世界の研究所:半導体設計オープンソース Google-Skywarker130

半導体技術者を養成するための教育を考える仕事が降ってきました。電子工学の先生方に教わりながら調べていると、EDA(electronic design automation)という一群のシステムがあり、数社がしのぎを削っている中でオープンソースが存在することを知りました。日本の大学にはEDAの専門家がほとんどいないそうです。 今週はこれについて勉強がてら解説することにします。オープンソースはGoogleがバックアップしています。ただし現在3nmプロセスが最先端ですが、オープンソースでは130nmまでしかサポートされていません。教育用ならばこれで十分か?というところを考えることになります。 最先端…

世界の研究所: 多言語の単語帳データベース CLICS3

今週はバレンタインデーがあるから、というわけではないですが、愛情を含む感情と言語の関係について調べてみようと思います。 https://www.science.org/content/article/what-love-it-depends-which-language-you-speak 上記の解説が紹介している論文は2019年出版で、2500の言語で24の感情がどうあらわされるかをデータ科学的に分析したものです。 https://www.science.org/doi/epdf/10.1126/science.aaw8160 自動翻訳機の最終的な壁は感情の文化による違いになると思います。こ…

世界の研究所:インドの宇宙線観測設備 Grapes-3

今週の世界の研究所は、インドのOoty市(ウーッティ、正式名称はUdakamandalam)にあるTata研究所と日本の大阪市立大学などが運営しているGrapes-3 宇宙線観測設備を取り上げます。先週出た論文によると、宇宙から降り注ぐ超高エネルギーの陽子のエネルギースペクトルに「へこみ」が見つかったとのことです。 https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.132.051002 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%80%E3%82%AB%E3%83%9E%E3%83…

世界の研究所:東北大学・加齢科学研究所とスーパスルフィド

今週は、予告通り硫黄細菌を調べていこうと思います。検索で引っかかって面白かったのは人間を含む生体内に存在する、硫黄が数珠つなぎになった「スーパスルフィド」で、2021年に学会誌の特集号が組まれていてタダで読めます。 https://seikagaku.jbsoc.or.jp/index.html?vol=93&no=5 この特集号は読みごたえがあります。 -S-..-S-S-を含むタンパク質や小分子は2014年に生体内で広範に使われていることがわかったそうで、大発見ですね。この発見は東北大学・加齢科学研究所その他日本国内で行われたようです。先週東北大に出張していたこともあり、今週の研究…

世界の研究所:米3M社

今週は、CO2の電気化学的還元について解説しようと思います。いずれ化石燃料(石油、天然ガス、石炭)は無くなります。これらはエネルギー源としてだけではなく化学品の原料として重要です。 CO2から炭化水素等の化合物をどうやって作るか、勉強しています。今週は、水素等の還元剤を用いるのではなく電気で直接還元する技術を主に見ていきたいです。 注目すべき論文としてちょっと古いですが、3M(スリーエム)社の下記が有名です。これについては2021年8月26日(※)にちょっと紹介していますが、詳細は説明していませんでした。 https://www.science.org/doi/10.1126/science.…

世界の研究所:Dyson Limited

今週の世界の研究所は、英国で始まった掃除機メーカーDyson Limited をとりあげます。研究所は英国、マレーシア、シンガポールにあります。同社は、1991年に設立された元ベンチャーですが、現在は世界的企業で2019年にシンガポールに本社を移転しました。いま私は流体力学のシミュレーションソフトと格闘していますが、職業柄すぐ教え方を考えてしまいます。おそらくサイクロン掃除機の気流の作り方や先端のノズルの形状、羽のない扇風機など、暗算だけでは定量的に説明できない仕組みがあり、シミュレーションを通して明らかにするのが学習者の意欲を生みそうに思います。 今週は創業者のJames Dysonの自伝(…

世界の研究所: European Virus Archive

久しぶりに風邪をひいてしまいました。熱はないのですが声が出ません。今週は、風邪についてどこまでわかっているか調べてみたいと思います。まずは、ウィルスのアーカイブの紹介からです。 https://www.european-virus-archive.com/ は、欧州のウィルス研究のネットワークのようですが、https://www.european-virus-archive.com/evag-portal には500Euro、3500Euroなど値段がついています。これはお金を払えば本物を郵送してくれるということでしょうか。もちろんヒトに病原性がないものと思いますが、ちょっと嫌な感じですね。ウ…

世界の研究所:Telluride Historical Museum

今週の世界の研究所(?)は、Happy Holidays!で少しふざけることを許していただいて、Telluride Historical Museum (米コロラド州)です。 https://www.telluridemuseum.org/ ここはゴールドラッシュで作られた Telluideという町の歴史を説明する観光用の施設です。 tellurideとは、我々化学者は52番元素テルル(Te)を陰イオンとしてもつ化合物、「テルル化物」という意味で使います。町の名前としては粋な命名ですね。 なぜゴールドラッシュの町がテルル化物なのか、ゴールドラッシュはどのくらいの規模の金がとれたのか、何人来て何…

世界の研究所 欧州宇宙機構の探査機 Hera

今週木曜日はふたご座流星群です。今年は晴れていればたくさん見えると予想されています。流星は地球軌道上の岩(”小さい”小惑星)が地球と衝突してできるものです。流星群は、小惑星がたくさん集まっているところを地球が通過するときに見えます。 今週の世界の研究所は、European Space Agency (ESA)の宇宙探査機Heraを取り上げます。 https://www.esa.int/Space_Safety/Hera この探査機のミッションはちょっと込み入っていて、小惑星が地球に衝突するのを回避する計画に関するものです。映画「アルマゲドン Armageddon」(19…

世界の研究所 James Webb Space Telescope

今週と来週は宇宙の話をしようと思います。今週の世界の研究所は、NASAが中心となって建設した James Webb 宇宙望遠鏡(JWST)です。運営はNASAと欧州宇宙機構(ESA)と共同だそうです。 https://webbtelescope.org/home https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%83%E3%83%96%E5%AE%87%E5%AE%99%E6%9C%9B%E9%81%A0%E9%8F%A1 Ja…