魚が音の方向を知るしくみ

Charité (ベルリン医科大学病院)は教育機関でもあるので、医学と直接関係ない研究者もいるようです。プレスリリースに、魚の聴覚の仕組みについての論文を紹介するものがありました。
https://www.charite.de/en/service/press_reports/artikel/detail/how_fish_can_hear_in_stereo
論文はnatureにでています。
https://www.nature.com/articles/s41586-024-07507-9
人間の場合は右耳と左耳の信号の時間差により音源の方向を認識します。空気中の音速は340m/sなのに対し、水中の音速は1500m/sなので、小さい魚の場合は時間差が短すぎて同じ仕組みでは難しいのではないかと考えられ、1970年代からいくつかのモデルが提案されていました。今回、音波発生源を工夫した実験と、透明な魚を用いた音の感覚器のレーザー顕微鏡観察で詳細が明らかになりました。
実験した小さい淡水魚は音の反対側にパっと逃げる驚愕反射と呼ばれる習性を持つため、動きを追うことで音源がどちらと認識しているかが観察できます。白魚のような半透明の魚なので、レーザー顕微鏡で聴覚器官の振動をリアルタイムで見ることができ、モデルと比較しました。音源は左右の水中スピーカーで、同位相で音をだすと圧力が周期的に変動し、逆位相だと左右に水が周期的に移動します。これによって圧力と水の運動量のどちらに対応しているかを切り分けることができます。X線CTも合わせた解析の結果、魚は聴覚器官内に運動を感知する柔毛につながった耳石と浮袋をもち、耳石が水の運動量の振動、浮袋が圧力を測定していて、それにより音源の位置を認識していることがわかりました。
透明な試料を使うとよい、というのは昨年のノーベル賞で線虫を使った実験で紹介しましたが、知りたいことがあるとき、楽な実験系を選ぶのは重要です。知りたい本質や実現したい機能がなくて、楽をすることばかり考えるのは本末転倒ですが。

英語はこの論文から。
directional hearing 方向性聴覚
terrestrial vertebrates 陸生脊椎動物
interaural cues 音の間の合図→ 音の時間差という意味でしょう
cue キュー = 1. an action or event that is a signal for something else to happen きっかけ 2. a word, phrase or action in a play that is a signal for the next person to speak or act 演劇で、合図 5. a long straight wodden stick used for hitting balls in billiards.
aural オーラル 聴覚の
oral オーラル 口頭の  発音は同じです。
“Whether it is the song of a whale, the rustling of a mouse or the quiet sneaking of a cat, when sound emanates from a source, it travels through the surrounding medium as an oscillation of motion and pressure. The ability to detect its direction turns hearing into a spatial sense that is pivotal for survival.”
rustling 木の葉などがさらさらいうこと
sneaking こそこそする、うろうろする
emanate 「エ」マネイト 発する level 10
spatial ス「ペ」イシャる 空間の < space cf. special スペシャル 特別な 発音はちょっと違います。
pivotal 支点の、きわめて重要な pivot 支点

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