Hoffmann — Epilogue and Notes

今週でHoffmann & Schimidt “Old Wine New Flasks - Reflections on Science and Jewish Tradition” は終わりです。あとがきには、この本ができた経緯が書いてありました。 Hoffmann教授がイスラエルのBenGrion University の名誉博士号を授与されて記念講演をしたときに世話をした学長の秘書がもう一人の著者(Schimidt女史)で、第1章(Is nature natural?) の骨子(記念講演の内容紹介と考察)を新聞に書いたのがきっかけだそうです。ユダヤ人の歴史、…

対角線論法、連続体仮説

Georg Cantor(1845-1918)は可算無限(自然数に対応)と不可算無限(実数に対応)の区別を発見しました。その時に使った「対角線論法」は面白いです。その間の「濃度」を持つ無限はない、という問題はCantorの「連続体仮説」と呼ばれますが、「証明も反証もできない問題である」ことがGoedelとCohen(1962)により証明されています。wikipediaをたどっていくだけでもいろいろ勉強できますね。学部1年生のころ、集合論の本を輪講して苦労した覚えがあり、Zermeloの公理系など懐かしいです。改めて思い出すとその本が何をやりたかったのかが(なんとなく)わかりますが、そのころは全…

Boy’s surface という題の純文学

Boy’s surface を調べていたら、その題名の小説があることを知ってびっくりしました。作者は、札幌出身の芥川賞作家で、物理学研究者からの転身のようです。読んでみましたが、「数学(?)を使った架空の装置(?)の擬人化による恋愛小説(?)」で、好き嫌いがあると思います。私は楽しみました。小説の進化の方向はいろいろありますね。 https://www.amazon.co.jp/dp/4150310203 https://en.wikipedia.org/wiki/Toh_EnJoe asymptote 「ア」シムトート 漸近線 allusion ア「りゅー」ジョン ほのめかし、入…

Boy’s Surface

昨日のMathematisch Forschunginstitute Oberwolfach には、メルセデスベンツが寄付した「Boy(’s) Surface ボーイ曲面」のモニュメントがあるそうです。ボーイ曲面は、実射影平面RP2(原点を通る直線の集合)を三次元空間に埋め込んだものとのことです。定義はwikipedia参照。下記動画でわかるでしょうか?板書の動画で三回対称性はxyzの3つから来ていることがわかりますね。 https://www.mfo.de/about-the-institute/history/boy-surface/the-boy-surface-at-obe…

世界の研究所 Mathematisches Forschungsinstitut Oberwolfach

今週の世界の研究所は、しばらくアメリカの実用的な技術が続いたので、ドイツの数学の研究所 Oberwolfach Institute (Mathematisches Forschungsinstitut Oberwolfach; MFO; オーベルヴォルファッハ)を取り上げます。独立した数学の研究機関は少ないです。南西ドイツの小さな町の名前が研究所の名前です。第二次世界大戦末期の1944年9月に設立されました。パリ解放が1944年8月ですから、不安定な時期によく設立できたと思います。数学者が集まってセミナーをしたり、長期間滞在して共同研究したりします。学生や若手は申請により補助を受けられます。教…

Hoffmann ラクダの隊商とタンニン

今週のHoffmannは、第8章 Camel Caravans in Pentagonの続きです。本筋は、米軍兵士の中のユダヤ教徒が戦場で礼拝するときに、羊皮紙に書いた巻物の代わりに写真にとったものを使ってよいか、という問題の解決策で、ラクダの隊商において例外的に使われた規定(通常の儀式には紙に写したものを使ってよい)を準用する、という国防総省の見解があった、というものです。羊皮紙の化学についていろいろ説明があり、面白かったのは、皮をなめすのに使われたtannin (ポリフェノールの一種)の化学的作用で、皮の成分であるコラーゲンをでたらめに架橋して繊維を絡み合わせること、銀塩写真フィルムの工場…

zylon, bullshit jobs

SRI Internationalが発明したZylonは、鉄よりも強い引っ張り強度を持つ合成繊維です。 そのmarcketing rights (商業化権)は SRI International → Dow Chemical → 東洋紡 と移りました(いくらで買ったのでしょうね)。 1998年に防弾チョッキとして販売されましたが、2003年にそれをつけていた警官が撃たれて死亡したため、その劣化が明らかになりました。劣化を調べた修士論文(Texas A&M Univ. 2006年, pdfファイル)が下記です。 http://oaktrust.library.tamu.edu/bitst…

パン屋とビザンチン将軍問題

SRI International はソフトウェア部門も有名です。 Leslie B. Lamportは銀行の決済等に使う分散システムの基本的な手法をいろいろ編み出しています。 名前が面白いのが 1. Lamport’s bakery algorithm パン屋のアルゴリズム 2. Byzantine Generals Problem ビザンチン将軍問題 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%82%B6%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%B3%E5%B0%86%E8%BB%8D%E5%95%8F%E9%A1%8C htt…

川路桜のライトアップ

4月5日まで、奈良の川路桜のライトアップがあったようです。まだ桜の季節には行ったことがないので、いつか行ってみたいです。 川路聖謨は、大分(日田代官所)で生まれ、極貧から勘定奉行になった人で、幕末の危機対応(対ロシア外交が有名)に能力を発揮しました。私が若い時に存在を知って「こんな偉い人が居るのか!」と感動した一人です。和歌の名手で、克明な業務日誌を残しており、3時間しか寝なかったとの逸話があります。「天保の改革」の挫折の後、「奈良奉行」に左遷されましたが、懸案(たまっていた訴訟、民生対策、治安向上など)を数年で片付け、失われていた佐保川沿いの桜の植樹を寺や町の有力者に提案して現在に残る名所を…

世界の研究所 Stanford Research Institute

今週の世界の研究所は、先週出てきたSRI International (Stanford Research Institute、米国カリフォルニア州)を取り上げます。これはスタンフォード大学の付属研究所として設立されたものが独立したもので、1500人の研究者で$500M(550億円)の予算です。一人当たりにすると3700万円(人件費も含む)で、給料は高いのでしょうが、若手の存在も考えると研究費も日本の普通の大学より裕福と言っていいでしょうね。 https://www.sri.com/about-us/ https://en.wikipedia.org/wiki/SRI_Internationa…