世界の研究所:韓国 Institute of Basic Sciences (IBS)

今週の世界の研究所は、韓国Ulsan(蔚山)のInstitute of Basic Science(IBS)をとりあげます。先週のNatureにここの論文が出ていました。1025℃にしたGa-Fe-Co-Si合金にメタンを吹き付けたらダイヤモンドができたとのこと。 液体基板を用いたCVDで、相図で安定なグラファイトでなくてダイヤモンドができたのは確かに新しい発見です。今週と来週ははダイヤモンドの合成について解説してみましょう。 IBSは2011年設立のようです。在籍研究者は600人強です。蔚山は、韓国の南東、釜山の少し北にあり、現代自動車をはじめとする現代財閥(Hyundai)の企業城下町とい…

世界の研究所:IBM Thomas J Watson Research Center と SQL

今週は、データベースの標準として使われているSQLを解説したいと思います。 https://en.wikipedia.org/wiki/SQL SQLとして使われているソフトは4~5種類くらいありますが、IBMの研究者Edgar F. Codd博士による数学の集合論を使ったデータ処理システムの提案を受けてD.D.Chamberlin博士とR.F. Boyce博士がIBM Yorktown Hightsの研究所で開発しました。この研究所は今はThomas J. Watson Research Centerと呼ばれています。この研究所はまだ取り上げていませんでした。江崎玲於奈博士が勤務していたこと…

世界の研究所: Penn State Materials Research Institute と ReaxFF

今週の世界の研究所は The Pennsylvania State University (PennState) の Materials Research Institute を取り上げます。Penn Stateは、昔から材料科学に強く、特に強誘電体の研究では世界的な研究者がたくさんいました。 https://www.mri.psu.edu/mri/facilities-and-centers 現在は2次元物質、強誘電メモリ、誘電体及び強誘電体、環境発電、原子層コーティング、電池及びエネルギー貯蔵デバイス、放射能、バイオデバイス、計算科学、自己組織化有機エレクトロニクス、半導体加工ハブ、社会実…

世界の研究所:日本原子力研究開発機構の高温工学試験研究炉(JAEA-HTTR)

今週の世界の研究所は、日本原子力研究開発機構(JAEA)の高温工学試験研究炉(High Temperature engineering Test Reactor)を取り上げます。 3月28日に冷却停止時の安全性確認試験をして、実証されたというニュースがありました。 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02298/032900009/ セラミックスで覆われた粒状の特殊な核燃料を使うことにより冷却が行われなくても安全性を確保しているそうです。熱媒体は950℃まで加熱されるヘリウムガスです。この熱を使って水素を作るそうですが、どうやるのでしょうか。…

世界の研究所:国連貿易開発会議UNCTADとカカオ不作レポート

今日から新年度です。張り切っていきましょう。が、ちょっと残念なニュースが先週入ってきました。カカオが大生産地(3/4を生産)の西アフリカで不作だそうです。 私のプログラミングの友であるチョコレートが品薄になることはないと思いますが、半年後くらいに価格が上がることが予想されています。 下記のレポートは、国連貿易開発会議(United Nations Conference on Trade and Development、UNCTAD、アンクタッド)のものです。 https://unctad.org/news/chocolate-price-hikes-bittersweet-reason-car…

世界の研究所:スタートアップ インキュベータ Y Combinator

今週は、米国サンフランシスコにあるスタートアップ企業のインキュベータ Y Combinator から始めてスタートアップ関連を解説します。 https://www.ycombinator.com/ https://ja.wikipedia.org/wiki/Y%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%93%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%82%BF_(%E4%BC%81%E6%A5%AD) これは企業として存在しています。ちょっと変わった社名の由来は情報科学の不動点定理(以前紹介したHaskell Curryの定理)ではないかと思います。一人の有名なプログラマーが設立したそう…

世界の研究所:室温超伝導の研究不正の舞台となったロチェスター大学機械工学科

昨年夏、室温超伝導のニュースがありましたが、いろいろな疑義により論文にならないまま否定されつつあります。その他にも高圧下での室温超伝導の報告が4年前と1年前になされ、私も授業の超伝導の回に紹介していましたが、論文は撤回されました。今月、本件は研究不正として雑誌の調査チームから詳細なレポートが出ました。 https://www.nature.com/articles/d41586-024-00716-2 舞台は米国のUniversity of Rochesterの機械工学科です。この大学は卒業生や教員からノーベル賞受賞者13人を出している東海岸の名門私立大学で、経済学(ノーベル賞3人)、レーザー…

世界の研究所: 生成AIのLore Machine社

先週、高名な漫画家が亡くなったニュースが世界をめぐりました。今週は、3月5日に公開されたAI漫画家および動画生成サービスのスタートアップ Lore Machine社 をとりあげます。 https://www.loremachine.world/ https://www.technologyreview.jp/s/331049/i-used-generative-ai-to-turn-my-story-into-a-comic-and-you-can-too/ 会社のyoutubeは下記。 https://www.youtube.com/watch?v=vKIhBcCV_Rg https://w…

世界の研究所 機械系の学会IMechE, IOM3 とトライボロジー

トライボロジーという学問体系があります。摩擦や潤滑を扱う学問で、実用上たいへん重要です。今週末、一般向けの講義をしないといけないので例によって付け焼刃の勉強をしています。摩擦において、分子原子レベルで何が起こるのか、例えば高分子なら分子がちぎれるのか、潤滑剤がダメになるときは何が起こるのか、マッチを擦って火がつくのは摩擦熱の効果だけか、など化学的にも面白い話題がありそうです。 わかりやすい歴史のまとめを見つけました。 https://www.machinerylubrication.com/Read/32382/comprehensive-exploration-of-tribology この…

世界の研究所:国連世界観光機構 (UN Tourism, UN World Tourism Organization)

なにもかも放り出して一人旅に出たいと思うこともありますが、そうもいきません。先週、出張の空港で旅行に出かける学生と会ってうらやましいと思いました。旅をするならば若いうち、というのはよく言ったものです。若い時はしがらみも少ないですし、新しい体験をしたときの感動とその後の影響が違います。 さて、最近我々の町にはたくさんのインバウンド旅行者が来ていますが、彼らは何を見てやってくるのでしょうか。 世界の研究所は、国連機関のUN World Tourism Organization (UNWTO) をとりあげます。今年の1月23日に”UN Tourism”に名前を変えたようです。…