サクラの挿し木とナフチルアセトアミド

サクラは挿し木で増やしやすい、とのことでやり方を調べてみました。 https://agripick.com/1683 緑色の若い枝を使う+発根促進剤「ルートン」を使う、のだそうです。 ルートン rootone は商品名で、物質としては1-naphtylacetoamide ナフチルアセトアミドです。 下記動画6分半くらいで手で触っているので、人体には無害なのでしょうか(->高濃度では動物に毒だそうです)。 https://www.youtube.com/watch?v=1ondqk5VUkk 製品の説明は下記です。毒性の分類は「普通物」、含量0.40%だそうです。残りはでんぷんなどでしょ…

ダイヤモンドアンビルセル

月曜日に紹介した高圧における室温超伝導の実験は、ダイヤモンド アンビル セル(diamond anvil cell, 略称DAC, ダック)を用いて行われました。私も昨日DACの使い方のノウハウを専門家に習っていたところです。アンビルというのは「金床(カナトコ)」の意味ですが、高圧の分野では、錐状の物体で両端が平らなものを指します。この形を使って高圧を発生させる方法を編み出したのは昨日のBridgmanです。高圧力を出すにはアンビルが変形してはいけないので、できるだけ硬い物質としてダイヤモンドが使われ始めました。米国標準局(National Bureau of Standard, 現NIST)…

世界の研究所 愛媛大学 地球深部ダイナミクス研究センター、北京高圧研究中心、ルテチウム+水素+窒素の高圧での室温超伝導の論文

先週、ルテチウム(71番元素)+水素+窒素の系で、高圧下(比較的低い)での室温付近での超伝導がNature誌に報告されました。これは米国のロチェスター大学の論文です。まだ他機関による追試が必要ですが、本当ならば様々な応用が可能になるでしょう。 https://www.nytimes.com/2023/03/08/science/room-temperature-superconductor-ranga-dias.html https://www.nature.com/articles/s41586-023-05742-0 ルテチウムの価格が変動しているかどうか見たかったのですが、最新のものは有…

ヤモリは多数の絨毛の先についた吸盤を使っている

接着といえば、大気圧の影響を忘れることはできません。大気圧は、ほぼ1kg重/cm2です。 (余談)空気の密度が1.293kg/m3なので、1cm2(=10^-4m2)あたり1m高さで0.1293g,これが1kg=1000gになるには1000/0.1293=7.7kmの高さが必要になります。大気は上空に行くほど薄くなりますが、ざっと厚さ10km(対流圏、その上が成層圏)と覚えておくといいでしょう。飛行機が30000ft~10kmの高さを飛ぶのは、エンジンの燃焼に必要な酸素の量と空気抵抗の兼ね合いで決まっていると思います。 すなわち、1cm2の吸盤を使えば最大1kgを支えることができるはずで、接着…

接着におけるプライマーの役割

難接着性プラスチックの接着に使う下塗り剤「プライマー primer」については情報が少ないですが、いくつか特許を見つけました。Loctite社(現 独Henkel傘下)がポリオレフィンやフッ素樹脂に対して有効と主張しているものです。 https://patents.google.com/patent/EP0476203A1/en これは1997年出願で、中心となるのは(CnHm)2-N-(CnHm)-N-(CnHm)2 の形のアミンおよびその誘導体です。P(CnHm)3の形の分子の特許も引用されています。アミンやフォスフィンが有効な理由はよくわかりません。アルキル部分が接着対象のポリマーに絡ん…

テフロンの接着

最近テフロンの接着法がいろいろ開発されています。テフロンは表面エネルギーが極めて低いので、ほかの物質と界面を作って表面エネルギーを下げる必要がありません。したがって接着が難しいです。 https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/la981727s http://www.ptfecoatings.com/technology/surface-energy.php 昨日の産総研ビデオにありましたが、大気中の放電プラズマやレーザー、火炎を使ってテフロンの表面を酸化して、化学結合可能な官能基(COOHなど)を出すというのが一つの方法です。下記の3分40秒くらいから。 ht…

世界の研究所 産総研 接着・界面研究ラボ

今週の世界の研究所は、日本の産業技術総合研究所(産総研)の「接着・界面研究ラボ」を取り上げます。産総研は2300名の研究者を抱える日本の国立研究所組織の一つで、つくばを中心に、全国に特色を持った11の拠点があります。 https://www.aist.go.jp/aist_j/information/about_aist.html 接着・界面研究ラボはいろいろな部門の研究者が集まってできた小組織ですが、化学、分光、機械特性評価、シミュレーションなど様々な手法を「接着」という対象の解明に集中させています。名簿にあるのはリーダー級の人たちが多いので、おそらくその下の人たちも関与していて、それなりの…

精密加工と剛性

精密加工には装置や刃物の「剛性(ごうせい)」が重要です。「剛性」はたわんだり曲がったりしないこと、です。私は年代物の旋盤と安い卓上フライスを使って手で金属加工をしますが、刃物がふにゃふにゃする感覚があるときには表面が荒れ、精度が悪くなります。そういう時はどこかが緩んでいるので、締めなおしたりねじを交換したりします。下記、現場視点でうまくまとめたサイトがありました。 https://76works.com/cutting-basic-rigidity/ 振動(「ビビリ」という)を抑えることも重要で、鋳物(いもの)に含まれる炭素の粒が振動を吸収する、というのは知りませんでした。またエンドミルは棒に…

放電加工

液体中のプラズマの重要な応用として、放電加工があります。これは、電解質を含まない水や油など、電気分解が起こらない絶縁性の液体中で、針や線状の金属を、導電性のある工作対象に接触させ電圧をかけることにより、液中でプラズマを発生させて、ジュール熱や酸素ラジカル等による化学反応によって削っていく方法です。細い金属線や針を刃物として使えるので、非常に精密な加工を行うことができます。また、ダイヤモンド工具(ホウ素ドープと金属で導電性を持たせている)の加工にも不可欠です。現在の装置は、1マイクロ秒、10000Aのパルス放電を使っているそうです。この精密制御は簡単ではなく、お金を払う価値があります。 htt…

液中プラズマとその応用

大きなエネルギーを短時間に集中して放出する方法は、パルスレーザーや磁気リコネクションなどいろいろありますが、今週は高電圧短パルスによるプラズマに限定しましょう。大気圧で高電圧の放電を起こすと稲妻のようになりますが、圧力が低いと、電離した気体分子と電子が広範囲に広がります。これはスパッタやプラズマCVDに使います。スパッタの場合は、永久磁石を入れて電離気体を狭い範囲に集中させて原料をイオンでたたいて原子化して蒸発させ、成膜に使います。プラズマCVDでは原料分子の化学反応に使います。 下記、AGC Europeのyoutubeやwebが分かりやすいです。 https://www.youtube.c…