世界の研究所: 英国 Cabot Institute for the Environment @ Univ. Bristol

先週は原子力電池に関するニュースをいくつか見ました。1つは英国University of BristolのCabot Institute for the Environment による14Cダイヤモンド電池、もう一つは中国の会社(Betavolt社)の63Ni電池です。後者は今年はじめの発表のようで、14Cの記事をみたら勝手に「おすすめ」されたのではないかと思います。 https://www.bristol.ac.uk/cabot/what-we-do/diamond-batteries/ https://insideevs.com/news/704871/china-betavolt-ato…

世界の研究所: 準天頂衛星「みちびき」

今週の世界の研究所は、準天頂衛星「みちびき」をとりあげます。これは内閣府のwebに一般向けの説明があります。 https://qzss.go.jp/ GPS (global positioning system)は専用の人工衛星4つ以上からの信号を集めてその時間差から自分の位置を割り出す仕組みです。 もともと米軍の衛星の信号を使っていましたが、米軍の衛星からは精度を隠すため100mくらいの誤差を含んだ信号が発信されていて、初期のカーナビの表示は道路を走っていたのに急に川の中に移動したりして面白かった記憶があります。それでは困るので、米軍のほかに各国がGPS用の衛星群を打ち上げています。日本では…

世界の研究所:スウェーデン Höganäs AB

全然関係ないですが、数日前からのシリアの内戦激化とウクライナ停戦交渉がつながっている、という説を聞いて、思わず膝を打ちました。計略ならば兵法(囲魏救趙+借刀殺人の計?)に出てくるような手際(てぎわ)ですが、本当でしょうか。いずれにしても早く平和が来ることを祈ります。 https://www.npr.org/2024/11/30/g-s1-36285/how-a-syrian-rebel-group-pulled-off-its-stunning-seizure-of-aleppo https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%B2%E9%AD%8F%E6%95%91…

世界の研究所:Human Cell Atlasプロジェクト

今週は、最近進展が報告された国際プロジェクト Human Cell Atlas(人体細胞地図)について調べます。 https://www.humancellatlas.org/ Nature誌が最新号で特集を組んでいます。 https://www.nature.com/collections/jccbbdahji 2018年に開始され、資金源はMeta社(旧Facebook)のZackerbergと妻のChanの財団 Chan Zackerberg Initiative が太いところです。 多くの人(現時点で9000人)から細胞の提供を受け、全世界の1700機関の3000人の研究者が協力して人…

世界の研究所:オランダ Wageningen University and Research

先週の月曜日のキノコの話を追いかけようと思って調べていたら、オランダの Wageningen University & Reseach(読み方はワーヘニンゲン)がひっかかりました。 https://www.wur.nl/en/value-creation-cooperation/join-us-on-campus.htm ここは、大学と官民の研究所が合体して運営されているようで、農業分野での大学世界ランキングでは1位です。 https://www.topuniversities.com/university-subject-rankings/agriculture-forestry 「…

世界の研究所:中国科学院昆明植物研究所

先週、高校の出前授業で遠くに行っていました。車窓から見える山がまっ黄色で、針葉樹らしいのに黄色になっているのが不思議でした。1960年代から植林したカラマツだそうです。 今週は、紅葉や落葉について、現在わかっていることを調べてみましょう。冬に葉があっても低温で化学反応は遅い上に凍ったりすると壊れてしまうので、寒いところでは落葉は合理的です。紅葉(黄葉)は、植物もせっかく合成した物質を再組立て可能な形で回収したいのではないかと思います。また、光合成や酵素の活性中心である金属元素も貴重で回収したいのではないでしょうか。分子メカニズムに興味があります。 カラマツについて調べていたら、「イグチ(猪口)…

世界の研究所:英国 Reaction Engines 社の倒産

今週の世界の研究所は、英国のOxford大学発ベンチャー Reaction Engines 社をとりあげます。私は以前からこの会社に注目していましたが、先週倒産してしまいました。 https://ukdefencejournal.org.uk/uk-hypersonic-project-setback-as-reaction-engines-collapses/ https://www.flightglobal.com/aerospace/reaction-engines-to-close-as-cutting-edge-sabre-fails-to-advance/160565.articl…

世界の研究所:米国 Breakthrough Energy

今年も暑い夏が長く続きました。紅葉がきれいですが、雪は例年よりも早く降りそうで(すでに初雪)、秋は短いと思われます。気候関係で、今週はCO2回収に関する動きを紹介しましょう。米国のBreakthrough Energy という団体は、Microsoft 創業者のBill Gatesが設立・支援しており、気候変動対策に関する調査研究や提言を行っています。 https://www.breakthroughenergy.org/ 米国エネルギー省が1.8B$=2700億円規模で大規模に建設を助成している直接CO2大気回収(direct air capture, DAC)について、需要不足のため失速が…

世界の研究所:Richard E. Bellmanが偉大な方程式を発見した米国Rand研究所

今週は、Bellman方程式の話をしましょう。今年のノーベル賞のAI関連でも多用されている重要概念の一つです。囲碁や将棋などの棋譜を大量に解析して、与えられた局面での最善手を求めたり、ある局面での勝率を計算したりできます。テレビ中継などで「AIの判定する勝率」で出てくる値ですね。これは、1953年にRichard E.Bellmanが33才で発見した、勝利につながる手の必要条件を与える漸化式です。先々週お休みをいただいているとき、Bellman方程式と解析力学のHamilton-Jacobi方程式との類似性、量子力学との関連を指摘する本を読みました。そのあたりを解説できるといいと思います。 B…

世界の研究所:マイクロRNAデータベース

ここ3年程、「今日の英語」でどこよりも速いノーベル賞解説を目指していましたが、今年は都合により遅くなりました。申し訳ありません。物理学賞と化学賞のAIの話は、私の大学院集中講義で話していますのでそれはまたの機会にして、今週は医学生理学賞のマイクロDNA(miRNA)の話を見ていきましょう。 データベースができていますね。英マンチェスター大学の研究室が運営しているようです。 https://www.mirbase.org/ 日本語解説としては https://www.cosmobio.co.jp/support/technology/a/microrna.asp https://ja.wikip…