海の青は水分子の振動のオーバートーンによる吸収が作っている

空の青はレイリー散乱で説明できましたが、海の青はどうか、と考えたのがラマンです。レイリーは「空の青が映っているからだ」と説明し定説になっていました。ラマンはイギリスからの帰国の船の中で偏光子(Nicol prism)を入れて空からの反射光を遮断したところ色が濃くなったため、海の色は海水自身から来ていることがわかったという論文を書きました(Nature 108,36(1921) 101年前です)。実験の結果、水分子のOHの伸縮振動のオーバートーン(非調和ポテンシャルによる多重振動量子吸収)が赤色領域(例えば693nm, OH対称伸縮+3×反対称伸縮)にあり、その吸収のため深い水が青く見えることを…

空の青は偏光している

空が青い理由の理論的な説明に成功したのはRayleigh(レイリー)卿です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%88_(%E7%AC%AC3%E4%BB%A3%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%83%BC%E7%94%B7%E7%88%B5) 化学ではRamseyと共同でアルゴンを…

クェーサーで悩みを吹き飛ばそう!

今週は観測可能な宇宙(数百億光年)の三次元地図が作られつつあること、そしてその方法について解説していました。距離はスペクトルの赤方偏移で測定しますが、遠くなので非常に明るい天体が必要です。その一つがクェーサー(Quasar、準星、恒星状天体)です。恒星のように見えるが、年周視差がほとんどない遠距離の謎の天体である、と言うのが私が子供の時の情報でした。今では正体がわかっていて、「活動銀河核 active galactic nucleus, AGN」、すなわち、銀河の中心にある巨大ブラックホールに星々が活発に吸い込まれるとき、物質が渦巻状に加速されて(お風呂の栓を抜いたときが良い例え)お互いの摩擦…

宇宙の3次元地図

1989年に最初に発見されたCfA2 Great Wallや、ラニアケア超銀河団やそれ以上の銀河系の泡状集積構造がわかっているということは、億光年スケールで宇宙の3次元地図ができていることになります。例えば下記は10年前の番組ですがわかりやすいです。Sloan財団の望遠鏡も出てきます。1分10秒くらいからの格納庫が”Sloan Foundation”の響きにふさわしい怪しさでかっこいいです。2.5mで、思ったよりも小さいですね。 https://www.youtube.com/watch?v=xu2-9omdXNc https://www.apo.nmsu.edu/ 超…

宇宙のGreat Wall

銀河の分布にむらがあることは、1989年にハーバード大学の研究者によって発見されました。地球から最も近い構造は、2億光年離れたところにある、厚さ1500万光年幅3億光年、長さ>5億光年の銀河集団がつくる「壁」で、万里の長城にちなんで Great Wall と名付けられました。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%AB その成因は暗黒物質(電磁波や光を発しないので天文学的に観測されない物質、dark matter)の分布のむらであると…

世界の研究所 Sloan Digital Sky Survey

今週の世界の研究所は、Sloan Digital Sky Survey プロジェクトです。これは米国Sloan財団が資金援助して、北米と南米の天文台に専用の望遠鏡を作って深宇宙の構造を調べているものです。 https://www.youtube.com/watch?v=n7vzVcKEqIU 最近宇宙の絵を描く必要があって、星の分布をどのようにすると実体に近いかを調べたらひっかかってきました。今週は日常生活に全く関係ない深宇宙について解説します。調子が出ないときは宇宙のことを考えるのが気分転換におすすめです。 Sloan 財団は、1934年に米国の自動車会社 General Mortorsの社…

地球温暖化係数 global warming potential (GWP)

地球温暖化係数 は英語では global warming potential GWP値というようです。もう一つGTP global temperature potentialというのもあるそうですがモデル依存であまり使われていないそうです。 https://www.epa.gov/ghgemissions/understanding-global-warming-potentials 定義はCO2の1トンの大気放出を1とする値(放出1トンあたり)のようです。その物質による熱輻射の吸収効率と大気にとどまる時間の両方が関係します。一度放出したときに、そのあと20年とか100年とかの影響の総和で比較…

フッ素系冷媒と地球温暖化

昨日のSolvay社のGalden(ガルデン)は、フッ化炭素系の冷媒です。化学的に安定、絶縁性(ガルテンは2.45mmで40kV)などの利点があり、電子産業としては冷媒や熱い気体によるはんだ付けに使われます。 フッ素系冷媒で有名なのは3M社のフロリナート(florinert, シェア50%)とノヴェック(novec シェア20%)、そしてSolvay社のガルデン(シェア30%)です。 https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2204/07/news060.html https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2…

イースター島の文明崩壊

ポリネシアの東端はイースター島(Easter Island, Rapa Nui=ポリネシア語)です。これはチリ領で、最も近い隣の島が1900㎞離れている絶海の孤島と言っていいでしょう。ちなみに、札幌と那覇の距離が2252kmです。チリ本土までの距離は3540kmだそうです。面積は164km2なので、利尻島183km2とほぼ同じ、東京都でいうと大田区+世田谷区+目黒区+品川区+渋谷区=171km2くらいです。現在の人口は6600人とかなり少ないです。モアイ像で有名ですが、18世紀から作られなくなりました。昨日紹介した「文明崩壊」によると、部族間の見栄張り競争でモアイをつくるために木を伐りすぎて、…

ポリネシア人の移動・拡散

ポリネシア人は漢民族の移動に押し出されてBC2500ころに台湾を出発し、BC950年ころにサモア、トンガに到達。さらに東に進み始めるのは紀元1世紀ころ、さらにイースター島に到達したのはAD1200年ころだそうです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E5%B3%B6 移動が停滞していた間なにがおこなわれていたのか、またモアイ像が作られなくなったのはなぜなのか、等の疑問に答えている本が、Jared Diamond (2005) “Collapse: How Socie…