宇宙船の大気圏再突入時の発熱の計算

昨日のH3ロケットは成功して良かったですね。15分ほどで時速25000km・高度445km、しばらく慣性で飛んでから4分ほどの第2段ロケットの2回目の噴射で時速34685km(秒速9.6km)に到達するのはすごいです。

衛星を打ち上げるには第一宇宙速度(7.9km/s)が必要で、当然それは超えています。
空気による摩擦熱が激しいのは地表近く(高度10kmまでの成層圏、およびその上の対流圏くらいでしょうか)だと思います。空気による摩擦熱の計算は物体の形状にも依存して難しそうです。
Wikipedia は https://en.wikipedia.org/wiki/Aerodynamic_heating には情報がすくなく、
https://en.wikipedia.org/wiki/Stagnation_temperature に式がいくつかあります。よどみ点(空気の速度がゼロになる点)では運動エネルギーが内部エネルギーにすべて変換されるため温度が計算できるとのこと。
https://en.wikipedia.org/wiki/Stagnation_temperature
よどみ点の実験動画は下記。

宇宙機の降下時についてよどみ点における加熱の計算をしている動画がありました。

再突入の際の速度は6.61km/s, 高度68.9kmで密度は1.075×10^-4kg/m3(室温1気圧の空気の密度は1.293kg/m3なので、1万分の1です)。温度が1110Kとすると
46W/cm2ということになります。発熱量ははんだごてくらいで、それほど大きくないですが、放熱しないとどんどん温度が上がってしまいます。空気の熱伝導による放熱はこの密度では期待できないでしょう。
輻射熱による放熱はStefan-Boltzmannの式 M=σT^4 で、σ=5.67×10^-8 Wm^-2K^-4 が46W/cm2に釣り合う温度は、T=1690 Kで、物質にとってかなり厳しい温度です。
実際に恐ろしい事故が起こっていますので、このあたりの温度における放熱についてはきちんと勉強し、疑わしい場合には迅速な対応をしなければなりません。助かった可能性があるだけに、悲しいです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%93%E3%82%A2%E5%8F%B7%E7%A9%BA%E4%B8%AD%E5%88%86%E8%A7%A3%E4%BA%8B%E6%95%85
私の経験では、1100℃を超えると加熱のために必要なパワーがどんどん大きくなります。これは輻射熱の放出が効いています。輻射を戻すような反射率の高い金属の薄板の積層体(熱伝導を下げるため)で囲むのが高温を得るのに効果的です。昔の反射炉は赤外線を反射し、自らは断熱性の高い低密度セラミック(耐火煉瓦)を使っています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9F%AE%E5%B1%B1%E5%8F%8D%E5%B0%84%E7%82%89

英語は関連用語から。 https://en.wikipedia.org/wiki/Stagnation_temperature など。
cosmic velocity 宇宙速度
stagnation temperature よどみ点温度
adiabatic アディア「バ」ティック 断熱的な
enthalpy 「エ」ンさるピー エンタルピー
specific heat capacity 比熱容量  specific を「比」と訳す場合があります。
ratio of specific heats (Cp/Cv~1.4 for air) 「レイ」シオ 比熱比
“A bimetallic thermocouple is frequently used to measure stagnation temperature, but allowances for thermal radiation must be made.”
bimetallic 2つの金属の
thermocouple 「サ」ーモカップる 熱電対
allowances 許容、留保、ここでは「誤差の留保」の意味でしょう。
thermal radiation 熱輻射

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