世界の研究所 ユング研究所

今週の世界の研究所は、スイスの心理学研究所 C.G. Jung Institute (ユング研究所)を取り上げます。 https://en.wikipedia.org/wiki/C._G._Jung_Institute,_Z%C3%BCrich C.G. Jung(1875-1961)はS.Freud(フロイト, 1856-1939)の後から分析心理学を作った人です。最初はフロイトと共同研究をしていましたが、途中で袂(たもと)を分かっています。Jung研究所は、Jung自身が設立して所長をしていました。日本からも有名な学者が留学しています。専門家には怒られてしまうかもしれませんが、私の理解によ…

世界の研究所 島根大学次世代たたら協創センター

今週の世界の研究所は、ローカルですが、島根大学次世代たたら協創センターを取り上げます。 所長をOxford大学から招き(兼任)、近くに研究所(冶金研究所)がある日立金属(株)の研究者を教授(兼任)としている新しいタイプの研究所です。最新鋭の電子顕微鏡を数台購入しています(収差補正はついていませんが)。大学の先生方の力を生かすうまい仕掛けだと思います。 https://www.youtube.com/watch?v=41gqMD8wl_M 動画8分51秒から、Oxford大学では教授一人1.5億円/年、最低でも一人3000万円/年を企業から集めているとの発言があり、面白かったです。日本では企業か…

世界の研究所 VirgoとKAGRA

今週の世界の研究所は、LIGOの仲間の重力波観測施設であるVIRGO(イタリア)とKAGRA(日本)を取り上げます。 LIGOは米国の北西と南東の2つの観測所がありますが、3つ以上あると方向と距離の両方を決められるので、国際的に連携をとって共同観測が行われています。インドにも作ろうとしているようです。 ヨーロッパのものはVIGROといって、イタリアのピサ近郊にあります。virgoは略語ではなく「おとめ座」から名付けられています。下記は感度やノイズ対策についての説明が詳しいです。10~10000Hzの重力波に対して感度を持つように作られているそうです。完全な消光条件からわずかにずらしているそうで…

LIGOの仕組み(1)

LIGOは2つの直交する4kmの光路の長さの変化を10^-4Åの精度で測定できます。基本的には、光の干渉による強度変化としてモニターします。光としては、Nd系のレーザー1064nmの光を使います。10^-4Åは波長の10-^8倍なので、さすがに強度変化から光路長の変化を測定するのは無理です。どうやっているかというと、マイケルソン干渉計の光路中にファブリーペロー干渉計をいれて、光を光路内で300回往復させたものを干渉に使っています。したがって、光路は4kmではなく、その300倍の1200kmに相当します。これで3x10^-6の強度変化を測定することになりました。干渉により検出光が完全に弱めあった…

世界の研究所 LIGO (Laser Interferometer Gravitational-wave Observatory)

今週の世界の研究所は、重力波観測施設である LIGO (らイゴ、Laser Interferometer Gravitational-wave Observatory)です。技術的に面白い大ネタなので、2週間にわたって解説する予定です。 LIGOは、米国の北(ワシントン州)と南(ルイジアナ州)の2か所に設置された特殊なマイケルソン干渉計で、CaltechとMITによって運営されています。ブラックホール連星系の崩壊に伴う重力波の検出に成功した(2015)ため、2017年にCaltechのB.C.Barish(LIGOプロジェクト運営)、K.S. Thorne(一般相対論の理論家で何を探したらいい…

世界の研究所 大阪大学接合科学研究所

今週の世界の研究所は、大阪大学接合科学研究所です。ここは国立の溶接工学の研究所の位置づけで、1972年に全国共同利用施設の大阪大学溶接工学研究所として設立されたものです。吹田キャンパスの産業科学研究所の隣にあります。 http://www.jwri.osaka-u.ac.jp/index.jsp 溶接については20年余で研究が十分進んだらしく、1996年に「接合科学研究所」に名称が変更されました。 現在は、溶接以外に、プラズマ溶射(例:フライパンのコーティング)、金属と無機材料の接合(真空装置の窓などに使われる)、導電性インク、金属・セラミックスの3Dプリンタなどの研究もおこなわれています。そ…

世界の研究所 Mathematisches Forschungsinstitut Oberwolfach

今週の世界の研究所は、しばらくアメリカの実用的な技術が続いたので、ドイツの数学の研究所 Oberwolfach Institute (Mathematisches Forschungsinstitut Oberwolfach; MFO; オーベルヴォルファッハ)を取り上げます。独立した数学の研究機関は少ないです。南西ドイツの小さな町の名前が研究所の名前です。第二次世界大戦末期の1944年9月に設立されました。パリ解放が1944年8月ですから、不安定な時期によく設立できたと思います。数学者が集まってセミナーをしたり、長期間滞在して共同研究したりします。学生や若手は申請により補助を受けられます。教…

世界の研究所 Stanford Research Institute

今週の世界の研究所は、先週出てきたSRI International (Stanford Research Institute、米国カリフォルニア州)を取り上げます。これはスタンフォード大学の付属研究所として設立されたものが独立したもので、1500人の研究者で$500M(550億円)の予算です。一人当たりにすると3700万円(人件費も含む)で、給料は高いのでしょうが、若手の存在も考えると研究費も日本の普通の大学より裕福と言っていいでしょうね。 https://www.sri.com/about-us/ https://en.wikipedia.org/wiki/SRI_Internationa…

世界の研究所 (Xerox) Palo Alto Research Center

今週の世界の研究所は、Palo Alto Research Center (PARC, 米国カリフォルニア州パロアルト)を取り上げます。 もともとは1970年にXEROX社(コピーの発明からできた企業です)が情報科学の応用展開のために設立しました。現在はXEROXの完全子会社だが独立して顧客の依頼で研究開発を行っているそうです。XEROX本業に近いレーザープリンターの他に、コンピューターマウス(Stanford Research Instituteが発明したものを取り入れた)、デスクトップの概念の開発で有名です。これらはAltoというパソコンのモデルに組み込まれており、それを見学したBill …

世界の研究所 非営利団体 Internet Archive

今週の世界の研究所は、目先を変えて、Wayback Machineを運営する非営利団体 Internet Archive(アメリカ、San Francisco)を取り上げます。Wayback Machine はインターネットを経時的に保存するという野心的なプロジェクトです。1996年に開始されました。保存してほしくない場合は、その旨のタグを埋め込むか、archiveからの削除依頼を申し出ればいいそうです。 現在 475 billion webpagesを保存しており、容量は70PB(ペタバイト=10^15)で、増え続けています。保存には磁気媒体を使っていると思います。従業員168人、年間資金2…