Hillbilly Elegy(11):逆境的児童期体験とヒルビリーの再生産メカニズム

週末が米国大統領選挙です。どっちになるのでしょうね。金曜日の読書”Hillbilly Elegy”の著者Vance氏は選挙戦中おかしなこと(移民が猫を食べる等)も言っていましたが、切れ味のよい演説も報道で見ました。今日は第14章です。大学院で幸せと達成感を感じながら、恋人との関係で精神が不安定になり、幼少期に自分が見た諍い(いさかい)や家庭内不和を再現しそうになって自分を分析します。心理学的には「逆境的児童期体験 ACE」と呼ばれる経験であり、成人してから深刻な影響をもたらすものであることを知ります。また、大卒以上の学歴を持つ人のうち、ACEを経験した人は全体の半分以下なのに対し、低学歴の労働者階層では半数を超えているという研究結果を見つけます。これが、貧困と不幸の再生産のメカニズムではないか、という分析と提言(最終章)に続きます。人間は強いストレスを受けるとアドレナリンその他のホルモンが出て「火事場の馬鹿力」がますが、それが日常化すると大きな弊害が生じるそうです。
幼少期に「酒場から熊が毎日帰ってくる」ような経験をすると、恐怖や不安を引き起こし、逃走や闘争をする準備が整ってしまい、その原因が無くなっても脳の闘争回路がのこるため争いを引き起こすことになるそうです。米国の労働者階級は世界で他にないほど不安定で、母親の再婚率も高く、発達が遅れたり、準備が整わないうちに結婚、出産、離婚というルートで典型的なヒルビリーの家庭が生まれると分析しています。大学院修了時でも母親は薬物依存から逃れられず、ヒルビリーである自分はときどき愛と争いの区別がつかなくなる不安を抱えながら修了式を迎え、来賓の「やりたいことがはっきりしていなくても不安に思う必要はない」という言葉には進路以外にもっと広い意味があるのではないか、と考えます。

“The following events or feelings are some of the most common ACEs(adverse childhood experience):
– being sworn at, insulted, or humiliated by parents
– being punished, grabbed, or having something thrown at you
・・・
– living with someone who was depressed or attempted suicide”
adverse 逆、逆境的
be sworn at < swear スウェア 悪態をつく
insult 「イ」ンサルト 侮辱する
humiliate ヒュー「ミ」りエイト 恥をかかせる
punish 罰する
grab つかむ
have something thrown at you 物を投げつけられる  something の使い方を覚えましょう
depressed うつ
“For many kids, the first impulse is escape, but people who lurch toward the exit rarely choose the right door. This is how my aunt found herself married at sixteen to an abusive husband.”
impulse 衝動、反応
lurch 船が急に傾く、よろめく、よろめきながら進む
exit エグ「ジ」ット 出口
abusive < abuse 虐待する

※ この本は次回で終わります。次の本については今考え中で、Apple社の幹部が書いた創造性に関する本か、中国古典か迷っています。

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