No B.S. Price Strategy(9): 15章 有名店・有名人とのつながりによる価格戦略

金曜日の読書”No B.S. Price Strategy:…”は第15章 How “The Company You Keep” Can Impact Price です。この題名および主題”The Principle of Association”は訳しにくいですが、高級店に卸しているとか、有名人が顧客であるとかいう「つながり」が価格戦略に有効であるという主張です。 LDOCEによると、 - company 1は「会社」、2 は when you are with other people and not a…

アルケノン古水温計

今日は「アルケノン水温計」を紹介します。アルケノンは、「円石藻(えんせきそう)」が作る長鎖(C37)アルキルケトンで、二重結合が2個入ったり3個入ったりします。2個(C37:2)と3個(C37:3)の分子数の比が水温に依存することが発見され、その比を測定することにより海底堆積物が形成されたときの温度を下記の式から推測できるというものです。 UK′37 = C37:2/(C37:2 + C37:3)=0.033T [°C] + 0.044 これは細胞膜の軟らかさを一定に保つ目的で生物がやりそうなことなので、素人目にも信頼性が高そうに見えます。素晴らしいですね。 https://www.gsj.j…

Mg/Ca比による古水温決定は難しい

地質試料から古気候を明らかにする研究で使われるものとして、昨日は酸素同位体比を紹介しました。その他にいくつかありますが、今日はMg/Ca比を見ましょう。 いろいろ読んだのですが、英語だとわかりにくくて頭が痛くなりました。下記日本語の解説(pdf)を読んで、留保条件がたくさんあってややこしいからだと納得できました。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc/116/2/116_2_63/_pdf/-char/ja 分析対象は、世界中の海にいる炭酸カルシウムの殻を持つ動物プランクトンである有孔虫の殻の微化石です。CaCO3の中にCaの代わりにMgが取り…

酸素同位体O-18/O-16比による古水温決定

昨日の記述に誤りがありました。「ちきゅう」の掘削深度の記録は10kmではなくて、2019年の3262.5mで、科学掘削として世界最深だそうです。断層や褶曲が激しいため計画よりも浅いところで掘削を中止したとのことです。地震の震源になりうるところを掘削しているので「陰謀論」の標的になったりしていますが、そんなに柔(やわ)なものでは無いでしょう。 https://www.jamstec.go.jp/chikyu/j/nantroseize/ さて、古気候を海底堆積物で調べる方法をいくつか見つけました。一つは酸素同位体O-18/O-16比です。 https://nh.kanagawa-museum.j…

世界の研究所:JAMSTEC 高知コア研究所

先週は古気候(paleoclimate)の研究から1億年前(正確には9200万年前)には大気中CO2濃度が2000ppmあり(現在420ppm)、地表の平均気温が34℃(現在14℃)であった、という論文を紹介しました。古気候研究は氷河の深いところや、海底堆積物の深いところの分析でCO2濃度や気温(海水温)を推測します。今週はどうやっているか少し見てみましょう。海底堆積物については2013年から IODP計画というのがあって10kmを超える深度から試料を取り出しています。日本、米国、欧州が中心です。 https://iodp.org/ 日本はJAMSTEC(海洋研究機構)の深部掘削船「ちきゅう」…

No B.S. Price Strategy(8): 14章 専門職とサブカルチャーを攻めよ

金曜日の読書”No B.S. Price Strategy:…”は第14章です。専門職(occupational niche ニッチ)向け、またはサブカルチャー(subculture)向けに細分化し最適化された商品では価格を通常の何倍にも吊り上げることができる、という極意が述べられています。いろいろ例が上がっていますが、著者が同じものを対象コミュニティによって大きく違う価格で売っていると白状しているのが面白いです。おそらくよく批判されるのでしょう、「詐欺(fraud)ではないか?倫理的(ethically)に問題があるのではないか?」という批判に対して先回…

9000万年前はCO2濃度2000ppm(現在の5倍弱)、地表平均気温は今より20℃高く34℃

地球表面の温度の年代による変化については、氷河の深い(=古い)試料だけでなく様々な地質学的試料で推定が行われています。ほとんどが同位体比を利用するもののようです。詳細は調べる時間がないので来週に回します。結果は例えば下記の論文に出ています(購読しないと中身が読めない)。1億年くらい前までは推定ができるようです。 https://www.science.org/doi/10.1126/science.aay3701 それによると、CO2濃度は1億年前はずっと高く2000ppmくらい(現在の5倍)、地表の平均気温は30℃を超えていたと推測されています。グラフから見ると、最高温度は9000万年前の3…

氷河の年代は深さに依存

氷河の氷は長い時間をかけて堆積しているので、過去の気象情報(酸素濃度など)を持っています。南極の氷は最大で4000mの厚さがあり、下記によると3000m以上の深さまで掘って試料採取しているようです。3000mの深さで72万年前というのが同位体分析などでわかっているそうなので(宇宙線により放射性同位体ができてそれが閉じ込められて崩壊して少なくなっているのでその比を測定すれば年代がわかる)、何億年という古さではないようですね。 https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20200918.html 当然持ち帰って大事に保管してあるはずです。保管場所は色々あると思いますが、…

フィヨルド地形

地球の陸地面積の総計は氷河の面積は15000万km2で、日本の面積38万km2の約400倍です。現在、陸地の10%の1500万km2が氷河におおわれているとのことです。99%が南極大陸とグリーンランドに分布しているとのこと。 https://www.suntory.co.jp/eco/teigen/water/jiten/world/03/ 過去最大の氷河の面積は4300万km2で現在の約3倍とされています。その時は氷河として氷の形態の水が多かったので海水が少なく、100m以上海面が低かったとのことです。 北欧などにフィヨルド地形があります。これは最大で水深1300mにもなる溝状の湾です。海水…

世界の研究所:Swiss Federal Institute for Forest, Snow and Landscape Research WSL

先週のニュースで気になったものとして、スイスアルプスでの氷河の崩壊がありました。動画も上がっていますが、9万立米の氷と土石が落ちてきたとのことです。 https://www.youtube.com/watch?v=yAeg7z8m2f8 その10日前の5月19日に村の300人の住人はほぼ避難していたそうですが、1人行方不明だそうです。 https://people.com/man-missing-after-swiss-village-swallowed-by-gigantic-landslide-glacier-collapse-11744186 土石流で堰止湖ができ、それが決壊すると予想さ…