世界の研究所 国連大学と関連組織

今週の世界の研究所は、国連傘下の研究組織についてとりあげます。 https://jp.unu.edu/about/unu-system 国連大学の本部は、東京・渋谷区にあり、学部はありませんが大学院を持っています。 その下に14の研究組織があるようです。 社会、経済、資源にかかわる文系の研究が多いようですね。 https://jp.unu.edu/explore いわゆるSDGsにかかわる研究を熱心に推進しているようです。 研究者が全世界で400人余りいるようです。一部は大学と両方に属していますね。 multifaceted 多面的な facet は多面体の面ですね。 comprehensiv…

Hoffmann  Is Nature Natural?

今週から金曜日はHoffmann & Schmidtの”Old Wine New Flasks: Reflections on Science and Jewish Tradition”を解説します(以後「今週のHoffmann」と略す)。私が中古本を買ったときはamazonで7000円くらいしましたが、今は2000円以下になっていますね。Jewishの人たちはTalmud(タルムード;前にアクセント)という聖書の解説本を読んでいるとのこと、私の理解では、これは聖職者たちが議論した記録を様々な意見を相互参照しながら世代を超えて1000年単位で書き継いでいるもので…

渡り鳥の方位磁石

渡り鳥や伝書鳩が磁場を感じる機構は興味深いです。視界が悪い時に方向を定めるために地球磁場を使っているのは間違いないようです。 https://en.wikipedia.org/wiki/Magnetoreception そのしくみについては、渡り鳥はマグネタイト(磁鉄鉱、Fe3O4)を内包するタンパク質であるフェリチンなどの強磁性体を使っているのではなくて、分子の光励起→電荷移動によって生じたラジカル対が磁場に敏感なことを使っているとされています。地球磁場による磁気エネルギーは非常に小さく、室温ではほぼ無視できますが、2つのスピンの向き(一重項か三重項か)は化学反応に影響を与えます(例:水素原…

AIによるタンパク質立体構造の予測

ちょっと前の話ですが、アミノ酸配列からタンパク質の立体構造を計算機で予測するめどが立ったというニュースがありました。 https://deepmind.com/blog/article/AlphaFold-Using-AI-for-scientific-discovery https://www.technologyreview.com/2020/11/30/1012712/deepmind-protein-folding-ai-solved-biology-science-drugs-disease/ https://www.nature.com/articles/s41586-019-19…

Git

最近、git(ギット)を使うようになりました。便利な仕組みで、多数のファイルの同期や、共同作業の場合に威力を発揮します。 https://ja.wikipedia.org/wiki/Git 現在のgitの責任者は日本人(濱野氏)で、gitはLinuxの開発のためにLinus Torvalds氏を中心に作られたもののようです。下記インタビューは仕事ぶりの一端が書かれていて面白かったです。Linuxが社会に与えた影響は大きいと思います。なぜ彼の名前がついているかが分かる気がしました。 https://xtech.nikkei.com/it/article/COLUMN/20130418/47189…

世界の研究所 米国研究公正局

今週の世界の研究所は、アメリカのOffice of Research Integrity(米国研究公正局)をとりあげます。これは、研究所ではなく行政機関です。研究上の不正に対応する専門の政府機関で、ORIと略されます。アメリカでも1980年ころ、捏造、改竄、盗用などが相次ぎ、NIH (National Institute of Health 国立公衆衛生局)の下にOffice of Scientific Integrity という組織が作られ、それが他局と合併独立したものです。 最近の米国の事件が実名で公開されています。 https://ori.hhs.gov/case_summary ストー…

孫子 彼を知り己を知れば、百戦してあやうからず

今週の孫子は、第3章 謀攻篇(Attack by stratagem) から有名な言葉「彼を知り己を知れば、百戦してあやうからず」です。箇条書きにすることで文章にリズムと力が出ているのがわかると思います(私が言う「ピリッとしている文章」)。これは言語にかかわらず使える文章法です。 「故知勝有五。知可以戦与不可以戦者勝。識衆寡之用者勝。上下同欲者勝。以虞待不虞者勝。将能而君不御者勝。此五者知勝之道也。  故曰、知彼知己者、百戦不殆。不知彼而知己、一勝一負。不知彼不知己、毎戦必殆。」 17.Thus we may know that there are five essentials for vi…

ヘリウム資源

ヘリウムの値段が高騰して、日本物理学会が要望書を出したニュースは見たことがあるのではないでしょうか。 https://www.jps.or.jp/information/2019/12/helium.php ヘリウムは100%輸入です。主な産出地は、米国、カタール、アルジェリアと限られており、米国土地管理局が備蓄していたヘリウムの国外販売終了(2018年)や、中東の情勢不安定により、日本国内へのヘリウム輸入量が大幅に減少しています。価格がここ数年で4倍に上がりました。ヘリウム風船をほとんど見なくなりました。 輸入価格で1g 2円から8円になっています。1モルは4gなので、32円ということですね…

超伝導送電プロジェクト

3年生の講義で今年は超伝導を3回分やるつもりで、導入として応用の現状を調べました。 石狩市の直流送電プロジェクトは、1kmのケーブルで実証に成功しています。 http://benri.i-eris.tv/chodendo/chodendo05.html#channel 液体窒素で-196度にする。真空断熱。外は鋼管、内側はステンレス。超伝導ケーブルの太さは250mm。明らかに銅系高温超電導体を使っていますが、具体的に何を使っているかは書いてありません。 市販品には住友のBiSrCaCuO系を銀に埋め込んだもの、イオンビーム配向法(IBAD)でステンレス箔に蒸着した酸化物の上にPLDでつけたYB…

世界の研究所 ドイツ ヴァルター・マイスナー研究所

今週の世界の研究所は、ドイツの Walther-Meißner-Institut (WMI), Bayerische Akademie der Wissenschaften (バイエルン州科学アカデミー ヴァルター・マイスナー研究所)です。ここは、低温電子工学の研究所です。この分野は日本では各大学の研究室として散在して苦労しているところが多いようですが、ここはまとまっています。超伝導のマイスナー効果のマイスナーが初代所長、生誕100周年で「低温研究所」から名前を変えたようです。 https://www.wmi.badw.de/aboutus/portrait.htm 小さい研究所ですが、講義の…