量子暗号 単一光子と偏光を使うBB84

量子暗号というのは、送信者(Aliceということが多い)と受信者(Bob)の間であらかじめ複数の暗号表を共有しておいて、「これから何番の暗号表を使うから」という数字1つを安全に送れれば良しとしているようです。その数字の送り方に量子力学を使います。一番最初に提案されたのがBB84と呼ばれるもので、偏光の性質を使います。 偏光子は、単純化すると、電線が一方向に平行に密集して張ってある板で、偏光の電場が電線に平行だと電子が動いて光を吸収するが、垂直だと吸収しないという仕組みです。さて、一方向に偏光した光(直線偏光)を、それと45°の向きの偏光子に通したとしましょう。原理から、出てくる光は新たな偏光子…

世界の研究所 Institute of Quantum Optics and Quantum Information (IQOQI) – Vienna

今週の世界の研究所は、オーストリアの Institute of Quantum Optics and Quantum Information - Vienna (IQOQI-Vienna、ウィーン量子光学および量子情報研究所)です。ここはオーストリア科学アカデミーの下にあり、7つの研究室があります。先週末に紹介したQUESS (Mozi) 衛星を用いた実験などを行っています。Missionは、”theoretical and experimental research on the foundations of quantum physics, quantum information and …

墨子(1) 科学技術の先駆者

金曜日の読書はマキャベリも検討したのですが、「墨子」を先にやることにします。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A2%A8%E5%AD%90 によれば、BC470-BC390ころの戦国時代の人物で、日本語にも「墨守」など入っています。博愛と非攻(専守防衛)を唱えた思想家で、都市防衛の技術を各国に伝えて生業を立てた集団のリーダーのようです。現在では科学技術の先駆者(科祖)とされているそうです。下記wikipedia中国語版には、日本語版で「難解」と片付けられている部分が詳しく書いてあります(てこの原理、原子論、はじめてピンホールカメラを作った 等)。 https…

PET分解酵素の仕組み

PETの加水分解酵素の仕組みはいろいろ調べられているようです(下記はpdf)。 https://febs.onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1111/febs.14612 これを作る細菌Ideonella salaiensisは、堺市のリサイクル工場で京都工繊大の小田教授のグループによって2005年に発見されました(命名は2016)。素晴らしい成果ですね。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%87%E3%82%AA%E3%83%8D%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%82%AB…

機械学習による酵素の改変

昨日のPET加水分解酵素の論文にはアミノ酸の入れ替えの効果を機械学習で調べるのに MutCompute という自作AIを使ったと書いてあります。 https://mutcompute.com/ 3D convolutional neural network で、neighboring chemical microenvironment of amino acids を調べるということですが、なんのことかわかりませんね。 下記論文がアイデアの発端のようです(open accessで無料で読めます。 pdf)。 https://bmcbioinformatics.biomedcentral.com…

PETボトル分解酵素

テキサス大学オースチン校(Univ. Texas Austin) のグループによる https://news.utexas.edu/2022/04/27/plastic-eating-enzyme-could-eliminate-billions-of-tons-of-landfill-waste の元論文を読みました。 https://www.nature.com/articles/s41586-022-04599-z 面白く勉強になりました。欲しい情報をすぐ入手できるのは大学にいる利点ですね。 今日はいくつか一般に有用な豆知識をピックアップします。 ・PET(ポリエチレンテレフタラート)は…

世界の研究所 Biodegradable Research Institute

連休は終わりましたね。私は近場を歩き回って気分転換ができました。 今週の世界の研究所は、米国の”Biodegradable Research Institute” です。 https://bpiworld.org/ ニューヨークの中心部にあり、従業員100名あまり、生分解性プラスチックの認証を与える仕事をしている機関のようです。組織形態がよくわかりませんが、国の機関とのかかわりは書いていません。会員企業になるには$8000=100万円の年会費が必要なようですから、民間(営利企業?)ではないかと思いますが、NIST等公的機関も検定サービスなどには高額のお金を取ります。目の…

佐賀藩精錬方

佐賀藩は肥前藩とも言い、長崎の警護を担当していたことから外国の情報が入手しやすく、国防に危機感を持った10代藩主鍋島直正侯の命により研究所である「精錬方」が設立されました。日本赤十字を設立することとなる佐野常民を中心に、からくり儀右衛門こと田中久重(東芝の創業者の一人)ら、技術者を全国から招聘しました。佐賀藩は35.7万石で、全国の石高が3237万石(明治の最終統計なので直接比較は良くないですが)ですから、当時の日本のGDPの約100分の1です。俗に、藩の数は300諸侯といわれています。江戸時代は財政が独立で、地方分権色が強かったことがわかります(将軍家は全国の石高の半分を持った巨大な藩とみな…

世界の研究所「韮山反射炉」と「佐賀藩精錬方」

今週の世界の研究所は、世界遺産の一部でもある「韮山反射炉」と「佐賀藩精錬方」をとりあげます。 https://www.city.izunokuni.shizuoka.jp/bunka_bunkazai/manabi/bunkazai/hansyaro/ 戦国時代の1543年にポルトガルの脱走船(タイから)の漂着により種子島に鉄砲(火縄銃)が伝来してから、刀鍛冶による国産化(<1年)と武士による使用法研究で鉄砲は全国に普及しましたが、江戸幕府では実戦の必要がなくなり、4家(すぐ2家に減少)の世襲による鉄砲方が鉄砲術を武術の一種として維持しました。ところが、幕末に欧米諸国が来航するようになり、対抗…