で温度は変わりますが、一般性がありそうに思いませんか? 下記はしばらく前の「世界の研究所」で紹介したトリエステの理論物理学研究所での講演です。 https://www.yo…

ノーベル医学生理学賞2021 センサータンパク質

今週は世界の飛び地を見て回ろうと思ったのですが、ノーベル賞の週でもあるので、飛び地は来週に回しますか(まだ迷っています)。 とりあえず、今日は医学生理学賞のタンパク質を見ることにしましょう。 欧州のデータベースはアクセス集中のためか、遅くなっています。日本のタンパク質データベースを見ましょう。 温度を感じるイオンチャンネルが下記で、いろいろな温度で構造解析がなされています。クライオ顕微鏡(ヘリウム温度まで試料を冷やして高分解能で観察)のデータが今年出ていますね。収差補正測定が可能になったということでしょうか?私が学生のときはまだ分解能が悪くて大まかな構造しかわからなかったのですが、原子位置がタ…

世界の研究所 カリーニングラード大学 Kant Academie (世界の飛び地(1))

今週は、秋の遠足ということで、少し科学技術を離れて世界の「飛び地」を見て回ろうと思います。世界の研究所は カリーニングラード大学(Imanuel Kant Baltic Federal University)のカント研究センターにします。哲学者カントが教授をしていたので、ゆかりのKant Academieがあるようなのですが、英語ページがありません。研究者として10人くらいの名前が書いてあります。google翻訳によると、下記 Kant Academieはロシアと西欧での哲学の比較、国境を越えた哲学的受容(?)の研究をしているようです。旧ソ連の時はカント哲学者はどうしていたのか、考えるとたいへ…

企業会計 その7 損益計算書(1)

今週の企業会計は、3つの財務諸表(貸借対照表(B/S)、 損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/F))のうち、P/Lについて。 https://career-cc.net/profit-and-loss-statement/ 損益計算書(profit and loss statement; P/L)とは、企業のある一定期間(例:4/1~3/31)の収益と費用の損益計算をまとめた書類です。 例を何にするか悩んだのですが、最近ニュースになっているEvergrandeにしましょう。 https://www.reuters.com/companies/3333.HK/financials …

フランクリン北極探検隊の鉛中毒

今日は悲劇のフランクリン北極探検隊(1845)を取り上げます。 これは、北極探検の最初期に行われた、カナダの北側を通って大西洋と太平洋を結ぶ航路(北西航路)を見つけるための遠征です。イギリス海軍肝いりで行われましたが、129人(133人?)の隊員が全滅しました。北西航路を確立したのは、南極点一番乗りのアムンセン(1906)です。優秀な人は複数の業績を上げますね。私のみるところ、要因は才能だけでなく、性格や仕事のやり方が対象(と時代)に合っている場合が多いと思います。これは「運」を構成する一つの要素だと思います。合う対象を探すか、自分を変えるか、気にせず自分を貫くか、人それぞれですね。 http…

フラム号

フラム(Fram 前進)号は、ナンセンが考案し、ノルウェー一番の船大工(Colin Archer)が設計・建造した木製の極地探検用帆船(全長39m幅11m)で、通常より丸い船底が特徴です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%A0%E5%8F%B7 ナンセンは極地探検で船が氷につぶされる危険を認識し、氷に押されたときに浮き上がるように、丸い底を持つ硬い木でできた船を国の援助で作りました。フラム号は、14人が3年間氷の流れに乗って北極海の海流を研究しさらに北極点を目指したFram Expedition(1893-1896)…

初代難民高等弁務官

ナンセン(Fritjof Nansen 1861-1930)は時々現れるスーパーマンの一人で、海洋生物学者、探検家、政治家として活躍しました。技術的にはフラム号の発明(明日)が光ります。深海水を採集するナンセン瓶も発明しています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Fridtjof_Nansen https://en.wikipedia.org/wiki/Nansen_bottle 特に国連(国際連盟)の初代難民高等弁務官を務め、ノーベル平和賞受賞、「難民の父」と呼ばれています。私が驚いたのは絵が上手なことです。若い時画家も志したが、趣味にとどめることにしたとのこと。…