知的創造企業(7) ハイパーテキスト型組織

金曜日の「知識創造企業」は第6章です。グループリーダーの集団が研究開発を引っ張る middle-up-down management を実現する組織形態について説明しています。 組織形態としては、上下の階層でできている官僚型と小さいチームで一つの目標を短期間で達成するタスクフォース型が良く知られていますが、本章は一人が多重の所属を持つ「ハイパーテキスト型組織」を提案しています。 ハイパーテキストは、コンピュータ用語で、文章にタグとして多重の情報が埋め込まれているものです。ここでは通常は官僚型の指揮系統にあるが、必要な時は引き抜かれて小さいチームを作るという意味のようです。おそらく奇をてらってい…

知的創造企業(6) 現場も見るグループリーダー集団が知的創造の立役者

金曜日の「知識創造企業」、第4章はパナソニックを例にとった知の創造のスパイラルの実例です。パン焼き器→高級炊飯器→高級平面テレビなど1990年代によく売れた製品のコンセプトとその開発過程を説明しています。が、現時点からみるとその後海外の追撃を受けた複雑な経緯があるので本文に沿った解説が難しいです。  今週は第5章を解説します。5章は、知の創造を活発化させるための組織形態を論じていて、トップダウン、ボトムアップよりも良い方法として middle-up-down management を提案しています。トップダウンの例としてGEのジャック・ウェルチ(Jack Welch), ボトムアップの例として…

gold rush と 銃社会

ゴールドラッシュに関する日本語の書物は少ないです。今「カリフォルニアの黄金-ゴールドラッシュ物語 越智道雄著 朝日選書」を斜め読みしています。紀行文形式で情報をピックアップするのには骨が折れますが、雰囲気がわかります。 第一次ゴールドラッシュで得られた金は当時のお金で5.83億ドルというのはこの本の記述です。貨幣価値の換算は資料が探せなかったので、この本の「元の暮らしに戻って1日働いて50セントか、それともここで1日4ドルもらうか」という記述から、50セントが現在の日本円にして5000円くらいかな、というところで8兆円程度と換算しました。 1848年にカリフォルニアで大量の砂金が発見され、大統…

Telluride村の名前の由来

Telluride村は1878年に作られたそうです。名前の由来は、同じコロラド州で発見された gold telluride (AuTe2)鉱物だそうです。 https://en.wikipedia.org/wiki/Telluride,_Colorado 金も出たそうですが(1875年発見)、AuTe2はここからは産出されませんでした。亜鉛、鉛、銅、銀がとれたそうです。現在はスキーリゾートです。最初のリフトは1972年に建設されたので、比較的新しいですね。 telluride.comという名前のサイトをみつけて興味を持ちました。日本語のページもあります。 https://www.telluri…

分岐点は10年前

半導体を作るための微細加工(リソグラフィ)は、シリコンウェファの上に感光樹脂(フォトレジスト)を塗って、設計した回路図を写しこむのですが、小さい構造には、波長の短い光源が必要です。ArFレーザー(波長193nm)などの紫外光源が作られましたが、その先は一足飛びにレーザープラズマ光源になりました。これは、物質に強いレーザーを当てて価電子を揺さぶることで高い励起状態を作るものです。その際、化学結合が切れ、電子も原子から切り離されるのでプラスのイオンと電子に分かれたプラズマが発生します。さらにそれらが光を吸収するので、非常に高温になり、高速電子の衝突等で内殻電子も励起されます。これがもとに戻る時に軟…

演算装置の次の目標は省電力化

現在一人当たりGDP(GDP per capita)は、日本が30年間横ばいから減少だったのに対して台湾、韓国が30年で3倍に伸び、現在3か国はほぼ同じです。これは半導体やコンピュータ関連産業の寄与だと思います。同じ職業で同じだけ頑張れば給料(=GDP per capita)が同じになるのは自然です。 通貨の換算の仕方によっては日本のほうが低いですが、これは日本が突出して高齢化している(65才以上人口、日本は29%、台湾16%、韓国17%)ため割り引くべきでしょう。若い人が多くの老人を支えている(現在2人で1人、30年後には1.3人で1人)割にはうまくやっていると思います。 日本は一番苦しい時…

医療用同位体を作るサイクロトロンは500億円市場

同位体の放射壊変は医療用にも使われます、PET(positron emission tomography 陽電子放出断層写真法)は、放射壊変して陽電子を出す特定の原子核を含む化合物を人体に注射し、出てきた陽電子が周囲の電子と対消滅するときに180度逆の2方向にガンマ線が出ることを利用して、精度よく人体中の位置を特定できます。転移しているかもしれないガンの場所を探すとき等に威力を発揮します。その時に使う原子核は 18F, 12C, 13N, 15Oで、加速器で作った後迅速に有機合成して糖などの試薬に組み込み注射します。半減期2分のものもあるので、PETには加速器が付属していてその場で原子核を作り…

フッ素の用途

フッ素化合物の用途はテフロン、冷媒、製薬などいろいろあります。これらはHFから合成されていると思います。フッ素ガスを使わなければならないのはウランの同位体分離のために気体のUF6を作る用途や、MEMSを作る試薬のXeF2の合成(シリコンを高速で気化させる気体 2XeF2+Si→SiF4 + 2Xe)、さらに紫外のArFレーザーやKrFレーザー(半導体露光やパルスレーザー蒸着(PLD)のエキシマレーザー)を思いつきます。 用途の割合は下記が詳しいです。フッ素ガスは全フッ素製品の2%ですね。フルオロカーボンが42%でそのうち16%がポリマーです。蛍石の用途としてHFを経由して氷晶石(アルミ電解精錬…

世界の研究所: 3Dプリンタ専業メーカー5社

いま、3Dプリンターで実験用の部品を作りたくなっています。いい機会なので、3Dプリンターの現状について調べてみます。 https://www.investopedia.com/articles/investing/081515/three-biggest-3d-printing-companies.asp によると、3Dプリンターの上位5社は以下の通り: 1. Stratasys, Ltd. 年間売上 $659.2M=920億円 1998設立, 米国 社員2062人 ← よく使われる、熱可塑性樹脂の線を溶かしてくっつける方式(FDM方式)を発明した会社です。 2. 3D Systems Cor…

世界の研究所 David Austin Roses (英国)

昨日、植物園を見てきました。バラがたくさん咲いていましたが、品種には育種者と年号が書いてあり、かなりの割合で”David Austin”という人が登場しました。調べてみると、イギリスの有名な育種家で、10代で趣味としてバラの育種をはじめ、世界展開に成功して現在は2代目が継いでいるようです。日本にも支店があって、webもあります。本拠地にバラ園があるようです。行ってみたいですね。 https://www.davidaustinroses.com/pages/plant-centre-and-gardens 下記が日本版カタログです。苗木を各国の拠点に送って育ててから売ると…