zylon, bullshit jobs

SRI Internationalが発明したZylonは、鉄よりも強い引っ張り強度を持つ合成繊維です。 そのmarcketing rights (商業化権)は SRI International → Dow Chemical → 東洋紡 と移りました(いくらで買ったのでしょうね)。 1998年に防弾チョッキとして販売されましたが、2003年にそれをつけていた警官が撃たれて死亡したため、その劣化が明らかになりました。劣化を調べた修士論文(Texas A&M Univ. 2006年, pdfファイル)が下記です。 http://oaktrust.library.tamu.edu/bitst…

パン屋とビザンチン将軍問題

SRI International はソフトウェア部門も有名です。 Leslie B. Lamportは銀行の決済等に使う分散システムの基本的な手法をいろいろ編み出しています。 名前が面白いのが 1. Lamport’s bakery algorithm パン屋のアルゴリズム 2. Byzantine Generals Problem ビザンチン将軍問題 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%82%B6%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%B3%E5%B0%86%E8%BB%8D%E5%95%8F%E9%A1%8C htt…

Hoffmann 羊皮紙

今週のHoffmannは、第8章Camel Caravan to Pentagonからです。Hoffman教授はポーランドとウクライナの間の地帯で生まれ、5歳の時に収容所に送られましたが、うまく脱出できてかくまわれたそうです。町の8000人のユダヤ人のうち生き残ったのは150人で、父親も収容所で亡くしています。話は、米軍の戦地でのユダヤ教の礼拝で羊皮紙に書いたものが使えないが写真でよいか、という話からいろいろ脱線しています。 pogrom 「ポウ」グロム 組織的な虐殺(レベル22) smuggle 密輸入する、秘密に持ち込む、隠す スマグル(レベル9) smuggler 密輸人 pious パ…

Hoffmann 藍の染め方

金曜日は「今週のHoffmann」と称して、Woodward-Hoffmann則の理論家 Roald Hoffmannが著者の一人である Old Wine New Flaskから面白そうなところを引用しています。この本は、ユダヤの伝統と化学のエピソードを混ぜて解説した独特の本で、何か役に立つ文化的側面がないかと思って読んでいます(ここで取り上げるのは、単語が難しいので自分では面倒で読まないからです)。2000年以上の間、時代に合わせて議論を尽くしそれを記録する民族性について私の認識は深まりました。最近の「サピエンス全史」(Y.N. Harari著)の著者はイスラエルの人ですが、訳者による下記の…

渡り鳥の方位磁石

渡り鳥や伝書鳩が磁場を感じる機構は興味深いです。視界が悪い時に方向を定めるために地球磁場を使っているのは間違いないようです。 https://en.wikipedia.org/wiki/Magnetoreception そのしくみについては、渡り鳥はマグネタイト(磁鉄鉱、Fe3O4)を内包するタンパク質であるフェリチンなどの強磁性体を使っているのではなくて、分子の光励起→電荷移動によって生じたラジカル対が磁場に敏感なことを使っているとされています。地球磁場による磁気エネルギーは非常に小さく、室温ではほぼ無視できますが、2つのスピンの向き(一重項か三重項か)は化学反応に影響を与えます(例:水素原…

AIによるタンパク質立体構造の予測

ちょっと前の話ですが、アミノ酸配列からタンパク質の立体構造を計算機で予測するめどが立ったというニュースがありました。 https://deepmind.com/blog/article/AlphaFold-Using-AI-for-scientific-discovery https://www.technologyreview.com/2020/11/30/1012712/deepmind-protein-folding-ai-solved-biology-science-drugs-disease/ https://www.nature.com/articles/s41586-019-19…

ヒンデンブルク号の爆発

久しぶりに事故の分析です。講義で水素分子の回転ラマンを使って量子統計(フェルミオンとボゾン)を説明しました。雑談用に、ヒンデンブルク号の爆発について調べたところ、wikipediaは動画付きでした。web講義でリンクのみ示しましたが、見た学生には衝撃があったようです(感想から)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Hindenburg_disaster_newsreel_footage 最近の説として: ・Alの船体にAlと酸化鉄を混ぜた塗料を使っていて、静電気による火花(static spark)でテルミット反応が起きたという説(焼夷性塗装仮説 incendiary…

SMILES

IBM roboRXNでは、分子の記述にSMILES(simplified molecular-input line-entry system)という記法を使っています。これは、分子中の原子のつながり方を1次元の文字列で記述する方法で、1980年代に開発されました。現在、大部分はオープンソースですが(”RDKit”で探してみてください)、SMILESの考案者 David Weiningerに関しては追悼文が専門誌にあり、web公開されています。それによると、同氏は大学の人ではなく、会社→大学院で博士→自治体で環境中の化学物質の毒性を調べる→毒性データベースのためにSMI…

受託合成サービス

ロボットを使わない委託合成サービス(人間が実験する)は、合成法の文献が分かっていれば1化合物100万円くらいからやってくれる会社があります。 https://www.ipros.jp/cg1/%E5%90%88%E6%88%90%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9/ また、ペプチドなどは大学のバイオの研究室も外に委託することが多いと聞きます。 https://www.peptide.co.jp/custom/peptide_synthesis 一昨年の地震の停電で、せっかく購入したペプチドが全部だめになったと嘆いていた先生がいました。誰も補償してくれなかった…

ゼオライト(3)

天然ゼオライトの処理工場の動画です。建材に使うだけあって、すごい量ですね。 https://www.youtube.com/watch?v=98IcrplgRB4 人工ゼオライトは有機界面活性剤のミセルで構造が決まりますが、天然ゼオライトの成因は不思議です。火山灰が湖に沈殿してから再加熱され、アルカリの作用の下、水熱反応が起こってできるといわれています。 https://www.mdpi.com/2076-3417/8/4/608 によると、粘土鉱物カオリンを600℃で焼いてからNaOH 5M水溶液とモル比8:1で混ぜて80℃24時間でzeolite A (4A, LTA)ができたとのこと。S…