免疫における自他の区別はMHCで行い、細胞の識別はMHCがくっつけている8~10アミノ酸のペプチドで行う

ヒトの細胞の表面には、自他を区別したり免疫細胞と情報をやり取りするために糖タンパクがびっしり生えているようです。それをMHC、別名HLAと呼びます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%BB%E8%A6%81%E7%B5%84%E7%B9%94%E9%81%A9%E5%90%88%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90%E8%A4%87%E5%90%88%E4%BD%93
MHC分子には多くの型(少なくとも2万余)があり、1つの個体は父母から受け継いだ多数の型を同時に発現しているとのことです。免疫細胞はこの型の分布で自他を識別しており、臓器移植の際の拒絶反応の原因になります。血液の場合は白血球だけなのでABOとRHの血液型ですが、他の臓器の場合は型の種類がずっと多いため、自分に適合した移植ドナーを探すのがたいへんです。
ややこしいのは、MHC分子には溝があり、そこに他の分子をくっつけているということです。MHCクラスIという分子は細胞自身の産物をくっつけているため、ウィルス感染や暴走した細胞(がん細胞)への免疫反応に関連します。MHCクラスIIという分子は白血球がもっており、貪食・分解した細菌等の外来性の抗原をくっつけます。本来のT細胞は自己の免疫細胞(B細胞、樹状細胞)のMHC分子がくっつけている分子にしか免疫応答しませんが、CAR-T細胞はがん細胞のもつ抗原(患者から取り出す)を直接認識するように作るようです。
実際のMHC分子は下記のような構造をしており、くっつけている抗原分子(抗原決定基)は8~10アミノ酸のペプチド(下記の例はILGKFLHRL)だそうです。こんな小さい断片でキラーT細胞の攻撃ボタンを押して免疫反応が起こせるのは驚きです。
https://www.rcsb.org/3d-view/5MEO/1
MHC分子とその相手となるT細胞側受容体(T-Cell Receptor, TCR)とどのくらい強く相互作用するのか、計算例があるかどうか調べたいところです。
TCRの構造は2019年の報告がデータベースに載っていました。この論文(Nature573,546(2019))の引用を追っかければ計算されているかどうかわかりますね。面白そうですが、誰かがやっているでしょう。
https://www.rcsb.org/3d-view/6JXR/1
MHCについての説明は下記を参考にしました。
https://en.wikipedia.org/wiki/Major_histocompatibility_complex
https://en.wikipedia.org/wiki/MHC_class_I
※ キラーT細胞の話は、予定通り来週に続きます。抗原決定基(8~10アミノ酸からなるペプチド)は予想よりも小さいですね。細胞を破壊する攻撃に使う分子が気になります。

英語は https://en.wikipedia.org/wiki/Major_histocompatibility_complex から。
”These genes are highly polymorphic, 19031 alleles of class I HLA, and 7183 of class II HLA are deposited for human in the IMGT database.”
gene ジーン 遺伝子
polymorphic 多型
alleles 配座
HLA (human leukocyte antigen ヒト白血球抗原) = MHC (major histocompatibility complex 主要組織適合性複合体)
”MHC class I molecules are expressed in all nucleated cells and also in platelets—in essence all cells but red blood cells.”
be expressed 発現している
nucleated cells 有核細胞
platelets 血小板
red blood cells = erithrocyte 赤血球。核がない。
“It presents epitopes to killer T cells, also called cytotoxic T lymphocytes (CTLs).”
epitope エピトープ = 抗原決定基
” A CTL expresses CD8 receptors, in addition to T-cell receptors (TCRs). When a CTL’s CD8 receptor docks to a MHC class I molecule, if the CTL’s TCR fits the epitope within the MHC class I molecule, the CTL triggers the cell to undergo programmed cell death by apoptosis.” キラーT細胞側のCD8受容体がMHCクラスI分子に適合したとき(←自分の細胞であることを認識)、T細胞受容体が同時に抗原決定基に適合する(←その細胞がキラーT細胞を呼び出したB細胞や樹状細胞にすでに分解されていてヤバい細胞である)とキラーT細胞は相手の細胞のアポトーシスを起動する(→自爆ボタンを押す)。

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