ダイヤモンドの他の応用:高い熱伝導とドーパントの量子的性質

ダイヤモンドの最近の用途としては、高い熱伝導性を利用した放熱材料と、窒素をドープした時の量子力学的応用があります。一つずつ解説します。
熱伝導度は、格子振動の1モードあたりのエネルギー(別の言葉でいうとフォノン phonon のエネルギー)が高いほど高くなります。これは、軽い原子で化学結合が硬いと高くなるので、ダイヤモンドが最高になります。
コンピュータのCPUの冷却グリスには銀やダイヤモンドの粉が入っていますが、ダイヤモンドのほうがよく冷えるというのがカタログスペックです。また、車載用などのパワー半導体の放熱のためダイヤモンドが考えられています。絶縁性と高い放熱性能の両方がある物質は少ないです。
ベンチャー企業によりウェファも作られています。
https://www.df.com/
日本では産総研と物材機構が頑張っています。
https://unit.aist.go.jp/adperc/ja/groups/dwt.html
窒素ドープダイヤは、硬いダイヤモンド格子に窒素原子と炭素原子の欠損のペア(Nitrogen-vacancy center=NV center)が埋め込まれています。これは、固体でありながら格子振動の影響をほとんど受けない、真空中に原子を置いたような状態が作れるので、量子力学的な性質が強く現れます。価電子の磁気共鳴がマイクロ波領域にあり、そのエネルギー準位間隔が可視光領域(ピンク色の蛍光)、また価電子のスピンと核スピンが相互作用するので、光やマイクロ波によって核スピンを制御できます。
相互作用する核スピンは量子コンピュータのq-bitとして使えるのですが、有機分子の場合は分子の熱振動の影響で乱されてしまうため計算ができないのに対し、NV-centerはその影響が小さいため、有望視されています。その他、電子スピン共鳴の周波数が周囲の磁場に敏感に影響されることを利用した磁気センサーなど、楽しみな応用がたくさんあります。
これについてもベンチャー企業があります。同位体濃縮した炭素を使ったダイヤモンドなど、マニアックな製品があります。おそらくとんでもなく高価ですが、付加価値が高い製品として魅力的です。
https://www.quantumdiamonds.de/product/12c-enriched-diamonds
磁場のセンサーが超高感度になると、超伝導素子SQUIDで測っている「脳磁計」などが置き換えられるかもしれません(まだ感度は不足、アルカリ金属を入れた真空管+レーザーのほうが高感度で実用に近い)。これは脳の研究や検査に威力があります。
https://www.quantumdiamonds.de/technology
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/noutokokoro/machine/meg.html
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E8%84%B3%E7%A3%81%E6%B3%95

英語は、https://en.wikipedia.org/wiki/Magnetoencephalography から。
magnetoencephalography 脳磁図、磁気脳波 MEG
encephalo- は「脳の」 の意味です。
electroencephalography 脳波(電圧ではかる、一般的な脳波)、EEG I’ll take your EEG. 脳波をとります。
SQUID = superconducting quantum interference device 超伝導量子干渉素子、超伝導体の一部に超伝導の弱いところを作ることによって波動関数の干渉を電気的に検出できるようにしたデバイス。洒落でつけた名称と思われる。
squid スクゥイッド イカ(海洋生物) 
helmet-shaped vacuum flask ヘルメットの形をした真空容器
alpha rhythm α波 rhythmは「リズム」の英語です、つづりを覚えましょう。level 3
cortical surface 大脳皮質表面
eddy current 渦電流
“MEG can resolve events with a precision of 10 milliseconds or faster, while functional magnetic resonance imaging (fMRI), which depends on changes in blood flow, can at best resolve events with a precision of several hundred milliseconds.”
resolve events 事象を識別する
precision 正確性
visual and auditory cortex  視覚皮質や聴覚皮質
focal epilepsy 焦点てんかん
fetal フィータる 胎児の level 12
fetus フィータス 胎児 level 10

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