ガス検知器の歴史としくみ

さまざまなガス検出器は商品化されています。会社も国内外にたくさんあり、どこが最初かなと思っていましたが、下記によくまとまっています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Gas_detector 炭鉱のカナリア → H. Davyの防爆ランプ(Davy Lamp, 可燃性ガスで燃え上がり、酸素がないと消える)(1815) → Oliver Johnsonの触媒燃焼センサー(温度上昇を白金線の抵抗値で見る)(1926-7) となっており、その後半導体式や電気化学式が出ています。国内メーカーは大きい専業が2社ありますが現在では資本関係があるようです。1社は成功した学生ベンチ…

生物の匂いセンサーはにおい分子が入るポケットのついたGタンパク共役受容体

私は、何か斬新なものを作ろうというときには生物に学べないかを調べます。嗅覚センサーについては、動物には鼻があるのでその仕組みを見てみましょう。 検出される分子が結合できるポケットがあるタンパク質がセンサーです。Gタンパク共役受容体(G-protein-coupled/linked receptors)の一種で、脂質二重層膜に埋め込まれて浮いています。 https://numon.pdbj.org/mom/58?l=ja# 動画はあまりいいのがないです。 https://www.youtube.com/watch?v=NL_YbPigDzg https://www.youtube.com/wat…

世界の研究所:フランス ベルサイユ大学ISIPCA(香料・化粧・食用色素・国際学院)

今週は、匂いを検出する方法について解説するつもりです。今日紹介するのは香水と化粧品の研究・教育機関(Institute superieur international du parfum, de la cosmetique et de l’aromatique alimentaire)で、フランスのベルサイユ大学(Univ. Versailles)にあります。 https://en.wikipedia.org/wiki/ISIPCA alimentaireは、食品用の、という意味なので、上記フランス語は香水、化粧品、食品香料の国際高等研究所 という意味でしょう。 ここは一流の調香師…

ドン・キホーテ(1) 著者は出版後も困窮していた

今週から、金曜日は「ドン・キホーテ」(Don Quijote/Quixote) を英語で読んでいきます。もとは中世スペイン語(ホをxで書く)ですが、定番の英訳があるようなので使います。 Miguel de Cervantes Saavedra(1547-1616)著、Edith Grossman訳(2003)です。セルバンテスはシェークスピアと同時代人で、二人は同じ年に亡くなっています。 ドン・キホーテは2部あり、前編が1605年、後編が1615年に刊行されています。後編は前編がベストセラーになったことが作中に登場する面白い構成になっています。訳本の解説によれば、後編が書かれたのは、10年たっ…

ダイヤモンドの他の応用:高い熱伝導とドーパントの量子的性質

ダイヤモンドの最近の用途としては、高い熱伝導性を利用した放熱材料と、窒素をドープした時の量子力学的応用があります。一つずつ解説します。 熱伝導度は、格子振動の1モードあたりのエネルギー(別の言葉でいうとフォノン phonon のエネルギー)が高いほど高くなります。これは、軽い原子で化学結合が硬いと高くなるので、ダイヤモンドが最高になります。 コンピュータのCPUの冷却グリスには銀やダイヤモンドの粉が入っていますが、ダイヤモンドのほうがよく冷えるというのがカタログスペックです。また、車載用などのパワー半導体の放熱のためダイヤモンドが考えられています。絶縁性と高い放熱性能の両方がある物質は少ないで…

ホウ素ドープダイヤモンドとセンサー応用

昨日はナノダイヤモンドの生体適合性の話が出てきました。ダイヤモンドは反応性が低いので、色々な場面で役立ちます。たとえば、ホウ素をダイヤモンドに高濃度(数%)ドープすると金属になりますが、これは反応性が低い電極として使い勝手が良いです。 電気分解する際、電極表面で電解液中のイオンと電荷をやりとりするために余分なエネルギーが必要です。これを過電圧 overpotential と言います(エネルギー(Joule)を素電荷e=1.6x10^-19Cで割ると電圧(Volt)になる)。 ホウ素ドープダイヤモンド電極はいろいろなイオンに対して過電圧が極めて大きいことが知られています。これはダイヤモンドの反応…

爆轟法によるダイヤモンドの合成

連休前は人工ダイヤモンドの話をしていました。続けます。 先週紹介していなかったダイヤモンドの重要な製法として、「爆轟法 detonation synthesis」というのがあります。これは、鉄製の強固な容器の中に爆薬を密閉して爆発させ、瞬間的に発生する高温高圧を利用してダイヤモンドを合成する方法です。 1988年ころロシアで開発されたようです。 https://www.nature.com/articles/333440a0 ナノメートルサイズの粉体しか得られませんが、期限切れの爆薬の有効活用の方法として有効です。ダイヤモンドは25%ほどで、sp2炭素である煤(すす)も大量に得られるので、濃い…

合金+大気圧CVDによるダイヤモンド合成の論文

月曜日に紹介したダイヤモンドが1気圧でできるという論文をちゃんと読みました。 Gaを主成分、Fe,Coを含みSiを0.5%程度含む液体金属に1気圧のメタンと水素の混合ガスを1000℃付近で吹き付けると、ダイヤモンドが表面より少し下でできるという実験事実を報告しています。 Gaだけではあまり炭素を溶かさず、メタンを吹き付けるとグラファイトができます。Feなどを入れると炭素がよく溶けるようになります。Siはダイヤモンド中にドープされるようです。特有の蛍光が出ています。 Siがないとグラファイトになってしまうことと、Siが取り込まれていることから、sp3を好むSiの存在がグラファイトでなく準安定なダ…

ダイヤモンドのCVD(化学気相蒸着)

ダイヤモンドは高温高圧だけではなく、気相蒸着で作ることもできます。この場合は減圧下です。メタンやエタノールと水素を流して、炎や放電などで水素ラジカルを発生させると、熱力学的に安定なsp2炭素が水素ラジカルと反応して気相に戻りやすいことを利用します。sp3炭素は水素ラジカルとの反応性がより低いので基板に堆積してダイヤモンドができるという原理です。適正な温度は約1000℃の狭い範囲です。下記は簡単な歴史と宝石級ダイヤモンドの例が載っていますが、ここで紹介されている会社はもうありません。なかなか宝石を作るビジネスは難しいということかなと思います。 https://www.gia.edu/doc/Ge…

高温高圧によるダイヤモンド合成とダイヤモンドやすりの製法

ダイヤモンドについては、2021年2月1日「今日の英語」でDe Beers社を紹介していますが、合成法については詳しく説明していませんでした。 https://www.sekaiken.com/?p=1137 ダイヤモンドが炭素でできていることは、元素Ir, Osを発見した英国のS. Tennantによって1797年に証明されました。 https://en.wikipedia.org/wiki/Smithson_Tennant まず、ダイヤモンドは1気圧では準安定で、グラファイトのほうが安定です。ダイヤモンドを熱力学的に(=ゆっくり)合成するには、0ケルビンでも1.7GPa(17000気圧)が…