昨年夏、室温超伝導のニュースがありましたが、いろいろな疑義により論文にならないまま否定されつつあります。その他にも高圧下での室温超伝導の報告が4年前と1年前になされ、私も授業の超伝導の回に紹介していましたが、論文は撤回されました。今月、本件は研究不正として雑誌の調査チームから詳細なレポートが出ました。
https://www.nature.com/articles/d41586-024-00716-2
舞台は米国のUniversity of Rochesterの機械工学科です。この大学は卒業生や教員からノーベル賞受賞者13人を出している東海岸の名門私立大学で、経済学(ノーベル賞3人)、レーザー(ノーベル賞2組)、医学(ノーベル賞6人)、音楽(Eastman School of Music)で有名です。日本の故・小柴教授も修士卒業後ここに留学して博士号を得ています。こんな話で取り上げるのは気の毒です。
研究不正は古く(古代)からあり、人間の探究の営みの副作用(ある種の発狂)でおそらく無くすことはできませんが、周囲に大きな迷惑をもたらします。今回の話も教訓的なので、今週はちょっとこの話題に触れてから、もっと夢のある、室温超伝導がもしできたら可能になる応用を考えていきましょう。
※当該研究室の公式web siteが閉鎖されていないのは驚きました。
英語は、https://www.nature.com/articles/d41586-024-00716-2 から。
at ambient temperatures 室温で ambient は、我々が暮らす通常環境の意味で、ambient pressure = 大気圧。
remarkable phenomenon リ「マ」ーカブる フェ「ノ」メノン 注目すべき現象
infamous 「イ」ンファマス 悪名高い famous フェイマス 有名な、の反対語の一つですが、無名ではなく、悪名です。 level 9
unknown, obscure 無名の オブス「キュ」ア は不明瞭な、辺鄙な、世に知られない level 5
anonymous ア「ノ」ニマス 匿名の
“Nature retracted his second paper.” ネーチャー誌は彼の2つ目の論文を撤回した。
“Some researchers say the debacle has caused serious harm.”
debacle ディ「バ」ークる 崩壊、瓦解、暴落、敗走 level 11
misconduct ミス「コ」ンダクト 不正な行い
“In August 2023, he was stripped of his students and laboratories.” 2023年8月、彼は学生と研究室を取り上げられた。
※研究不正の疑いが濃厚になった時点でどこでもこうなります。
“The external experts confirmed that there were ‘data reliablity concerns’ in his papers.” 外部専門家は彼の論文の「データの信頼性に関する懸念」を確認した。
“Nature’s news team verified student claims with corroborating documents.” ネーチャー誌のチームは補強する文書で学生の訴えを確認した。
corroborate コ「ロ」ボレイト 新たな証拠によって強める、確証する There is nothing to corroborate your story. 君の話を裏付けるものは何もない。
“When the students asked him about the stunning new data, they say, he told them he had taken all the resistance and magnetic-susceptibility data before coming to Rochester.”
stunning ス「タ」ニング びっくり仰天させる
resistance 抵抗
magnetic-sustceptibility サスセプティ「ビ」りティ 磁気感受率、帯磁率