熱電式原子力電池

火星探査車 Perseveranceが積んでいる放射性同位体熱電気転換器(radioisotope thermoelectric generator; RTG)について。RTGは原子力電池(atomic battery)の一つの種類です。
RTGは、長い歴史があります。Apollo(月着陸)やVoyager(太陽系の外に向かう)にも使われました。一時期は心臓ペースメーカーの電源にも使われていました。

二酸化プルトニウムの放射壊変の熱を使って熱電発電をします。下記に発熱体の写真が出ています。けっこう高温に見えます。勝手に赤く発熱する物体はちょっと恐ろしいです。また、プルトニウム金属は化学的に活性で、湿気がある空気中では自然発火するとのこと。だからPuO2にしているのですね。核燃料再処理が大変なのは納得できます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Plutonium#Power_and_heat_source
使っている同位体は238(半減期88年)のようです。238Pu 1kgの発熱量は570Wとのこと。
https://en.wikipedia.org/wiki/Isotopes_of_plutonium

有名なdamon core は239Puです。238は臨界の危険は指摘されていませんが、半減期が短い分、放射能は強いとのこと。またα崩壊なので、体に取り込まれた時の近接細胞のDNAへのダメージは大きいです。
https://jazzfr.hatenablog.com/entry/demoncore

プルトニウムは体内に入ったら骨に集まるので放射線障害リスクが高く、最強の毒物(the most toxic substance known to mankind; 環境活動家 Ralph Naderの言葉)と言われていますが、通常の化学的な毒とは単純比較は難しいです。毒性は明らかで、まき散らしたときの影響も計算されていて、絶対に避けなければならないことはわかっています。低暴露の場合の個体への影響については諸説あります。
http://ecolo.org/documents/documents_in_english/plutonium-bernard-cohen.html
ただし、これを書いた人(故Bernard L. Cohen教授)の「低線量被ばく閾値存在説」は、いまの放射線防護教育では使われていないと思います(最近は安全側に考え、非常に低線量でも被ばくの影響はあるとする)。

Perseverance号のRTGは、地球再突入時にも安全なようにミサイルの先端に使われている耐熱セラミックスで保護されていて、二酸化プルトニウムは酸化物で、固まっているので壊れても飛び散らないとのこと。
In addition, the radioisotope fuel is manufactured in a ceramic form (similar to the material in a coffee mug) that resists being broken into fine pieces, reducing the chance that hazardous material could become airborne or ingested.

製作にはマジックハンド等を使うのでしょうね。乳鉢で擦ったり手でこねたりはしたくはありません。
外径は直径64cm, 長さ66cmの円筒形、45kgで110W出るそうです。上記の値と、熱電発電の効率7~9%という値を使うと、そのうちの238Puは2~3kgくらいですね。他の部分は熱電素子と放射能防護でしょう。
https://www.kelk.co.jp/useful/netsuden5.html
これをリチウムイオン電池に充電して、走行時などにはもっとパワーを使うとのこと。

半減期 half time, half life, half life time, half-value period
臨界 criticality クリティ「カ」りティ 核臨界事故 nuclear criticality accident
充放電 charge and discharge
円筒形 cylinder
耐熱 refractory レフ「ラ」クトリ
cilia スィリア まつ毛(複数形、単数はcilium)、細毛、繊毛(せんもう)
眉毛(まゆげ) eyebrow, eye brow 両方の眉毛だとeyebrows; supercilia, 毛1本だとsupercilium
the most telling criticism 最も納得できる批判は
Pu metabolism プルトニウム代謝
die by suffocation 窒息死する サフォ「ケイ」ション 窒息
inhalation 吸入 イン「ハ」レイション
transuranic elements 超ウラン元素
based on the incorrect premise 間違った前提に基づいている
premise 前提、家屋 プレミス
on-premise 敷地内の オンプレミス (コンピュータで、cloud の反対語で、企業内部に設備を持つこと)

The myth of Pu toxicity lingers on and may linger forever. Puの毒性という神話はなかなか消えないし、残り続けるであろう(Bernard L. Cohen、mythと言ってよいかどうかは「?」です)。
toxicity トキ「シ」シティ 毒性
myth ミす 神話
linger 「り」ンガ 名残惜しそうにぐずぐずする

Leave a Comment

Comments

No comments yet. Why don’t you start the discussion?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA