珪藻のきれいな殻はアモルファスSiO2

珪藻はSiO2の殻を持っていて、有機物を除去するときれいな顕微鏡用の標本ができます。販売している人がいます。 https://oshihaku.jp/article/14553857 ショップがありました。安いのは1000円弱から、高いのは10万円超ですね。10~100μmの珪藻や放散虫を手で並べているのだと思います。すごく器用な人ですね。 私の性格だと買っても1年後には行方不明になりそうですが、ゆっくり観察したら気晴らしになりそうです。 https://micro.sakura.ne.jp/mws/J_2023.htm 珪藻は単細胞生物だそうです。殻の複雑な構造の理由が知りたいですね。 通常…

CAR-T細胞療法が効かない場合

T細胞の攻撃対象である抗原対応性を外から編集したCAR-T細胞療法は万能なわけではなく、効かない場合もあります。よくまとまった下記の論文を見つけました。 https://jhoonline.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13045-021-01209-9 一つは、CAR-T細胞が標的とするMHC-Iを隠している(抗原消失)がん細胞があると対応できません。これは胎児がごく小さいときに母親の免疫系に攻撃されないようにMHC-Iを隠す方法が遺伝子に組み込まれているためのようです。がん細胞はいろいろな変異をおこして免疫系をかいくぐったものが生き残るので、MHC…

キラーT細胞の武器(2):細胞の自爆スイッチ fasとその構造

キラーT細胞の2つ目の武器は細胞の自爆スイッチを押すタンパクfasL(fas ligand)です。fasはファスと読むみたいです。昨日説明したように、細胞があるレベル以上壊れると、DNAや部品を細分化してから細胞膜を破る過程であるアポトーシスが起りますが、それを外部刺激のみで起こす機能(=自爆スイッチ)が正常な細胞にはそなわっています。それが細胞膜にあるfasタンパク(fas receptor, fasRともいう)で、そこにキラーT細胞が放出するfasLがくっつくと動作します。 fasの構造は下記。 https://www.rcsb.org/3d-view/3THM/1 fasL(下記Deco…

キラーT細胞の武器(1) perforin + granzyme

キラーT細胞(細胞障害性T細胞、cytotoxic T cell)の武器は2種類あります。1つは2組のタンパク質で、perforin とgranzymeです。もう一つはfasというタンパク質です。今日は1つ目を説明します。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AA%E3%83%B3 perforinはT細胞の中では「顆粒」という小胞にしまわれていて、顆粒が細胞膜まで移動して(←ここは推測)外部に放出されます。おそらくこの段階では標的細胞はごく近くにいて、perforinは細胞膜にくっつ…

世界の研究所:宗教の研究機関は膨大にあるので、病原体と哲学について考えました

先週から引き続いてCAR-T細胞療法について見ていきますが、今日はちょっと趣向を変えて、病原体の考察からいくつか哲学的?論点を引き出してみましょう。 (1)「がん細胞」「耐性菌」等の脅威となる病原体はヒトの免疫系をかいくぐったり抗生物質が効かなかったりします。特にがん細胞は遺伝子変異が蓄積してくると遺伝子の変化(進化)が速くなり、免疫系や抗がん剤などが対応できないものだけが生き残ります。早期発見して遺伝子変異が蓄積する前に一気に根絶することが望ましいです。細菌の耐性菌も同じで、抗生物質は処方されたものを飲み切るように言われるのは、生き残りを作らないためです。逆に、「半殺し」くらいの辛い目にあう…

免疫における自他の区別はMHCで行い、細胞の識別はMHCがくっつけている8~10アミノ酸のペプチドで行う

ヒトの細胞の表面には、自他を区別したり免疫細胞と情報をやり取りするために糖タンパクがびっしり生えているようです。それをMHC、別名HLAと呼びます。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%BB%E8%A6%81%E7%B5%84%E7%B9%94%E9%81%A9%E5%90%88%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90%E8%A4%87%E5%90%88%E4%BD%93 MHC分子には多くの型(少なくとも2万余)があり、1つの個体は父母から受け継いだ多数の型を同時に発現しているとのことです。免疫細胞はこの型の分布で自他を識別しており、臓器移…

CAR-T細胞療法

CAR-T細胞療法は現在第3世代のようです。 https://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/research/car-t-cells がん細胞の表面にある情報伝達部位(←これが何なのかは明日説明します)に結合する抗体医薬品は分子標的薬として実用化されていますが、高価なモノクローナル抗体を何回も投与しないといけません。患者自身のキラーT細胞にがん細胞を認識する抗体をくっつけてしまえばたくさん攻撃できるだろう、というのが基本です。キラーT細胞は適切な信号をもらうと攻撃モードになります。上記記事にあるように、CAR-T細胞はがん細胞の表面を認識する抗体と…

T細胞リンパ球

T細胞については授業で習っていると思いますが、復習しておきましょう。 ・大きさは2μmくらい。多数の突起を持つ球体。下記の右の青いやつ。  https://en.wikipedia.org/wiki/T_cell#/media/File:Red_White_Blood_cells.jpg ・免疫を司る。リンパ球の一種。同じ外見で司令塔としての役割をもつもの(ヘルパーT細胞と制御T細胞)と攻撃者としての役割をもつもの(キラーT細胞)の二種類に分けられる。 ・Tはthymus(胸腺、発音は「さ」イムス)の略で、胸腺で自他認識能を教育(選別)されるため、胸腺に大量にいることが発見されたことから。 ・…

世界の研究所:Center of Cellular Immunotherapy, University of Pennsylvania, USA

先週の国会で高額医療費免除制度の見直しについて議論があったようです。net情報しかみていませんが、首相が関連してCAR-T細胞治療に言及したとのことで、いよいよこの治療法が本格的に導入されるということなのでしょう。CAR-T細胞治療はがんの免疫治療法の一つで、患者から取り出したキラーT細胞を遺伝子改変して、がんを攻撃できるようにしてから数百万個に増殖させて患者に戻す方法です。免疫系の個性やがんの個性の条件を満たせば劇的に効くことがわかっているため、ヒトの平均寿命を数年以上延ばせるのではないかと個人的に予想します。がんの種類は少なくとも数千以上あるようなので、すべてに対応できるまでには相当時間が…

魚が音の方向を知るしくみ

Charité (ベルリン医科大学病院)は教育機関でもあるので、医学と直接関係ない研究者もいるようです。プレスリリースに、魚の聴覚の仕組みについての論文を紹介するものがありました。 https://www.charite.de/en/service/press_reports/artikel/detail/how_fish_can_hear_in_stereo 論文はnatureにでています。 https://www.nature.com/articles/s41586-024-07507-9 人間の場合は右耳と左耳の信号の時間差により音源の方向を認識します。空気中の音速は340m/sなのに対…