ここ3年程、「今日の英語」でどこよりも速いノーベル賞解説を目指していましたが、今年は都合により遅くなりました。申し訳ありません。物理学賞と化学賞のAIの話は、私の大学院集中講義で話していますのでそれはまたの機会にして、今週は医学生理学賞のマイクロDNA(miRNA)の話を見ていきましょう。
データベースができていますね。英マンチェスター大学の研究室が運営しているようです。
https://www.mirbase.org/
日本語解説としては
https://www.cosmobio.co.jp/support/technology/a/microrna.asp
https://ja.wikipedia.org/wiki/MiRNA
があります。長さ20-25塩基対のRNAの断片で、mRNA(メッセンジャーRNA)にくっついてタンパク質への翻訳を阻害したり促進したりして制御しています。
以前聞いた話では、タンパク質合成による生体反応は20分くらいかかるそうです。マイクロRNAはその初期段階を制御していることになります。
1つのマイクロRNAは複数のmRNAの制御にかかわっており、逆に1つのmRNAは複数のマイクロRNAにより制御されているそうです。
Microsoft copilot に聞いてみたら、これまでに50000以上のmiRNAが見つかっており、人間についても1000を超えたとのことです。
miRNAによる膨大な制御ネットワークが存在しているということですね。ガン、心臓病、アル中など多くの疾病にかかわっていることが最近分かったので、今年のノーベル賞になったということでしょう。
今後この制御ネットワークの構造が解かれるでしょうが、人間が覚えられるような単純な構造ではないでしょう。人間が法則性なく覚えられるのは世界史や日本史の教科書+参考書くらいの量で、それも人間的な物語がないと無理です。それなら化学は?と言われると、私には法則も物語もあるように思えますが、量はもっと多いかもしれませんね。miRNAによる制御系の構造はそれらよりもずっと無味乾燥で、量がひたすら多いものだと想像します。語学に対応する記憶量くらいかも知れません。
使い方としては、各miRNAの血中や組織液中の濃度を測定してAIにどうすればいいか聞くことになるでしょう。当然miRNA自身も薬になるでしょうし、システムとしての分子か装置(AとBが両方出ていたらCを放出する、など、組織内に埋め込む超小型装置??)も有効だと思います。データサイエンスの応用として面白いビジネスができそうに思いますが、巨大AI企業をはじめとして、すでにいろいろ考えているでしょうね。原因不明の難病のいくつかにもmiRNAのネットワークが関わっているような予感がします。さらに、老化が止められると面白いのですが…
英語は https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2024/advanced-information/ から
The Nobel prize in physiology or medicine ノーベル医学生理学賞
post-transcriptional DNA翻訳後の
gene regulation 遺伝子制御
evolution 進化
C. elegance 線虫の一種で、分子生物学の研究でよく使われる (土の中にいる1mmくらいの小さいひも状の生物)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%9A%E5%BD%A2%E5%8B%95%E7%89%A9
nematode 「ネ」マトード 線虫
”The discovery by Ambros and Ruvkun was completely unexpected and unveiled an evolutionarily conserved post-transcriptional regulatory mechanism mediated by microRNAs, with critical roles in animal development and for adult tissue function.”
unveil ヴェールを剥がす、明らかにする
development 発達 (この場合は幼体が大人になること)
tissue 組織
”The next breakthrough came when the Ruvkun lab found that the let-7 gene, unlike lin-4, was evolutionarily conserved across a wide range of animals. ”
conserved 保存される
across a wide range of animals 多くの動物に渡って ※ このacrossは自然に使えるようにしたいです。