高温高圧によるダイヤモンド合成とダイヤモンドやすりの製法

ダイヤモンドについては、2021年2月1日「今日の英語」でDe Beers社を紹介していますが、合成法については詳しく説明していませんでした。
https://www.sekaiken.com/?p=1137

ダイヤモンドが炭素でできていることは、元素Ir, Osを発見した英国のS. Tennantによって1797年に証明されました。
https://en.wikipedia.org/wiki/Smithson_Tennant
まず、ダイヤモンドは1気圧では準安定で、グラファイトのほうが安定です。ダイヤモンドを熱力学的に(=ゆっくり)合成するには、0ケルビンでも1.7GPa(17000気圧)が必要で、温度が低いほうが低い圧力ですみます。天然ダイヤモンドは、地下深く(150km以深)で生成し、火山の爆発等で急速に地上に噴出することによって準安定相が固定されたものです。
https://www.igcl.c.u-tokyo.ac.jp/research/kimberlite.html
http://www.spring8.or.jp/ext/ja/sp8summer_school/sp8ss2004/sp8ss2004doc/jisshu4b1.pdf
通常は1300℃以上、約5GPa以上で触媒(鉄やNiなどの炭素を溶かす液体)を使って結晶を作ります。これは、1953年にスウェーデンのASEA社と米国のGeneral Electric社で再現性のある方法が確立されました。1879年から1928年まで数人の著名な研究者(フッ素単離のMoissanや陰極線の発見者Crooks、蒸気タービンの発明者Parsonsら)が挑戦しましたが、再現性のある結果は得られておらず、40年を費やしたParsonsは、それまでに得られたものは合成スピネル(遷移金属を含むAB2O4の組成の酸化物)だったのではないか、と報告しています。
現在では超高圧を用いる合成法は工具用として工業化されており、100円ショップでダイヤモンドやすりを買うこともできます。これは、ダイヤモンドの微粒子を合成し、砕いて望みの大きさの砥粒にしたのち、ニッケルの溶液に混ぜて電気メッキで工具に着ける方法で作られているようです。ダイヤモンド砥石はダイヤモンド粉と接着剤をホットプレスで固めて作る方法もあるようです。
下記はどちらも中国と思われる工場の動画です。メッキ液に触るには手袋をしたほうがいいと思います。していない人もいるのでちょっと心配です。


英語は https://en.wikipedia.org/wiki/Synthetic_diamond から。

“Their method involved heating charcoal at up to 3,500 °C (6,330 °F) with iron inside a carbon crucible in a furnace. Whereas Hannay used a flame-heated tube”
crucible るつぼ
furnace 「ファ」ーナス 炉
flame-heated 火炎で加熱した  ※ バーナー加熱は、大型の工業炉では電気炉よりもエネルギー費用が安いため使われています。
inside blocks of lime 石灰岩のブロックの内部で
“but later he retracted his statement” 彼は声明を撤回した。
” A prominent scientist and engineer known for his invention of the steam turbine, he spent about 40 years (1882–1922) and a considerable part of his fortune trying to reproduce the experiments of Moissan and Hannay, but also adapted processes of his own.[22] Parsons was known for his painstakingly accurate approach and methodical record keeping;”
invention 発明
a considerable part of his fortune 財産のかなりの部分
painstakingly accurate approach 「ペ」インステイキングり level 12 骨身を惜しまない(入念で)正確な方法
spinel スピ「ネ」る スピネル
“The press used a pyrophyllite container in which graphite was dissolved within molten nickel, cobalt or iron. Those metals acted as a “solvent-catalyst”, which both dissolved carbon and accelerated its conversion into diamond. ”
pyrofillite パイロフィライト Al2Si4O10(OH)2 の組成の柔らかい鉱物。高圧実験の圧力容器として使われる。https://en.wikipedia.org/wiki/Pyrophyllite

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