世界の研究所 セミ関連の cicada safari アプリと cicadamania サイト

関東の内陸部は気温が高くなっていて、梅雨は明けていませんが盛夏といっていいのではないでしょうか。今週の世界の研究所は、夏の昆虫であるセミの研究プロジェクトのアプリ “cicada safari” https://cicadasafari.org/ と、おそらく個人でやっている web https://www.cicadamania.com/ をとりあげます。前者は、米国の Mount St. Joseph University の先生(Prof. Gene Kritsky)が2019年に始めたアプリだそうです。Science 誌にもとりあげられています。 https:/…

The Door into Summer(7) エネルギー地形と観測の時間

ここのところ金曜日は「夏への扉」を読みながら「時間」について考えています。 “(free) energy landscape”という言葉があります。訳は「エネルギー地形」です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E5%9C%B0%E5%BD%A2 物質が変化するときのいろいろな状態のエネルギーがどうなっているか、で、物質の構造変化の座標を空間中の位置(イメージしやすいのはxyの2方向)に、そのエネルギーを高さにとって、地形図のようなものを考えるものです。…

リンの同素体

リンは多数の同素体をもつことが知られています。wikipedia は最近は信頼しても大丈夫なので、詳しい情報は下記を見るといいと思います。 https://en.wikipedia.org/wiki/Allotropes_of_phosphorus 白リン(別名 黄リン) P4分子の結晶 発火点30℃、皮膚につくと猛毒 赤リン P4分子が頂点同士で1次元につながったもの。通常はアモルファス。摩擦で発火するのでマッチに使う。また、プラスチックの難燃化剤に使う(燃えたとき難燃性のポリリン酸がプラスチック表面を覆って酸素を遮断するため)。 http://www.rinka.co.jp/product…

元素リンの発見は錬金術師による

リンは錬金術師(Henning Brand, 独, 1669年ころ)が初めて単離しました。原料は大量の尿を煮詰めたもので、リン酸塩を得、最後に「ワイン」と強熱して還元することにより単体が得られました。下記の絵(Joseph Write, 1771, “The Alchymist, in Search of the Philosopher’s Stone, Discovers Phosphorus, and prays for the successful Conclusion of his operation, as was the custom of the Anci…

有機リンの毒性、特に硫黄とリンがつながるとヤバい

リンは生体に不可欠な元素で、エネルギー通貨として使われるATPがなくなると生きることができません。リンを扱う酵素は3種類あり、試験に出そうですね。 https://en.wikipedia.org/wiki/Phosphorylase phosphorylase A-B + H-OP <-/-> A-OP +h-B phosphatase P-B + H-OP <-/-> P-OH + H-B kinase 「カ」イネース 日本語はキナーゼ  P-B + H-A <-/-> P-A + H-B 植物にリンが不足すると、生育が悪くなりねじれたりするそうですが色…

巨大リン鉱床がノルウェー南部で発見されました

先週のビッグニュースは、ノルウェーで世界最大級のリン鉱床が見つかったというものです。 https://www.bbc.co.uk/newsround/66099273 リチウム二次電池の正極用にリン酸塩の需要が2050年に現在の20倍に膨らむと予想される中でナウルなど既存のリン鉱床が枯渇しました。わかっている人は気を揉んでいたと思いますが、これで今後50年以上心配なくなったとのことです。特にEUには朗報である、というニュースです。 今週の世界の研究所は、リンで鉱床を発見したNorge Mining社をとりあげます。 https://norgemining.com/ リン、バナジウム、チタン、金…

The Door into Summer(6) 絶対反応速度論と前指数因子

金曜日は「夏への扉」を読みながら「時間」について考えています。今日は化学反応における時間を支配するアレニウス式における”pre-exponential factor”(前指数因子)、別名 “attempt frequency” (試行周波数)について考えましょう。いわゆるEyring(アイリング)の絶対反応速度論では、化学反応が起こるときには反応する分子たちが作る活性複合体の遷移状態があり、活性複合体中の分子振動により反応障壁を超えると生成物が生じると考えます。その時に反応障壁を超えようと「試行」する分子振動の周波数が「試行周波数」で、試行1回に…

ラムダ関数

「ラムダ関数」というのはpython, javaなどいろいろなプログラミング言語に実装されています。 なぜ「ラムダ」というのかはちょっと面白いです。下記によると、最初は変数に「^」をつけていたが印刷の時の活字がなかったので、「^」を変数の前につけていて、いつのまにか「λ」になったという嘘のような話が書いてあります。 https://www.quora.com/Why-is-it-called-lambda-calculus これまで、ラムダ関数は関数名を省略する「無名関数」の仲間だと認識していましたが、違っているようで、オブジェクト指向言語の次の世代の「関数型言語」で中心となる概念のようです。…

Curryのパラドックス

ケプラー予想の証明の概略は下記プレプリントに出ています(査読後出版済み)。 https://arxiv.org/pdf/1501.02155.pdf 証明支援システムは使ったことがないのでわかりませんが、jupyterやgoogle colaboratoryのような、打ち込んで実行した結果が記録されるノート形式の実行環境ではないかと思います。証明は164000行のそういうコードからなるということで、数人のチームで完成に10年かかった、というのは納得できます。上記論文の中には記号論理学で使う記号がたくさん使われています。私は大学1年生のときにゲーデルの不完全性定理を知りたくて記号論理学を履修しま…

ケプラー予想と証明支援システム

フランスの研究所INRIAが開発しているCoqは証明支援システムの一種です。windows,macはインストーラーがあるようです。 https://coq.inria.fr/ 大学院集中講義の機械学習講座の付録で「速習python教室」をやることにしたので準備を始めたのですが、「ラムダ式」を調べていたら、本来の目的からずれてこっちに来てしまいました。面白いですが、いまはCoqには深入りできないので、覚書のつもりで「今日の英語」の題材にしています。 さて、数学のいくつかの問題でコンピュータを用いないと証明できない(現状では)ものが知られていて、有名なものの一つは四色問題(四色定理、数百~数千個の…