木星を扱ったSF

木星の模様は神秘を感じさせます。そのせいか、SFでも題材になっていて傑作が多いと思います。思いつくものとして: ・さよならジュピター(小松左京 1984)   太陽系に迫るブラックホールの軌道を木星をぶつけて逸らせます。最後にはナスカの地上絵に出てくる謎の超越生命体が介入します。  https://sakyokomatsu.jp/5507/  ・2010 Oddyssey Two (Arther C. Clarke 1982) 木星を大量のMonolithが覆って質量を増加させ恒星にしてしまいます。謎の超越生命体が衛星エウロパの原始生命体を進化させるためです。  https://ja.wiki…

大赤班の色は硫黄の化合物

木星、土星、天王星、海王星はきれいな色をしていますが、何が色を作っているのでしょうか。 https://www.astronomy.com/observing/what-colors-are-the-planets-in-our-solar-system-and-why-are-they-so-different/ 木星の体積は地球の1300倍で、主成分は水素とヘリウムですが、ベージュ~赤色系の面白い色をしています。 水素は無色のはずなので色の原因は微量のアンモニア、アセチレン、水、硫黄等が作る雲の微粒子が原因だと考えられています。 詳しい説明は下記NASAのサイトが参考になります。 http…

大赤班は40年以内に消滅する?

昨日紹介した論文を読んでいきましょう。 https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1029/2024GL108993 ・Cassiniは1665年から1713年まで連続観測し、大きさが変化していることを報告した。 ・1713年から1831年の間は木星の観測記録(手書きの図)に大赤班はない。 ・1831年から現在までは大赤班が消えていた時期はない。 ・1831年には黒い縁取りで白っぽく描かれ、1870-71年に赤色がつけられ、白い領域が取り巻いている。 ・最近大赤班は小さくなっている。1875年の7×10^8km^2から2024年の1…

世界の研究所:Cassini探査機

今週は、木星の大赤班について話題になっている論文をとりあげます。 https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1029/2024GL108993 大赤班を最初に確実に報告した人はG. Cassini(1625-1712)です。この人は土星の輪の観測でも有名で、ESA-NASAの土星探査機Cassiniが1997-2017に運用されました。 https://science.nasa.gov/mission/cassini/ 上記論文は、歴史資料と計算機シミュレーションを組み合わせたもので、大赤班は定常的なものではない、という結論です。現…

ルブアルハリ砂漠に太陽電池を敷き詰めれば世界のエネルギー問題は解決する

サウジアラビアの西側は高原及び山地ですが、南東のほうにあるルブアルハリ砂漠の面積は25万km2で、日本の陸地面積37万km2と近い桁です。 https://www.saiyu.co.jp/special/mideast_asia/oman/midokoro/rub_al_Khali/ ここに太陽電池を敷き詰めたらどのくらい電力がつくれるでしょうか? 地球が受ける太陽光のエネルギーである太陽定数は1366W/m2で、これは大気による散乱や緯度の効果は含んでいません。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E9%99%BD%E5%AE%9A%E6%95%B…

SETI @ home

1999年から2020年までSETI@homeというプロジェクトが動いていました。これは、カリフォルニア大学(UC)バークレー校のBerkley SETI Research Centerが電波望遠鏡の観測データを切り分けて参加するボランティアにインターネットで送り、参加者は自宅のコンピュータのバックグラウンドで解析プログラムを走らせるというものです。 520万人が参加していたそうですが、2020年に一般参加を休止し(hybernate)、たまった解析結果をまとめる作業に入ったということです。 https://en.wikipedia.org/wiki/SETI@home これだけのプロジェクト…

レーザー光の探索 laser SETI

SETI Institute は電波望遠鏡を使って恒星間の電波通信や呼びかけを探していました。レーザー光は遠くまで届くので、レーザー光を使って通信しているのではないか?という説があり、それに基づいてレーザー光を探すLaserSETIというプロジェクトが遂行されています。 https://www.seti.org/laserseti 光の検出器に感度が弱い普通のCCDカメラを使っているというのが不思議なところです。レーザーは単色だから、というのが理由として挙げられています。よくわからないので詳しく見てみました。 https://laserseti.net/ によると、CCDカメラを2つ並べて、t…

Wow! signal

SETI Institute のSETIは Search for ExtraTerrestorial Intelligence で、地球外文明の探索のことです。1984年に設立されたそうですが、その前から電波望遠鏡で地球外文明からの電波を探す研究は行われていました。 有名なのがWow! signalと呼ばれるもので1977年8月15日にオハイオ州立大学で観測された72秒間の強い電波信号です(電波バースト)。周波数1.4204556GHzで、水素由来の1.4203556GHzに比べて高いので、10km/sのドップラーシフト(地球に接近している)があると考えられています。 帯域幅は10kHzで、こ…

超高分解能のエシェル分光器

先週いくつかのタイムラインで流れてきた地球外惑星のwebにはきれいな惑星の絵がついていて、本当にこれが見えたのか?と思ったのですが、どうやら分かったのは質量と密度と恒星からの距離だけのようです。画像は想像図なのでしょう。ちょっとがっかりです。 https://economictimes.indiatimes.com/news/science/nasas-new-finding-126-rare-exoplanets-some-capable-of-supporting-life-pics-here/articleshow/110457971.cms?from=mdr https://www.k…

望遠鏡の補償光学系のしくみ Shack-Hartmann 光学系

Keck望遠鏡やすばる望遠鏡で使われているadaptive optics(適応光学系、補償光学系)は面白いです。光の波面をマイクロレンズの列に通すと、小さい領域に分かれて結像しますが、そのとき光の波面の方向によって焦点位置が横にずれます。それをイメージセンサーで測ると波面の揺らぎがわかるので、反射望遠鏡の鏡も分割しておいて、波面の揺らぎが平行になるようにそれぞれの鏡を動かすという仕組みです。賢いですね。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%AB%E3…