宇宙船の大気圏再突入時の発熱の計算

昨日のH3ロケットは成功して良かったですね。15分ほどで時速25000km・高度445km、しばらく慣性で飛んでから4分ほどの第2段ロケットの2回目の噴射で時速34685km(秒速9.6km)に到達するのはすごいです。 https://www.youtube.com/watch?v=4ez6RxE35aU 衛星を打ち上げるには第一宇宙速度(7.9km/s)が必要で、当然それは超えています。 空気による摩擦熱が激しいのは地表近く(高度10kmまでの成層圏、およびその上の対流圏くらいでしょうか)だと思います。空気による摩擦熱の計算は物体の形状にも依存して難しそうです。 Wikipedia は ht…

世界の研究所:英国 Reaction Engines 社の倒産

今週の世界の研究所は、英国のOxford大学発ベンチャー Reaction Engines 社をとりあげます。私は以前からこの会社に注目していましたが、先週倒産してしまいました。 https://ukdefencejournal.org.uk/uk-hypersonic-project-setback-as-reaction-engines-collapses/ https://www.flightglobal.com/aerospace/reaction-engines-to-close-as-cutting-edge-sabre-fails-to-advance/160565.articl…

Hillbilly Elegy(11):逆境的児童期体験とヒルビリーの再生産メカニズム

週末が米国大統領選挙です。どっちになるのでしょうね。金曜日の読書”Hillbilly Elegy”の著者Vance氏は選挙戦中おかしなこと(移民が猫を食べる等)も言っていましたが、切れ味のよい演説も報道で見ました。今日は第14章です。大学院で幸せと達成感を感じながら、恋人との関係で精神が不安定になり、幼少期に自分が見た諍い(いさかい)や家庭内不和を再現しそうになって自分を分析します。心理学的には「逆境的児童期体験 ACE」と呼ばれる経験であり、成人してから深刻な影響をもたらすものであることを知ります。また、大卒以上の学歴を持つ人のうち、ACEを経験した人は全体の半分以下…

国民負担率 – 社会はCO2回収コストに耐えられるのか?

昨日の調査と試算で、世界のGDP合計が1京4400兆円で、CO2の大気からの直接回収(DAC)でカーボンニュートラルを実現しようとすると建設費を除き1416兆円、GDPの10%という結果が出ました。GDPは、おおざっぱには国民の給料の合計と思ってよいので給料の10%を召し上げて使えばよい、という話になりました。CO2の話からは外れますが、10%を召し上げて大丈夫かどうか、「国民負担率」という数値を基に考えてみましょう。 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a04.htm によると、日本は48.1%です。この数値は、税金と社会保障…

DACだけでカーボンニュートラルを実現するには全世界GDPの10%の費用が必要

人間が一日に呼吸で放出するCO2は約1kgだそうです。 大気中のCO2の総量はどのくらいかと思って検索したところ、 https://en.wikipedia.org/wiki/Carbon_dioxide_in_Earth%27s_atmosphere によれば、大気中の1ppmのCO2は 炭素として2.13Gt(ギガトン)、CO2として7.82Gtだそうです。いま412ppmなので、CO2として3221Gtですね。 この数値は米国のOak Ridge National Lab.の報告書からです。一般人の概算も見つかりましたが、幅があります。11000Gtは間違いで、3206Gtの人が正解です…

CO2直接大気回収(DAC)の大規模プラント

米国エネルギー省(Department of Energy; DOE)が多額の資金を提供して民間が建設しているCO2大気直接回収について、2つのプロジェクトのwebページが見つかりました。 https://www.projectcypress.com/our-approach https://www.southtexas1pointfive.com/direct-air-capture 音楽付きの映像はいいのですが、原理やエネルギー消費、コストについては何も書いてありません。 日本政府のシンクタンクCRDSが2019年に報告書を出していて、同じ用語(calciner, slaker等)が使われ…

世界の研究所:米国 Breakthrough Energy

今年も暑い夏が長く続きました。紅葉がきれいですが、雪は例年よりも早く降りそうで(すでに初雪)、秋は短いと思われます。気候関係で、今週はCO2回収に関する動きを紹介しましょう。米国のBreakthrough Energy という団体は、Microsoft 創業者のBill Gatesが設立・支援しており、気候変動対策に関する調査研究や提言を行っています。 https://www.breakthroughenergy.org/ 米国エネルギー省が1.8B$=2700億円規模で大規模に建設を助成している直接CO2大気回収(direct air capture, DAC)について、需要不足のため失速が…

Hillbilly Elegy(10):社会資本(コネのネットワーク)を得て就職する

金曜日の読書”Hillbilly Elegy”は第13章、イェール大学法科大学院でガールフレンド(インド系、のちの伴侶)を見つける話と、ガールフレンドや教授のアドバイスによって社会的資産(簡単に言うとコネ)を作るところです。この、社会的資産を作る舞台としての名門大学(院)の役割は確かに得難いものです。1年目が終わると有名な法律事務所からリクルーターが訪問し、繰り返し面接をしながら候補者を絞り込んでいきます。二次面接の一部であるグループでの会食でsparkling waterが炭酸水であることを知らず「輝く水って何だろう」と飲んで吹きだしたり、ナイフやフォークがたくさんあ…

Hamilton-Jacobi 方程式と最小作用の原理

Bellman方程式はだいたい説明ができたと思うので、それとよく似たHamilton-Jacobi方程式について述べましょう。 「解析力学」という分野の話で、抽象的な変数の置き換えが続いて具体的イメージがわかず非常にわかりにくいですが、いろいろいじっていくうちに量子力学とのつながりが出てきたり、Bellman方程式と同じものが出てきたりして、深い真理につながっていることがうかがわれます。 wikipediaの説明もわかりやすいとは言えません。昔の学者がニュートンの運動方程式を別の形(積分形)で表せないかをいろいろ試していたものが体系化されたというものです。 https://ja.wikiped…

Hamiltonの主関数と制御理論:Bellman方程式は「7つの習慣」と見た目が同じことを言っています

Bellman方程式を連続時間にしたものは、Hamilton-Jacobi-Bellman方程式と言い、解析力学のHamilton-Jacobi方程式の拡張になっています。 その背後にある理由を調べていたら、下記を見つけました(pdf注意)。この分野を理解したい人は一読をお勧めします。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/butsuri1946/41/3/41_3_227/_pdf/-char/ja 実は、この著者の先生には習ったことがあります。私が大学2年生か3年生で受けた講義で本来の先生が長期出張のためこの著者が代講で来られて何回か講義を受けました。こ…