ブログ小説「火星の人」

火星と言えば、Andy Weirのブログ小説”The Matian”(2011年)が流行って映画(2015年)にもなりました。私の知り合いの先生が映画の化学的側面の助言をしたと言っていました。 https://www.andyweirauthor.com/books/the-martian-tr この話は、事故で一人で火星に取り残された人が工夫を凝らして生還する話で、技術的細部が面白いです。ネットで連載していて、終わるときには読者がたくさんついたということです(今は上記サイトで数ページしか公開されていません)。日本でいうと「100日ワニ」のような感じでしょうか。 上記サ…

熱電式原子力電池

火星探査車 Perseveranceが積んでいる放射性同位体熱電気転換器(radioisotope thermoelectric generator; RTG)について。RTGは原子力電池(atomic battery)の一つの種類です。 RTGは、長い歴史があります。Apollo(月着陸)やVoyager(太陽系の外に向かう)にも使われました。一時期は心臓ペースメーカーの電源にも使われていました。 二酸化プルトニウムの放射壊変の熱を使って熱電発電をします。下記に発熱体の写真が出ています。けっこう高温に見えます。勝手に赤く発熱する物体はちょっと恐ろしいです。また、プルトニウム金属は化学的に活性…

Perseverance号 火星着陸成功

先週発表された火星探査機 Perseverance の着陸ビデオはいいですね。RoverがSkycraneと一緒にパラシュートで降りて行って、Skycraneは逆噴射しながら紐の長さを調節して軟着陸させています。各段階で拍手をして、最後に喜びを爆発させていますが、「こまめに喜ぶ」のはプレッシャーのかかる仕事をチームでやるときの一つのやり方だと思います。 https://mars.nasa.gov/mars2020/multimedia/videos/?v=461 Perseveranceは、火星での太陽光が弱いので、原子力電池(今はradioisotope power sourceと呼ぶようで…

世界の研究所 Jet Propulsion Laboratory

今週の世界の研究所は、Jet Propulsion Laboratory (JPL, ジェット推進研究所, カリフォルニア州パサデナ)を取り上げます。ここは、カリフォルニア工科大学(CalTech)に付属しており、NASAの研究所として運用されています。私も若い時に行ったことがあります。 https://www.jpl.nasa.gov/ CalTechは、理系の小さい私立大学ですが、アメリカでランキング最上位グループで(年によって変わる)、ノーベル賞もたくさん出ています(40人)。 アメリカは政府委託でいろいろな大学(地方大学含む)に特殊な研究機関を付属させて、大きなお金を継続的につけていま…

Hoffmann  奇跡について

今週のHoffmanは先週のLake Marahの奇跡(苦い水が謎の植物を入れたら甘くなった)に関連して、著者たちが奇跡をどう考えているかの手がかりを探ってみましょう。 個人的には、超伝導や磁性は奇跡的な現象だと思います。また、しばらく前のsuper volunteer の話は一種の奇跡だと思います。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%BE%E7%95%A0%E6%98%A5%E5%A4%AB 1.The authority convinced by the miracle that repeats itself so many times - the …

iPS細胞による人工血小板

献血の話の続きです。赤血球や血小板は核を持たないので人工物で代替できそうに思います。私が子供のころから人工血液の研究は行われてきましたが、最近はiPS細胞から血球を大量生産することを目指したベンチャーが立ち上がっています。 http://www.megakaryon.com/technology/ iPS細胞は、がん化しそうなものを取り除く必要がありますが、分化して核を持たなくなったものはその心配がないと素人目にも思えます。放射線を当ててから使う予定だそうです。献血が過去のものになる日も来そうですが、いつごろでしょうか。 細胞 cell 核 nucleus 「ニュー」クれウス 複数はnucle…

成分献血と連続流遠心分離

最近は献血をしようとすると成分献血を勧められることが多いです。血小板以外を体に戻すのでドナーへの負担が小さく、献血不可能な時間が短くなります(全血400mLで12週間(男性)のところ血小板成分献血だと2週間)。当然遠心分離を使っているはずなので、どういう仕組みなのか調べてみました。 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0000 で、公開番号・公表番号のところに 2004-290354 と入れて出てくるもの(テルモ)が分かりやすいです(出願だけして、特許にはしていないようです。不思議です)。 毎分数千回転の遠心分離機に、連続的に血液を供給して取り出さないといけな…

世界の研究所 NPO形態のPlanetary Science Institute

今週の世界の研究所は、NPO(non-profit organization)形態の民間の研究所 Planetary Science Institute(惑星科学研究所、米国アリゾナ州ツーソン)を取り上げます。 https://psi.edu/about 1972年設立で、NASA等のプロジェクトに関与したり、博士号をとった人の腰掛に使われたりしています。カリフォルニアやボストンなど(さらに外国も)、家族の関係で遠隔で仕事をしている人も複数いて、勤務形態は時代を先取りしていると思います。最初は会社のサポートがありましたが、現在は独立しています。政府の補助金を入れるために会計面を整備して専門のス…

Hoffmann  Lake Marah の奇跡

今週のHoffmannは第4章に飛びます。Bitter Water Runs Sweet という題で、Lake Marah の奇跡に科学的な説明が可能かどうかを議論する43通のe-mail(mailing list)から構成されています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Marah_(Bible) 1章もそうですが、演劇のような手法で書かれており、冗談やe-mail上の喧嘩もあって読ませます。 Lake Marahの話は、苦い水にモーゼ(Moses)が神様に教えられた植物を入れたら甘くなって飲めるようになった、という聖書の記述です。アルカリをクエン酸で中和した、鉄塩…

心が折れた犬の話

就職未定の博士課程学生のころ、落ち込みが激しかった時期がありました。そのとき流行っていた本(いまもいろいろ派生品が出ていますが)に、使う言葉の種類を解析すると人の心理状態が分かり、言葉に気を付けると心理状態を変えられるというのがあり、やってみたらある程度改善しました(また、時間がいちばんの薬でした)。 そのやり方は、言葉を数珠繋ぎ(じゅずつなぎ)に連想して100個並べてみてpositiveかnegativeかの点数をつけて統計解析するというものです。演説や書物から単語を拾って解析すると、昔の人の気質や心理状態を調べることもできるということでした。その時の単語の分け方はpositiveとnega…