碧巌録 不朽の実体?

今週の碧巌録は、第82則(Case # 82)大龍堅固法身 です。本文解説によると、これは簡単そうに見えて難しいそうです。 問答の原文は 僧問大龍、色身敗壊、如何是堅固法身? 龍云、山花開似錦、澗水湛如藍。 英語は A monk asked Ta Lung, “The physical body rots away: what is the hard and fast body of reality?” Lung said, “The mountain flowers bloom like brocade, the valley streams are br…

イースター島の文明崩壊

ポリネシアの東端はイースター島(Easter Island, Rapa Nui=ポリネシア語)です。これはチリ領で、最も近い隣の島が1900㎞離れている絶海の孤島と言っていいでしょう。ちなみに、札幌と那覇の距離が2252kmです。チリ本土までの距離は3540kmだそうです。面積は164km2なので、利尻島183km2とほぼ同じ、東京都でいうと大田区+世田谷区+目黒区+品川区+渋谷区=171km2くらいです。現在の人口は6600人とかなり少ないです。モアイ像で有名ですが、18世紀から作られなくなりました。昨日紹介した「文明崩壊」によると、部族間の見栄張り競争でモアイをつくるために木を伐りすぎて、…

ポリネシア人の移動・拡散

ポリネシア人は漢民族の移動に押し出されてBC2500ころに台湾を出発し、BC950年ころにサモア、トンガに到達。さらに東に進み始めるのは紀元1世紀ころ、さらにイースター島に到達したのはAD1200年ころだそうです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E5%B3%B6 移動が停滞していた間なにがおこなわれていたのか、またモアイ像が作られなくなったのはなぜなのか、等の疑問に答えている本が、Jared Diamond (2005) “Collapse: How Socie…

トンガ、ポリネシアとZealandia大陸

噴火が起こったトンガは地理的にはポリネシアに属します。ハワイ(Hawaii)、ニュージーランド(New Zealand)、イースター島(Easter Island, Rapa Nui)を頂点とする三角形の内側だそうです。どうやって人類が南太平洋の島々に広がっていったのかは興味深く、考古学や言語学、遺伝子調査等を用いて研究が進んでいます。現在の説は、BC2500年頃台湾から南下していったとのこと。BC1100年ころにフィジーに到達し、その後BC950年ころにサモア、トンガに到達。さらに東に進み始めるのは紀元1世紀ころだそうです。 https://older.minpaku.ac.jp/museu…

世界の研究所 University of South Pacific

トンガで(現代的)観測史上最大かもしれない大噴火がありましたね。衛星写真からは北海道くらいの面積の噴煙が上がっていましたが、被害が大きくないことを祈ります。今週の世界の研究所は、オセアニアの各国にキャンパスがちらばっている University of South Pacific をとりあげます。本部はFijiにあります。 https://www.usp.ac.fj/ https://en.wikipedia.org/wiki/University_of_the_South_Pacific 当然かもしれませんが、オセアニア各国の指導者はここの卒業生も多いです。Tongaには公務員養成の別の機関(…

碧巌録 絶妙なタイミング

今週の「碧巌録」は本文が最も短いCase #19 倶胝指頭禅 です。倶胝和尚(Master Chu Ti)という人がいて、どのような問を立てられても指を一本立てて答にしたという逸話です。また、臨終のときに集まった弟子たちに「この最強の技を会得したが一生かけてもすべてを使いつくせなかった。なぜだか知りたいか?」と告げ、指を一本立てて息を引き取ったとのこと。 この話は想像力をかき立てるようで、webにいろいろな解説が落ちています。また、「碧巌録」本文の解説では、物事には急所となるタイミングがあり、そこでは小さい労力ですべてを変えることができる、とあります(と、私が解釈した)。指を一本立てるタイミン…

電波天文学で何がわかるか?

たいへんな装置で宇宙からの微弱な電波を測定して何が面白いのか、という疑問があると思います。私の理解では: ・マイクロ波領域にある分子の回転スペクトル放射から、宇宙空間の分子が同定できます。例えば、ボリソフ彗星でCO分子がたくさんあることが分かった。 https://public.nrao.edu/gallery/comet-2i-borisov-has-an-unusual-composition/ レモン彗星のHCN分子の分布を測った https://public.nrao.edu/gallery/rotating-3d-map-of-comet-lemmon-releasing-hcn-m…

超伝導ギャップを使った検出器 kinetic inductance detector

遠くの天体からの微弱な電波や光を検出するためにいろいろな方法が開発されていますが、雑音エネルギーは回路の電気抵抗Rと温度Tに比例するので、抵抗が低いほうがいいのは間違いありません。したがって微弱信号用には超伝導が多用されますが、薄膜超伝導体に電磁波が当たったらどうなるか、という発想から発明された最近の注目株が kinetic inductance detector です。下記に写真つきの簡単な解説がありました。kineticというのは何かが動くわけではなくてクーパー対が壊れて起こる一連の過程を指すようです。 https://web.physics.ucsb.edu/~bmazin/mkids.…

ヘテロダイン方式と超伝導トンネルミキサー

電波天文学では様々な周波数の電波を扱いますが、多いのは分子の回転に対応して星間分子の同定に使えるGHzより上の周波数です。波長がcm以下になると(2.45GHzで12㎝)、電気信号というよりも電波になるので、電線を通すのが難しくなります(インピーダンス整合、定在波比などで調べてみて下さい)。微弱信号を直接増幅するには、高速の半導体や精密な導波路を用意する必要があり、たいへん高価になってしまいます。この辺りの解決には、無線通信の初期に画期的なアイデアであるヘテロダイン(heterodyne)方式が発明されています(1901年,Reginald A. Fessendenによる=ラジオ放送やソナーの…

世界の研究所 ALMA Observatory (アルマ電波天文台)

今週の世界の研究所は、電波望遠鏡で現在最大の、南米チリのアタカマ砂漠の高地にある ALMA 電波天文台を取り上げます。 https://www.almaobservatory.org/en/home/ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%9E%E5%A4%A7%E5%9E%8B%E3%83%9F%E3%83%AA%E6%B3%A2%E3%82%B5%E3%83%96%E3%83%9F%E3%83%AA%E6%B3%A2%E5%B9%B2%E6%B8%89%E8%A8%88 高度5000mにあるというので…